女神の絵姿(山内ヤト マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 芸術家の卵たちが通う、とある美術学校。
 この学校の生徒たちが『古の女神と精霊』をテーマとした絵画を制作し、展覧会を開くことが決まった。

 絵画のモデルとしてウィンクルムに協力してもらえないか、というお願いのポスターがA.R.O.A.の掲示板コーナーに貼られていた。モデル代などはなく、むしろ交通費を出費しなければならないが、精霊と一緒に絵を描いてもらうという体験ができる。

 この企画で絵を描く美術学生たちは、写実的で美しい絵を描く者が多いようだ。だから勝手に、芸術魂大爆発なシュールで超ハイセンスな顔に描かれる心配はない。学生たちは、モデルの美をより引き出すような絵を得意としている。

 モデル希望者は学校にいき、美術学生と面会する。
 一組のウィンクルムに対し、一人の学生が担当する形だ。

 そして、ポーズや表現したいことの打ち合わせをする。
 『古の女神と精霊』というテーマにさえ沿っていれば、ウィンクルム側の意見や注文が反映されるだろう。学生には具体的なアイディアがないらしいので、ウィンクルムの方で積極的にアイディアを出していこう。

 学校には、服飾学科の生徒が作った多種多様の服装と男女別の更衣室が用意されている。衣装は古風なものや民族調のもの、ドレスや装着できる翼や造花の冠などもある。
 模造品だが、鎧や剣といった武具もあるようだ。金や宝石をあしらった金銭的価値の高い豪華な装飾品などもイミテーションとなる。

 衣装を身につけたら、教室で精霊とポーズをとり絵画モデルを務める。
 同じポーズを保つのがつらくなったら教室内で休憩が可能。休憩時間中は、学生は一時的に席を外す。

 完成した絵は学校主催の展覧会で飾られる。ウィンクルムの工夫や発想が良いものなら、相応の賞賛がおくられることだろう。
 絵は制作した学生のものになるので、記念に持ち帰ることはできない。

解説

・必須費用
交通費:300jr

・あると効果的な一般スキル
絵画
神学
精霊学
絵画モデルとして女神と精霊らしさを表現することが上手くなります。
対象スキルがあると便利な効果がありますが、スキルがなくてもエピソード参加に支障はありません。

・モデルのスケジュールについて
モデルをするのは一日だけです。

・衣装について
ハピネスエピソードのためバトルコーデは参照できません。

・絵を描く学生について
会議掲示板でA六面ダイスを振ってください。135は男性学生、246は女性学生です。

B六面ダイスで学生の得意分野を決定します。
1:モデルの優しさや慈愛の精神を引き出した描写
2:モデルの凛々しさや格好良さを引き出した描写
3:モデルの知的な落ち着きや余裕を引き出した描写
4:モデルの肉体的な美しさや強さを引き出した描写
5:モデルの神々しさやミステリアスな雰囲気を引き出した描写
6:モデルが秘める、正負の両面を引き出した描写
展覧会での評価にこだわらないなら、学生の得意分野を気にせずに、ウィンクルムの好きな雰囲気でポーズをとるのもありです。

学生はNPCです。PLがプランで直接NPCの言動を指定することはできません。
OKな例:「キレイに描いてね!」と頼む。魅力的に見えるようポーズを工夫する→PCの言葉や行動なのでOK!
反映が難しい例:学生は神人のあまりに美しさに一目惚れし、絵を描く間ずっと神人のことを思っていた→PLがNPCの思考や言動を指定することになるので、リザルトにそのまま反映することが困難です。

ゲームマスターより

山内ヤトです。

芸術の秋ですね。
『古の女神と精霊』というテーマで、パートナーと絵画のモデルになってみませんか?

リザルトノベル

◆アクション・プラン

エリザベータ(ヴィルヘルム)

  心情
絵のモデルかぁ、ポージングって結構体力使いそうだぜ

服装
目尻に紅
胸部に金の胸当で腹部は露出
両側にスリットのスカート
四肢に金の装具
素足

行動
自己紹介して提案しとこっかな
戦士への祝福っぽく、体の線が出る鎧とかいいかな?

