プロローグ
海底世界の水面にある直径100m程の無人島、水上小島。
魔法のヤシの木が幹を伸ばし、太陽が燦々と降り注ぐ、魅力的なビーチ。
本日あなたたちは、休暇をとってこの水上小島に遊びに来ている。
きらっきらの海、波打ち際ではしゃいだり、ビーチバレーを楽しんだり、ヤシの実ジュースを飲みながら散歩したり……なんて、期待していたのに。
ビーチパラソルの下、サマーベッドにごろりと横になったパートナーから聞こえるのは、寝息のみ。
連日依頼をこなしているのだ、疲れているのも、わかる。ゆっくり眠らせてあげたい、そんな気持ちももちろんある。
でも、だけど。
せっかく、楽しみにしてたのに。
ちょっとくらい、いじけたって許されるだろう。
そんなあなたは、ふと、いたずらを思いついた。
鞄の中から取り出した日焼け止め。
そっと指先につけて、パートナーの肩に小さなハートマークをいくつか、描く。
今日は快晴、日差しは強い。パートナーの肩は、丁度パラソルの日蔭から出ている。
目が覚めたとき、パートナーは肩に白く残ったハートマークを見てどんな顔をするだろう。
眠っちゃったのを許してあげるんだから、このくらいのいたずら、いいでしょう?
夏が終われば、消えるのだから。
解説
日焼け止めでパートナーの身体にいたずら書きをしちゃおう、というお話です。
いたずら書きをする方は精霊、神人どちらでも構いません。
いたずら書きをする場所、範囲、内容はお任せいたします。パートナーとの信頼関係が壊れない程度にお願いします。
日焼け止めは効果が強いものと弱いものの2種類ありますので、濃淡をつけた絵を描いたりすることもできます。
費用ですが、ビーチパラソル&サマーベッドレンタル料【300Jr】、水着レンタル料【100Jr】、日焼け止め強【200Jr】、日焼け止め弱【100Jr】、水分補給のためのスポーツドリンク【100Jr】となります。
水着をお持ちの方は、是非デートコーデに取り入れてみてください!
魔法のヤシの実からは美味しいヤシの実ジュースが取れますので、それで喉を潤しても良いですね!
ゲームマスターより
大丈夫大丈夫、夏が終われば日焼け跡なんて消えていくから!
まだまだ夏は続くんだから、新たに日焼けしちゃえば目立たなくなるし!
ということで、いたずらしちゃいましょー!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
叶(桐華)
ビーチパラソルにサマーベッド 水分も強めの日焼け止めもばっちり装備 美味しいお弁当も作ったのに のに! 桐華さんのばーかばーかばーか!! お疲れなのは知ってるけどさぁ… むー。この日焼け止め顔はオッケーかな? 桐華さんなんてこうしてくれる!(ほっぺにハートマーク) …これは意外と可愛いかもしれない まぁ、さすがにこれが残ると困るだろうから後で全部塗らせよう 後はー、ぎりぎり見えそうで見えない上腕部! 簡易刺青みたいだねー、桐華さんかっこいー もう一か所 左手の甲、紋章を囲うように これは、僕もお揃いに どうせ、僕も桐華も人には見せない部分だけどね 二人だけが知ってる秘密っぽくて、良くない? あはは、気に入って貰えたようで何より |
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
*水着レンタル、日焼止弱 *終わったらヤシジュース飲む ◆行動 気持ち良さそうに… 口もパッカリ開けて、こいつめ 開いてる口の中に指1本突っ込んで、抜く、無害な悪戯 もう一度指突っ込んで… (パクッむにむにされたら入れたのは自分なのにカアッとなって引き抜く 油断も隙も無い… 美味しかったじゃないっての(あきれ そんな食意地が張ったランスにはコレだ(日焼止め出し 奴の腹に海の家的な食べ物をどんどん描く♪ ヤキイカ、トウモロコシ、アイス、極太フランク それから意を決し、寝息を確認し 普通では見え難い肩の後ろに小さくセイジとサイン 俺の…だ、なんて口で言えないから、こっそり 俺にだって独占欲はある 言うと図に乗るから言わないよ(撫で |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