ウィルの奴ノリノリだな、寒くねぇのかな
…見せたがりもどうなんだ

着替えてみたものの…やっぱ恥ずかしいな
ポーズはウィルの提案に乗るわ
(さ、さすがに腕の伸ばしっぱなしは疲れるぜ
休憩?
あ、あたしはまだいけるけど…休むか(内心安堵
休む間に体をほぐしつつ…スゲェ視線を感じる
…はぁ?そ、そういう目であたしを見るなっつーの!
(恥ずかしい奴だなぁ…

不思議?
ずっと残る、か…そう思うと今日は来てよかったよ



ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  正負の両面って何でしょうか、アイディアだしの時に聞いてみたいですね。

ディエゴさんが思う正負を軸に形にしていきましょう
…難しく考えすぎじゃないですかディエゴさん
無理に全部詰め込まなくても、絵画を見る人はワンシーンを見て背景を考察する人だろうから大体はシンプルで細部の印象やディテールを工夫すればいいと思いますよ

武器や衣装、私たちもいくつもの傷を負っている状態にしましょう
背景は戦火を思わせないほど綺麗な風景で

私の衣装は甲冑に羽根兜、武器はランス(馬上槍)です
1回持ってみたかったんですよ
ディエゴさんをかっこよく描いてもらうために本読んでおきます
(使用アイテム【初級マニュアル本「精霊学」】)


マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
  担当が女性で安堵
と思っていたら眼前の光景
胸が小さくズキリ


衣装テーマ大地の女神
担当さんに着替手伝いお願いする

淡い橙と白の階調ドレス(ギリシア神話系
それなりの露出
川イメージの水色羽衣纏わせ
天然素材装飾品
おさげ髪を解き緩ウェーブのボリューミィな髪に白花冠を乗せ
顔や足首等に神々しい文様ペイント

表現テーマ光差す風の大地
左手甲見える様に
強い眼差しで遠くを見つめる精霊の足元に
憂い顔で見つめ彼に腕伸ばし寄り掛る女神
ドレスのレースが大地の広がりの様に広げられ

担当からの要望は素直に受入れ


眼鏡外され
視界がぼやけ丁度いい
旦那様のお姿は目の毒過ぎる
鼓動と羞恥に耐え


休憩
無言項垂れ

綺麗言われ思考ショート
「‥ムリ
倒れ伏す



●戦士への祝福
 担当となる学生にまず自己紹介をする『エリザベータ』と『ヴィルヘルム』。学生もそれに応えて元気良く挨拶を返す。
「よろしく。絵のモデルかぁ、ポージングって結構体力使いそうだぜ」
 薄薔薇色の髪を揺らしながら、少し不安そうに肩をすくめるエリザベータ。
 その横で、ヴィルヘルムは男性の学生とすっかり意気投合していた。
「よく解ってるわね、肉体美こそ人類最古の芸術であると!」
「イエェスッ!」
 ヴィルヘルムはモデル中でもないのに、華麗なポージングを決めている。それを見た学生が目を輝かせて拍手をおくる。
 どうやら、ヴィルヘルムの美学は、モデルの肉体的な美しさや強さを引き出した描写を得意とするこの学生と通じ合うものがあるらしい。
「ああ、そうだ。絵のことなんだけど」
 エリザベータがアイディアを出す。
「戦士への祝福っぽく、体の線が出る鎧とかいいかな?」
 男子生徒はキラリと歯を光らせながら、ビシッと親指を立てた。
「ナイスアイディーア!」

 服飾学科の生徒の制作物が置かれている場所があり、そこから自由に衣装を選ぶことができる。
「お、良い物発見。これなんかイメージに近いな」
 金色に輝く武装一式を見つけたエリザベータ。胸当てのサイズを確認する。問題なさそうだ。
「ワタシの肉体美が世に出ちゃうのね~ドキドキよぉ。戦士だと杖より剣かしら?」
 ひょいっと模造刀を手にするヴィルヘルム。彼のジョブはエンドウィザードだ。しかし戦士への祝福というイメージの絵画なら、剣を携えていた方がテーマが伝わりやすいだろう。
 デザインや服装に詳しいヴィルヘルムは、衣装選びの際に頼りになった。
 それぞれ更衣室に向かい、絵画のモデル用の衣装へ着替える。