ビーチパラソルとサマーベッド。 ハーフパンツ風迷彩水着をレンタルだ! ちみっと軍人風? 水分補給にはラキアがハーブティを冷やして持って来てくれた。 ラキアが「日焼けは火傷と同じだから」と パーカーを羽織りなさい運動を積極展開中(笑)なんだけど。パラソルの下なら陰だし別にいいじゃん。 と脱ぎ脱ぎ。 脱いでた方が涼しいじゃん? 風が当たって気持ちイイじゃん。 ガッツリ泳いで疲れちゃったのかなぁ。 何だかいつの間にか寝ちゃっていたんだぜ。 目が覚めたら、何だか肩とか背がヒリヒリ。 太陽動いて背中が陽に出てた? ラキア、なら起こしてくれよ。 何だこの肩のマダラ。 って慌てたらラキアが笑顔で鏡を。 うは、背中が春満開状態!? あわあわ。 |
蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
悪戯される方 日頃の疲れが出たのか、ぐっすりと眠りこける 時折、擽ったそうに身動ぎするも、悪戯に気付かずぐっすりと 悪戯完了後、目覚める …俺、寝てた? 悪い… まだぼーっとする頭を軽く振ってから …何だ?コレ 思わず三度見 !? 良い笑顔のフィンを見、彼の悪戯と気付いて 書かれている文字達に一気に顔が熱く 怒るべき所なのに…どうして俺は嬉しくなってるんだ? これだと人前になんて出れないのに フィンの言葉に更に嬉しいと思う気持ちが込み上げる フィンばかりズルい 俺だって…その…独占欲はある 寝てしまった分、時間を取り戻さないと 俺がヤシの実採るから、フィンは待ってろ 美味いジュースを飲ませてやる 日焼け、消えなければいいのに…と思う |
日暮 聯(エルレイン)
エルレインに右手の甲をなぞられるが熟睡しているので知らない。 勿論、いたずらの事も知らない。 起床後、エルレインのいつも以上のにこやかな表情に硬直。 「ニヤついてんなし、何?」 なんでもない、と言われ、ふぅん…。 何となく右手の甲を見やると、目を見開く。 「意味わっかんねぇんですけど!?」 「ざっけんなしッマジ何してくれちゃったわけ!?」 レンたん冷たい、と悲しげな顔をされて、バツが悪くなり、「…ん」と傍にあったドリンクを渡す。 「…大目に見てやんねぇこともねぇケド?」 見た目が女だから強く言えねぇ、が本音。が、 やっぱやりすぎだっつの、と軽くデコピン。 |
1 略して、「こいツン」
不登校で引きこもりの日暮 聯が太陽燦々降り注ぐビーチで青春エンジョイなどするはずもない。
そう、エルレインだって、こうなることは予想済み。
聯がビーチパラソルの下、ぐっすりと寝こけてしまうことなんて。
(ふふっレンたん寝顔かわいいなぁ……)
夕べもゲームや漫画で夜更かししたのだろうか。熟睡する聯を見つめ、エルレインは笑みを零す。
そりゃあ、エルレインだって想像しなかったわけではない。
水辺を2人でキャッキャウフフと追いかけっこ。悪戯で水飛沫をかければ、「こいつ~う」とおでこをツンとされる。
そんなワンシーン。
だけど、想像なんか実物の聯の寝顔には到底かなわない。
とはいえ。
悪戯して「こいつ~う」ツン。
ちょっと良いかも。
(今ならいたずらも許されるかも……!?)
熟睡する聯を前に、ちょぴっと魔がさすエルレイン。
(レンたん優しいし……)
きっと、「こいつ~う」ツン。で許してくれる。
エルレインは、パラソルの日蔭から出ている聯の右手の甲を、指先でそっとなぞる。
起こさないように、そっと。
聯は熟睡したまま。
にんまり微笑み、鞄から強力日焼け止めを取り出すと、指先にちょいと液剤をつけ、聯の右手の甲につつー、と大きなハートマークを描く。ハートの中に『レンたん』と書いて。
仕上げに、弱めの日焼け止めで、ハートの下に『byエルー』。
(レンたん、怒るかなぁ……ううん、レンたんになら怒られても!)
むしろ怒られて本望。
(レンたんが良い夢を見れますように……♪)
悪戯終了後は、聯が気持ちよく眠れるように、エルレインは彼をそっとしておくのだった。
時間が経過し。
「ん?あれ、ここどこだ?」
寝ぼけ眼をこすり、自室じゃないことに疑問を感じる聯。
「うふ、レンたん、よく眠れた?」
笑顔のエルレインが隣にいる。
だんだん頭がはっきりしてくるにつれ、エルレインと共に海に来ていたのだということを思い出す。
そして、エルレインのいつも以上のにこやかな表情に硬直。
いつも微笑みを湛えているエルレインだが、この笑顔には裏がありそうで。
「ニヤついてんなし、何?」
何か企んでいるんじゃないかと疑い険のある声色になる聯だったが、エルレインは
「なんでもないよ」
とはぐらかす。
「ふぅん……」
釈然としないまま引き下がり、ふと自分の右手の甲に視線を落とすと……。
「!」
聯の目がかっと見開かれた。瞳に映るは日焼け跡としてしっかり残ったハートマーク。
「意味わっかんねぇんですけど!?」
ひっくり返った声で叫ぶ聯に
「あ、あらー見つけちゃった……?」
と冷や汗をかくエルレイン。
レンたん優しいし~、なんて思っていたけどやはり不評の模様。
「だって……レンたん冷たいんだもん……」
憂いを含んだ紫の瞳をつい、と逸らし、細い肩を震わせる。そんなエルレインの姿は、可憐な乙女そのもので、聯の心をぐらつかせる。
聯は自分がとても意地悪な人間に思えてしまってバツが悪くなり、場を取り繕うように
「……ん」
と傍にあったドリンクを渡す。
突如差し出されたドリンクに一瞬きょとんとするエルレイン。
「……大目に見てやんねぇこともねぇケド?」
見た目が女性なだけに強く言えない。
ぶっきらぼうに連が言うと、エルレインの顔には次第に大輪の花のような笑顔が。
「レンたん……!」
瞳をうるうるさせ、連を見つめるエルレイン。
今すぐにでも抱き付きそうな熱い視線。しまった、気を許しすぎたか。
「やっぱやりすぎだっつの」
聯はエルレインの熱い視線を遮るように、その額にデコピンを放つ。
「っ!?」
思いもよらぬ攻撃に面食らうエルレイン。しかし。
(ふふ、やっぱり、優しいなぁ)
デコピンくらった額をさすりながら、エルレインは微笑んだ。
だって、痛くなかったんだもの。きちんと力加減されたデコピンは、まさに「こいつ~う」ツン。と同等ではないか。
エルレインは、そこが大切な場所であるかのように、いつまでも額をさすり続けていた。
2 自分のものにはきちんと名前を書きましょう
夏と言えば海じゃないか。
せっかく2人で海を満喫しようと、水着までレンタルして来たというのに。
砂場にシートを敷いてごろーんと横になったかと思うと、二言三言言葉を交わしただけで、ヴェルトール・ランスはむにゃむにゃと眠ってしまったのだ。
ランスが日々仕事に勉強にと頑張っていることはアキ・セイジもすぐ傍で見て知っている。だから、疲れて眠ってしまったのだろうということも理解できる。
が、すぐに眠ってしまうなんて、あんまりじゃないか。
(気持ち良さそうに……。口もパッカリ開けて、こいつめ)
無防備に幸せそうな寝顔を晒すランス。警戒心なく開かれた大口。
「口開けっ放しだと、埃が入っちゃうぞ~」
小声で言いつつ、セイジは人差し指をそっとランスの口の中へ。
すぐに指を引っこめるも、ランスはそれに気付く気配が全くない。
つい面白くなってしまって、もう一度、今度はもっとしっかり指を入れてみる。
ぱくりっ。
「!」
ランスの唇が閉ざされ、口中にある物を舌で確かめる。
擽ったさに思わず笑いそうになるが、噛みつかれる危険性に思い当たり、セイジは慌てて指を引き抜く。
「美味しかった……」
にへ、と緩み切った表情のランス。
(美味しかった、じゃないっての!油断も隙もない)
セイジはランスの口の感触を思い出し、1人頬を染める。
ランスは
「タコス……お好み焼き……どっちもウマい……」
とお気楽全開の寝言。
そんな食い意地の張ったランスには、これだ!