「待たせたな、着替え終わったぜ」
 着替えを終えたエリザベータが顔を出す。
 金色に光る胸当て。スラリとした四肢を覆う金色の装具。
 腹部は大胆に露出。両側にスリットが入ったスカートをなびかせる。スカートからのぞくのは健康的な素足だ。
 目尻に紅をさして、エキゾチックな雰囲気を演出している。
 男性用更衣室からヴィルヘルムが登場。大きなマントを羽織っている。それは体を隠すためではなく、衣装を魅せるための工夫だった。
「お肌を見せるのは吝かじゃない……むしろ見なさい。この肉体美!」
 堂々とした動きで、バッとマントを脱ぎ捨てる。
 半裸に腰布。両腕と両足にバンテージ。エリザベータと同様、素足だ。モデルの小道具として長剣を持っている。
「ビューティフォー! これは腕がなります!」
「ウィルの奴ノリノリだな、寒くねぇのかな。……見せたがりもどうなんだ」
 テンションの高い男二人をやや冷めた目で見守るエリザベータ。
「着替えてみたものの……やっぱ恥ずかしいな」
 腹部をサッと自分の手で隠した。

 ヴィルヘルムが、エリザベータと学生にポーズの案を出す。
「ポーズだけど、右手で剣を正面に向けて持つから背中合わせで左手を添えて欲しいわ♪」
 二人で試しに背中合わせの姿勢になってみる。
「一緒に戦ってるって感じで良くなぁい? 視線はキリッとね」
「ウィルの提案に乗るわ」
 部屋の中央でポーズをとるエリザベータとヴィルヘルム。正面に伸ばされた剣からは、強い意志が感じられる。
 学生は真剣な表情で、古の女神と精霊に扮したエリザベータとヴィルヘルムの姿を描いていく。

 モデルをはじめて、どれほどの時間が経過しただろうか。
(さ、さすがに腕の伸ばしっぱなしは疲れるぜ……)
 剣に添えられたエリザベータの左腕がだんだんと震えてきた。
「ちょっと休憩もらっても良いかしら?」
 先に休憩を頼んだのはヴィルヘルムからだった。
「休憩? あ、あたしはまだいけるけど……休むか」
 口ではそう言いながら、エリザベータは内心ホッとする。同じポーズをキープし続けるのが、だいぶつらくなってきたところだった。
 学生は教室の外へと出かけていった。
 ツッコミを入れるような口調で、ヴィルヘルムが言う。
「腕プルプルしてるの伝わるから休みたいのなんか解るわよっ」
 休憩中に、エリザベータはのびのびと体をほぐす。
(……スゲェ視線を感じる)
 視線の主はもちろんヴィルヘルムだ。
「それにしてもそういう格好も良いわねぇ。女の柔肌に硬質な鎧、セクシーだわ」
「……はぁ? そ、そういう目であたしを見るなっつーの!」
 照れ半分と怒り半分で言い返す。
(恥ずかしい奴だなぁ……)
 そうやって照れるところが可愛いと、ご機嫌なヴィルヘルム。二人は仲の良い異性の友達といった関係で、気さくな距離感。美しいもの全般を愛するヴィルヘルムは、エリザベータの美貌に対し素直な賞賛を口にしたまでのこと。
「でも不思議ね」
「不思議?」
 ぽつりとこぼされたヴィルヘルムの言葉をエリザベータが聞き返す。
「絵画にずーっとワタシ達の姿が残るのかなって思うとさ……」
「ずっと残る、か……そう思うと今日は来てよかったよ」
 お互いの顔を見合わせれば、ふっと笑みが込み上げてくる二人。

●力と平穏
 美術学校の教室で、『ハロルド』と『ディエゴ・ルナ・クィンテロ』は担当の学生と顔を合わせていた。
「モデルか……よろしく頼む」
 ディエゴがそう言えば、女性の学生も静かに頭を下げる。彼女が得意とするのは、モデルが秘める正負の両面を引き出した描写と聞いている。
「正負は、なにかを得たとき必ずなにかを失う……という解釈で合っているのか?」
「私が考えていた正負とは少し異なる……けれどそちらも素晴らしい」
「正負の両面って何でしょうか」
 ハロルドが問いかける。
「説明不足だった……ごめんなさい。私は、人が放つプラス感情と同じくらい、人の秘めているマイナスの性質も好き。性格の欠点。過去の誤ち。押し殺している悲哀や怒り。そういったものに芸術性を感じる。綺麗なだけじゃ不完全」
 なんだか変わった画家に当ってしまったが、学生はディエゴの解釈を尊重し、モデルのアイディアを優先すると告げた。
「ディエゴさんが思う正負を軸に形にしていきましょう」
 ディエゴは難しい顔をしてうなった。
「一枚の絵でそれを表現しなければいけないわけだ。ウィンクルムになることで何を得て何を失ったのか。ここでそういう深い面を考えるとは思わなかった……」
 真剣に考えるディエゴの横顔からは、彼の明哲さと誠実さが感じられた。
「得たものというのはやはりオーガと戦う力かな。失ったものは……実感はないが平穏だと思う。それだと俺達は戦っている姿で……ええと、平穏の部分はどうすればいい?」
 意見を求めるようにディエゴはハロルドに視線を向けた。
「……難しく考えすぎじゃないですかディエゴさん」
 思考によってイメージを固めていくところまではディエゴの力だけでも上手くいった。それをデザインに落としこむ工程では、ハロルドの手助けが不可欠だ。
「無理に全部詰め込まなくても、絵画を見る人はワンシーンを見て背景を考察する人だろうから大体はシンプルで細部の印象やディテールを工夫すればいいと思いますよ」
「……ばっさり言うな、ハロルド」
 しかし彼女の意見は的を射ていた。
「まあそれもそうか。じゃあそれで」
 感心したようにディエゴが頷く。
「武器や衣装、私たちもいくつもの傷を負っている状態にしましょう。背景は戦火を思わせないほど綺麗な風景で」
 ハロルドの言葉に学生は喰い入るように耳を傾けた。

 絵のイメージが決まったところで、二人は衣装が置かれている場所へと向かう。
 その間に、学生はハロルドとディエゴが語ったイメージを頭の中で整理した。
「この羽根兜は綺麗ですね。サイズも問題ないようです」
 ディエゴは軽装の防具を探している。
 衣装探しの途中で、ハロルドが肩を落として残念そうにぼやく。
「ディエゴさんをかっこよく描いてもらうために本読んでおいたのに……」
 初歩的な精霊学の本を所持していたハロルドは、事前に本の内容に目を通しておいた。が、今その本は手元にない。精霊学の本は冒険用アイテムでデート用の荷物には入らず、今回持ってくることができなかった。
「残念です」
 つまらなさそうにため息をつくハロルド。
 そのため息に、ディエゴが気づいた。
「本があれば多少は便利だったかもしれないが、なくても大きな支障はないだろう。それに……」
 衣装探しの手を休め、ディエゴは穏やかな眼差しでハロルドを見つめる。
「その気持ちだけでも俺は充分嬉しい」

 着替えを済ませたハロルドとディエゴからは、古の女神と精霊にふさわしい風格が漂っていた。
 ハロルドは羽根兜と甲冑を装備し、ランスを手にしている。騎兵用の大型の槍だ。
「1回持ってみたかったんですよ」
 ランスを持って嬉しそうに笑う。
 ハロルドの本名は、エクレール・マックィーンという。彼女はかつて、卓越した才能を誇る騎手として君臨していた。彼女は馬との関係が深い。模造品の武器だが、ランスを構える仕草はなかなか様になっている。
 ディエゴの衣装は弓と軽防具。弓というチョイスが、プレストガンナーの彼らしい。神話の時代を思わせる古風な雰囲気もちゃんと出ている。