ちゃらららっちゃら~ん(脳内効果音)日焼け止め~!
セイジは指先につけた液剤で、ランスの無防備な腹に次々と、食べ物の絵を描いていく。
ヤキイカ、トウモロコシ、アイス、極太フランク……テーマは海の家の食べ物だ。
これだけ描くとさすがにランスの腹にもスペースがなくなってきた。
それじゃあ仕上げに……いや、やっぱりやめておこうかな……でも……!
セイジはランスの顔を覗き込み寝息を確認すると、意を決して指先に液剤をとる。
そして、肩に、小さく「セイジ」とサイン。
本当はもっと肩甲骨くらいまで後ろに書きたかったけれど、ランスが仰向けに寝ていてそれは難しいため、肩で妥協。この場所でも、気付かれにくいはずだ。
俺の……だ、なんて口で言えないから、こっそり主張するためのサイン。
(俺にだって独占欲はある)
「言うと図に乗るから言わないよ」
呟くとセイジは微笑んでランスの金の髪を撫でた。
「……はっ、俺、寝てた!?」
深い眠りから覚め、慌てて飛び起きるランス。その拍子に、自分の腹が視界に入る。
「なんじゃこりゃあ!」
ランスの絶叫に、セイジは冷静に説明する。
「こっちはヤキイカ、これはアイス」
「ふむふむなるほど……てそれはわかるけど、そうじゃなくて!」
問題は「何の絵を描いたか」ではない。
「ああっ、極太フランクをなんでそんな下に……!違うナニカを連想されちゃうだろ!」
「違うナニカ?」
純粋な目で小首を傾げるセイジに、「いや何でもない」と答えてから、
「なんでこんなことするんだよ!」
と訴える。
するとセイジはむうっとふくれて、
「俺ほったらかしで寝くたれくださりやがった罰だ」
と、悲しげな子犬のようなうるうる目でランスを見つめる。
なんて、罪悪感を掻き立てられる目なのだ。
ランスの耳がしゅん、と垂れる。
「俺が悪かったです。ゴメンナサイ」
「わかればよろしい」
やっとセイジも笑ってくれた。
これで仲直り……とはいえ。
「やっぱりこれは恥ずかしい」
ランスが自分の腹を見下ろして言うと、「日焼け止め塗って焼きなおせば、目立たなくなるよ」とセイジ。元々弱めの日焼け止めで書いたいたずら書きだから、目立たなくなるにはさほど時間がかからないはずだ。
ランスがもう一度ごろんと横になると、セイジはその腹に丁寧に日焼け止めを塗ってくれる。
(……あれ?)
日焼け止めを塗ってもらいながら、ランスは自分の肩に、何かついているのに気付く。
ついている、というよりは、白く残っている。
ちょっと読みにくいけれど、ランスにはちゃんとわかった。
そこに、「セイジ」と記されていることに。
(そっか”俺のランス”って印か)
ランスは、一生懸命日焼け止めを塗ってくれているセイジの姿を愛おしそうに見つめた。
セイジは肩の日焼けに関しては何も言わなかった。だからランスも、気付かないふり。どうせ服を着れば見えないし、着ていなかったとしても髪でかくれて見えないし。
陽が落ちて、落書きもうっすら残る程度にまで消えれば、2人は仲良く一つのヤシの実にストローを2本差して、ヤシの実ジュースを飲む。
拗ねたり悪戯したり謝ったり、だけど最後はやはり仲睦まじい2人なのである。
3 この桜吹雪が……!な~んて、ね
「よっし、ガッツリ泳ぐぜ!」
海を目の前に気合十分なのはセイリュー・グラシア。
レンタルしたハーフパンツ風迷彩水着で泳ぐ気満々。
その後ろから白いパーカーを羽織らせ、
「日焼けは火傷と同じなんだよ。ちゃんと日焼け止め塗って!上着も羽織らないと!」
と世話女房よろしく言うのはラキア・ジェイドバイン。
もちろん本人は、レンタルしたグレー基調の迷彩柄ハーフパンツ水着の上に、白パーカーをしっかり着ている。
白パーカーは、「黒の方が紫外線カット効果は高いけれど熱を吸収してしまう。熱中症対策も考えたら白!」と考え抜かれたうえでの選択だ。
強力な日焼け止めを用意し、さらに、遊び疲れたときのためのパラソル付サマーベッドも手配済み、水分補給のためのドリンクは自家製ハーブティーという細やかな気配り。
「脱いでた方が涼しいじゃん?風が当たって気持ちイイじゃん」
しかしセイリューは、肩にかけられたパーカーをあっさりラキアに返すと、
「せめて日焼け止め……!」
というラキアを置いて、海へ駆け出す。
「ホント全然聞かないんだから」
後でヒリヒリしたって知らないよ、とラキアは泳ぎ回るセイリューを後目に、サマーベッドをセッティングする。
しかし、セイリューが脱ぎたがるのは今日に限ったことではない。
(夏は結構、脱ぎたがるんだよね。彼って)
入念に暑さ対策を行うラキアと違って、セイリューは「暑ければ脱げばいいだろう!」という考えなのだ。
男らしいというか単純というか。
まあそんなところも可愛いんだけど。
「ふー、遊んだ遊んだ」
泳ぎまくり、さらにラキアと水際でばしゃばしゃ水を掛け合いながら追いかけっこをして、その後また泳いで。
さんざん遊んだセイリューはサマーベッドに寝転がる。
「風が気持ちいい~」
「セイリュー、パーカー……」
「パラソルの下にいるんだから必要ないって」
お気楽に言うと、遊び疲れたセイリューは風の心地よさを楽しみつつ、うとうと。
やがて寝息をたて始めたセイリューを、ラキアは苦笑しつつ見つめる。
ごろん、と寝がえりをうち、セイリューの背中がこちらを向く。
彼の背中を見ていたら……ラキアにちょっぴり悪戯心が湧いた。
全くもう、人の言うことも聞かないで。
油断して寝ちゃっている君が悪いんです。
背中がヒリヒリする感覚で、セイリューは目が覚めた。
どうやら、眠っている間に太陽が動き、背中がパラソルの陰から出てしまったらしい。
「だったら起こしてくれよ」
とラキアに不満を言いつつ、自分の日焼け具合を確かめようと首を回す。
と。
「なんだこれ!」
マダラ模様の自分の肩に目を丸くするセイリュー。
ラキアが笑顔で鞄から手鏡を取り出し、セイリューの背中を写して見せる。
「うは、背中が春満開状態!?」
セイリューの背中は、桜の花びらと思しき模様でいっぱいだった。肩や腕にもちらほら花びらが散っている。
ここまで仕上げるには、相当の労力を要したであろう。悪戯のために苦労も厭わないとは、ラキアもなかなかお茶目である。
時代劇の登場人物みたいになってしまってあわあわしているセイリューに、
「君の言動に似合うと思って」
と、くすくす笑うラキア。
してやられた!と恨みがましい顔のセイリューであったが、すぐに、どうせ夏の間だけだし、こんな模様があるのもちょっと面白いかも?と思い直す。
セイリューはこの後、日焼け跡が薄くなるまでラキアと2人、時代劇ごっこをしたりしてそれなりに楽しんだということだ。
4 恋人の印
砂浜に体育座りのフィン・ブラーシュは広げたシートの上で穏やかな寝息を立てている蒼崎 海十を見下ろした。
海十はウィンクルムとして活躍する一方で、プロを目指してバンド活動にも打ち込んでいる。空いている時間も良い詩を作るため、常に感覚を研ぎ澄ませている。
そんな彼が、疲れているのはよくわかる。
自分と一緒の休暇で、ゆっくり休んでくれるのは、気を許している証拠だとも思う。
(ゆっくり寝かせてあげたいし、可愛い寝顔を見れるのはいいんだけど……)
オニーサンだって、海十とイチャイチャしたかった。そんな不満が生じても仕方あるまい。
眠っている海十相手に勝手にイチャイチャするわけにもいかず。
不満の発散は、「悪戯」という形で決行されることとなった。
上衣を脱ぎ、下衣は膝上まで裾を捲りあげた格好で眠っている海十を見下ろし、にやり、と笑うフィン。
強力タイプの日焼け止めで海十の左胸辺りに、落書きの定番、相合傘を。
書き入れるのは、勿論「海十とフィン」二人の名前。
それだけでは味気ないので、効果の弱い日焼け止めを使って相合傘の周りに小さなハートマークをいくつか散らす。