 衣装を着た二人で、実際にポーズをとっていく。
 ハロルドは戦いを導く女神のように、ランスを前へ掲げた。
 彼女の前にディエゴが立ち、キリリと弓矢を引き絞るポーズをとる。本物の弓の弦を引くほどのハードさはないが、それでもやはり格好良いポーズを維持するのは大変だ。
「……なかなか辛いポーズだが、良い絵になるように頑張ろう」
 モデルとしてポーズをキープする前に、ディエゴは励ますようにハロルドに声をかけた。
 大変なことでも、二人で共に頑張ろう。
 ディエゴの優しい声からは、彼のそんな思いが伝わってくる。

●光差す風の大地
 『マーベリィ・ハートベル』と『ユリシアン・クロスタッド』の担当になったのは、モデルの知的な落ち着きや余裕を引き出した描写が得意な学生。礼儀正しそうな印象の女性だ。
 担当が女性ということで、マーベリィがホッと胸をなでおろしたのも束の間。
「ぼくはユリシアン・クロスタッド。よろしく頼むよ」
 フェミニストのユリシアンは挨拶だけにとどまらず、優しく学生の手をとり……。
「ぼくらの人間性をきみの得意分野で存分に引出して欲しい。枯れる事のないインスピレーションの泉を提供するよ」
 と、言って手の甲に軽くキス。
 すぐそばに、マーベリィがいるというのに、だ。
 ユリシアンに悪気はなくこれが彼の素の行動なのだと、マーベリィは頭でそう理解しようと努力した。でも……。
 胸の奥が、小さくズキリ。

 マーベリィは大地の女神、ユリシアンは風と共に現れた精霊をテーマに、それぞれの衣装を選んでいく。
 クロスタッド家に奉公している立場柄、甲斐甲斐しくユリシアンの衣装を探すマーベリィ。彼女は神人であると同時に、ユリシアンに仕える真面目で働き者なメイドでもある。ユリシアンは、彼女を使用人として雇うのは不本意なのだが、マーベリィ自身が主人と使用人の立場をわきまえて接するよう努めており、彼女の意志を尊重している形だ。
 ユリシアンに似合いそうな古代の賢者風のローブと杖を選んだ。
 ユリシアンの衣装を選び終えたところで、マーベリィは自分の支度にとりかかる。
 淡い橙と白のグラデーションが入った古風で優雅なドレス。その上に水色の羽衣を纏えば、それは清流の流れを連想させる。
 他にも、天然素材のアクセサリーをいくつか探す。
 女子更衣室に入る際、着替えを手伝ってほしいと学生に声をかければ、快い返事がきた。

 それぞれの更衣室から、マーベリィとユリシアンが出てきた。
 おさげをほどくと、マーベリィの髪はゆるいウェーブがかかって全体的にボリュームが増す。頭には白い花冠。
 顔や足首に神々しい文様をペイントしたのは良い発想だと、学生が褒めていた。女神と関係の深いウィンクルムの手の甲には赤い文様が浮かんでいる。
「……」
 マーベリィは少し恥ずかしそうに、自分の腕で体を抱いた。この格好はそれなりに露出が多い。
 一方、ユリシアンは引き締まった細身の体を惜しげもなく露出していた。古代の賢者を彷彿とさせる出で立ちだ。

 絵画のポーズを考えるマーベリィとユリシアン。
 二人が並ぶと肌の露出部分が目立つ。もちろん隠さなくてはならない部分は、衣装でちゃんと隠してある。
 表現したいものは、光差す風の大地。それが二人のテーマだ。
 手の紋章を意識してポーズを決めていく。
 試行錯誤の結果、強い眼差しで遠くを見つめるユリシアンと彼の足元で憂い顔で寄りかかるマーベリィ、という構図に決まった。
 さらに学生と打ち合わせながら細かいところまで徹底していく。
 寄りかかる時は彼の体に腕を伸ばし……。
 ドレスのレースは大地の広がりのように……。
 女神であるマーベリィの視線は精霊の顔へ、女神の表情はどこか切なげ……。
 ポーズが決まり、これから絵を描こうという段階になって。
「始める前に外さないとね」
 ユリシアンはひょいとマーベリィの眼鏡を外した。
 そして彼は息をのむ。マーベリィの美しさに。
「……なんて可憐!」
 驚きと喜びのまじった声をあげ、マーベリィの素顔をまじまじと見つめるユリシアン。彼の胸で、よくわからないナゾの鼓動が騒ぎ出す。
 眼鏡を外されたマーベリィはというと、慌てながらも視界がぼやけるのはむしろ丁度良いとも考えていた。古代の賢者に扮したユリシアンの肉体は、彼女にとっては眩しすぎる。
「ぼくが側にいるのに怖い事があるのかい?」
 眼鏡を外されて慌てるマーベリィに、甘くささやくユリシアン。
「それじゃあ、モデルを始めようか。準備は良い? 古の女神様」
 立っているユリシアンに、座った姿勢でそっと腕を伸ばして寄り添うマーベリィ。
 マーベリィの胸の高鳴りはやまず、羞恥すら感じていた。これはあくまでも芸術のため。そう自分に言い聞かせて、真面目な彼女は頑張って耐えていた。