(我ながらいい出来)
なんだか楽しくなってきてしまったフィンは、海十が起きる気配がないことに乗じて、さらにメッセージを書き始める。
右の肩から上腕部にかけて『ショクジ、スイミンダイジ!』、左の膝下には控えめに『たまにはオニーサンにかまって』と。
身体に文字を書くとなんだか怪談に出て来る琵琶法師みたいになってしまったが、それはそれで面白い。
さあ、あとは太陽に仕上げをしてもらおう。
海十の睫毛が震えると、ゆっくり瞼が開かれた。
「おはよ、海十。よく寝てたね」
フィンの良い笑顔が視界に入る。
「……俺、寝てた?」
頭を振りながらゆっくりと起き上がる。
「悪い……まだぼーっとする」
ぼんやりとした視線が、ふいに定まる。左脚に「オニーサン」の文字が見えたから。
「ん……?」
海十がまじまじと自分の脚を眺める。それから、はっと気づいて自分の身体のあちこちをチェック。腕のメッセージと、胸の相合傘にも気付いたようだ。
(怒られるかな……)
と身構えたフィンだが、海十は相合傘を見て真っ赤になったまま何も言わない。
いや、ここは怒るべきところだろうと海十だって思ってはいる。
こんな、人前で肌を見せられない姿にされて。
なのに。
(どうして俺は嬉しくなってるんだ?)
「ごめん、でも俺……印、付けておきたかったのかも」
フィンの言葉に海十は顔を上げる。
「恋人としては、いつでも独占したいから」
照れ笑いのフィンに、海十の胸は嬉しさでいっぱいになった。
「フィンばかりズルい」
思わず口をついて出た言葉に、フィンは不思議そうな表情をする。
「俺だって……その……」
一度深呼吸をしてから。
「……独占欲は、ある」
言ってしまってからさらに顔が熱くなる。
フィンは、照れと嬉しさが混じった笑顔を返した。
お互いの気持ちを確かめ合ったとはいえ、やはりこのままでは海十の今後の生活に支障が出る。
「日焼けの上書き、付き合うよ」
とフィンが言い、もう少し海で遊ぶことに。
海十にしたって寝てしまった分の時間を取り戻したい。
たくさん遊んでたくさん笑って、喉が乾いたら海十はフィンに「待ってろ、美味いジュースを飲ませてやる」と言うと、するするとヤシの木を登り、実を手に入れる。
魔法のヤシの実。そのジュースはとても美味しいという噂だ。
一口飲んで、
「美味しい」
と顔を綻ばせるフィン。
「噂どおり、魔法の実だな」
満足そうに海十が笑うと、フィンは「違うよ」と首を振る。
「魔法の実だからじゃなくて、海十がとってくれたヤシの実だから、美味しい」
「っ、ま、また、そういう事を……っ」
最近のフィンは、海十の心拍数を上げる言動が多い。最早天才的だ。天然なのか計算なのか。
「日焼けの後、薄くなってきたね」
フィンが海十の腕に視線をやり「良かった」と言う。
「あ……うん」
海十は複雑な心境だった。
フィンが残したいろいろなもの。
海十を気遣う言葉。フィンの素直な願望。そして……フィンの印。
確かに、このままだったら日常生活に困るけど。
だけど、
(日焼け、消えなければいいのに……)
なんて、少し思ってしまう海十なのであった。
5 夏の間だけの、秘密
桐華は優秀なテンペストダンサー。依頼があれば、神人、そして仲間と共に果敢にオーガに立ち向かう!
……が、睡魔には勝てないようだ。
一応遊ぶつもりで水着になってはいるものの、ベッドにごろりと横になればパラソルの日蔭が意外と心地よく、たちまち瞼は重くなる。
(桐華さんのばーかばーかばーか!!)
叶は胸の中で桐華に悪態をついた。
お疲れなのは知っているけどさ。
でも、せっかく準備万端で、お弁当まで作ってきたのに……のに!
「むー」
このままじゃ済まさないぞ、と、叶は鞄の中から強力日焼け止めを取り出す。
「この日焼け止め顔はオッケーかな?ま、いいか」
(桐華さんなんてこうしてくれる!)
叶は桐華の頬に、日焼け止めでぐいーっとハートマークを描く。
あ……これは意外と可愛いかもしれない。
まぁ、さすがにこれが残ると困るだろうから後で全部塗らせよう。
(後はー……)
次に叶が狙うは半袖着用時にぎりぎり見えそうで見えない上腕部。
そこにも大きなハートを描く。
(簡易刺青みたいだねー)
「桐華さんかっこいー」
小声で囁くも、桐華は僅かに眉を動かすだけで、まだ起きる気配がない。
「まったくもう……」
叶は肩をすくめると、もう一か所、日焼け止めを塗りはじめた。
なんだか幸せそうに微笑みながら。
そして、自分の手の甲にも塗る。
「これは、僕もお揃い。どうせ、僕も桐華も人には見せない部分だけどね」
「桐華さんのばーかばーか」
と言いながら叶が桐華を触りまくる。
桐華はそんなおかしな夢を見た。
触られた感触が妙にリアルだったが……。
「まさか日焼け止め塗られてるとは思わなかったな」
目覚めた桐華は、上腕部にしっかりと残ったハートマークを目にして、溜息をつく。
「で、顔にも塗ったって?」
「うん」
悪びれもせず、笑顔で叶は頷く。
「たく……ほら、寄越せ、日焼け止め」
桐華が叶に掌を差し出す。
「どうして?」
「重ねて塗らないとこの腕みたいな変な跡が残るんだろ?」
「えー、変じゃないのに、可愛いのにー」
言いつつも、叶は素直に桐華の掌に日焼け止めを渡す。
その際、桐華は気が付いた。日焼け止めを渡した叶の左手、その甲に。
紋章を囲むようにハートマーク。
「……それ」
目を丸くする桐華に、叶は
「お揃いだよ」
と告げる。
桐華は急いで自分の左手の甲を確認する。
そこにも、叶と同じように紋章を囲むハートマークが。
「……本当だ」
普段は手袋等で隠れていて、他人の目には触れぬ部分だ。
「二人だけが知ってる秘密っぽくて、良くない?」
「お前は、たまにこういうの仕込んでくるよな……」
そう言いつつ桐華は、夏の間くらいは、こういうのも良い、と思ってしまった。
にま、と笑った叶が桐華の顔を覗き込む。どう?と感想を求めるが如く。
「……気に入ったよ。悪いか」
照れを隠すようにぶっきらぼうに言う桐華に、叶は朗らかに笑う。
「あはは、気に入って貰えたようで何より」
桐華は、頬と上腕部に日焼け止めを重ね塗りすると、左手にはグローブをはめた。
この部分だけは、消したくなくて。
「遊びたかったんだろ。目一杯付き合ってやるよ」
桐華が手を差し出すと、同じくグローブをはめた叶の左手が重ねられる。
2人は海に向かって駆け出した。
夏の間だけの、2人の秘密。
お揃いのハートマークは、まるで2人の心が繋がっていることを示しているかのようだった。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:叶 呼び名:叶 |
名前:桐華 呼び名:桐華、桐華さん |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 木口アキノ |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 07月27日 |
出発日 | 08月02日 00:00 |
予定納品日 | 08月12日 |
参加者
- 叶(桐華)
- アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
- 日暮 聯(エルレイン)
会議室
-
2015/08/01-11:05
初めて「印籠「公方」」を装備して謝ってみた
土下座効果は出るだろうか
何故あやまったかは内緒だっ(笑
さってプランも出せたし、ひと眠りといくか(くかーーくかーー -
2015/08/01-00:29
-
2015/08/01-00:29
フィン:
あらためまして、フィン・ブラーシュです。
パートナーは海十。
皆、宜しくお願いするね!
海十が眠っちゃったので、オニーサンが悪戯する予定だよ。
何を書いちゃおうかな…♪
楽しいひとときになるといいね! -
2015/07/31-21:22
エルレイン:
挨拶、ちょっと遅れました。
私はエルレイン。どうぞ気軽にエルーと呼んで下さいな。
こっちの真っ赤なお菓子食べてる子は私の神人、ヒグラシ・レンたん。
宜しくお願いしますね。 -
2015/07/31-12:08
-
2015/07/31-00:27
-
2015/07/31-00:22
-
2015/07/31-00:05