「お二人共お疲れ様です。休憩を入れましょう」
 学生が一時退室する。教室内には、マーベリィとユリシアンだけが残された。
 無言でうなだれているマーベリィを見て、ユリシアンは疲れた彼女を労おうと考えた。
「こういうのきみが苦手なのは分っていたよ。怒ってる? ぼくは感動してる」
 それでもまだ無言のマーベリィに、ユリシアンはスッと顔を近づけた。
「想像していたよりずっと綺麗だよマリィ」
「! ……ムリ」
 カーッと赤面して、ぱたりと倒れ伏すマーベリィ。ときめきのあまり、思考がショートしたらしい。
 意識を失うハプニングが発生したものの、ユリシアンの手による介抱でマーベリィはなんとかモデルをやり遂げた。

●展覧会
 それからしばらくして美術学校主催の展覧会が開かれた。
 大勢の人々が、学生の描いた絵を鑑賞していく。

「女神と精霊が共に戦う、って感じの絵ね! 女神がただ精霊に守られるだけの存在じゃないところが気に入ったわ!」
「精霊のマッスルぶりに惚れ惚れするぜ! 細マッチョじゃなくてマッチョスタイルだってところが良いよな!」

 エリザベータとヴィルヘルムがモデルをした絵の周りには健康的な男女が集まり、絵について熱く語り合っている。

「傷を負った二人とのどかな風景? まぁったく対照的で皮肉な組み合わせだわぁ。フン、でもまあ、こういうの嫌いじゃないわよ? センスも悪くないんじゃない?」
「……俺は弓の持ち方にはうるさくて絵の揚げ足取りをするのが趣味なんだが、この絵に描かれた精霊は文句のつけようがないぐらい完璧に弓を構えているな……。くっ、俺の負けだ!」

 ハロルドとディエゴがモデルを務めた絵は、性格に一癖二癖ありそうな面倒な人々を惹きつける魅力があるようだ。

「おや。この女神はたおやかな感じですね。彼女の憂いを帯びた表情が、何を象徴しているのかが気になります」
「精霊の目線が女神ではなく遠くに向けられている点は、考察のしがいがありますな」

 なんだか頭が良さそうな人達の注目を集めているのは、マーベリィとユリシアンがモデルとなった絵だ。

 三組のウィンクルムによる協力で、『古の女神と精霊』をテーマとした展覧会は盛況となった。



依頼結果:成功
MVP
名前:エリザベータ
呼び名:エルザ、エルザちゃん
  名前:ヴィルヘルム
呼び名:ウィル

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 山内ヤト
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月14日
出発日 11月20日 00:00
予定納品日 11月30日

参加者

会議室

  • マーベリィ・ハートベルといいます
    どうぞよろしくお願いいたします
    (私にモデルなんて務まるはずないのに旦那様ったら‥気重

    【ダイスA(6面):4】【ダイスB(6面):3】

  • [2]ハロルド

    2015/11/19-00:07 



    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):6】

  • [1]エリザベータ

    2015/11/17-21:47 

    うぃっすー、神人のエリザベータとディアボロのヴィルヘルムだぜ。
    後で誰が来るか解んねぇけど、ひとまずよろしく。

    あたしらんとこはどんな学生が来んのかな?

    【ダイスA(6面):3】【ダイスB(6面):4】


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