【水魚】疲れた体にオクトパス・マッサージ(瀬田一稀 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「お疲れのウィンクルムのみなさん、当店自慢のオクトパス・マッサージを受けてみませんか?」

 そんな声がかかったのは、海底都市アモルスィーの街中でのことだった。古代の神殿を思わせる巨大な白い柱の前で、男が客引きをしていたのだ。
「オクトパスってことは、タコ……ですか?」
 聞けば美しい衣を見にまとった男が、こくりと一度頷く。
「そうです。人間をマッサージするのに、人間の二本の手だけじゃ足りないって思ったことはないですか? その点タコならば八本の足がありますからね。しかも吸盤もついてますから、マッサージし放題です」
「でも……タコですよね?」
「大丈夫、特別な訓練を積んでいますから! 当店のコタコちゃんは大人気なんです。ちなみに二番人気はアカタコくんです。コタコちゃんは丁寧な接客を、アカタコくんは力強い接客を得意としているんですよ」
 そう言って店主はコタコちゃんとアカタコくんを描いたイラストを見せてくれた。……が、正直違いはよくわからない。コタコちゃんは足の一本のサンゴのブレスレット……いや、アンクレットをはめていて、アカタコくんはわかめのはちまきをしているというくらいだ。
「どうです、試してみませんか。当店のオクトパス・マッサージは、おひとり様200jrになります。ああ、コタコちゃんとアカタコくんはこの空気が満ちたドームでは生活ができないので、海の中に潜る必要がありますが……あなた達、スピリット・チョーカーをつけていますから、問題はないですよね」

解説

タコのマッサージをうけてみませんか。
おひとりさま200jr。
お店は海底都市アモルスィーの外になりますが、客引きの男性が連れて行ってくれるので迷子にはなりません。

海中でタコさんたちの四本の足に手足をくるりと掴まれて、残りの四本の足でもまれる形になります。
コタコちゃんは柔らかめのマッサージをしてくれます。ツボを押さえられても痛いと叫ぶことはない程度の力です。
アカタコくんは力を込めたマッサージをしてくれます。あなたが疲れていたりすると、逃げたいほどの痛みに襲われるかもしれません。
また、どちらの子も悪いところは吸盤でひっぱってくれます。

ウィンクルムのうち片方が施術を受けて片方は見守っていてもいいですし、二人ならんで施術を受けてもいいです。
しかしその際は順番でということはありませんので、一人はコタコちゃん、もう一人はアカタコくんとなります。

このタコさんたちは喋りません。こちらの言葉はわかってくれます。


ゲームマスターより

こんにちは、瀬田一稀です。
リザルトは店の中……というか、海中でマッサージを受けているところがメインになります。タコさんは人の手足をくるくるできるほどなので、結構大きいものを想像してくださいね。
描写はウィンクルムごとになります。客引きの男性はウィンクルムを連れてきた後またお仕事にいきましたので、この場にはいません。後ほど迎えに来てくれます。

ジャンルはコメディになってますが、どんな感じでも大丈夫ですよ。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  アカタコさん、桐華さんを念入りにマッサージしてあげて!
僕はそれを眺めてる
それにしても、おっきいタコさんは迫力があっていいよね
え?思ってない思ってないそんな事思ってないよ!(にこにこ)

やー、桐華さん、日々僕に振り回されてお疲れでしょう?
労ってあげてるつもりなんだけどなぁ?
ま、からかうのは程々にして
ちゃんとね、お疲れな桐華さんを今後も癒してあげれるよう
勉強するつもりでいるんだよ。これでも

というわけでどこが気持ちいいのかちゃんと口にして言うこと
おっけー?

思ってたより桐華さんがそれっぽい対応してくれてる
いやぁ、サービス精神旺盛だなぁ
口にしてくれたらベストだったけど…どこがいいかなんて、顔見れば判るよね


スウィン(イルド)
  スピリットチョーカー初めて使ったわ!
海でも息できるって不思議ね~。貴重な体験…素敵♪
コタコちゃん、アカタコ君、よろしくね!
依頼で疲れがたまっててね~
おっさんはアカタコ君にしっかりマッサージしてもらおうかしら
(初めての体験にわくわく)

あっ!い、いたたたたッ?!
痛いだけじゃなくてイタ気持ちいいけど!
イルド、余裕じゃない(ジト目)
イルドだってアカタコ君にしてもらったら同じように…
いったーいッ!?ああぁぁぁ(痛みで悶絶
うとうとしてるイルドは可愛いけど見る余裕があまりない)

(施術が終わって)はぁ…騒がしくってごめんね
痛かったけど気持ちよかったわ。疲れも吹っ飛んだみたい!
マッサージしてくれてありがとね!



信城いつき(レーゲン)
 
※アカタコくん

この足でマッサージしてくれるの?
興味津々で足や吸盤に触る

わー気持ちいい……ん?…いっ…いたたたっー!
足の裏めちゃくちゃ痛いー!
じっとしろと言われてる気がするけど、じっとするの無理ーっ!
(暴れるいつきと押さえつけるタコの戦い)

…どうなることかと思ったよ
でも終わったらすごく身体軽いや、ありがと!

レーゲンの方はまだかな?
コタコちゃん、手をマッサージしてるの見てていい?
…さすがに吸盤は無理だけど、ツボとか力加減とか見て、俺もレーゲンにしてあげられたらいいな。

気持ちよかったね。身体全体が楽になった感じ

はいはいっ、その時は俺がマッサージしてあげる!
今回(コタコちゃん見て)少しは勉強したし



アイオライト・セプテンバー(白露)
  パパと一緒に並んでマッサージしてもらおうっと
あたしコタコちゃんと遊びたいから、パパがアカタコくんねっ
でも、コタコちゃんにマッサージされるより、コタコちゃん枕にするほうが気持ちよさそう
怒られるかなー
じゃあ、あたしがコタコちゃんもみもみしちゃう
あたしもちょっと出来るんだよ(スキル・エステ)、蛸さんのはしたことないけど

あたし元気いっぱいだから、少し早めに切り上げてもらって…
で、パパがどんなふうにマッサージされてるか、観察しようっと
おうちであたしがパパをマッサージしたげるから、その参考にするの
涙目のパパもかわいー♪
写真撮っちゃえーつんつんしちゃえー

ねーパパおなかすいたー
帰ったらたこ焼き食べに行こうよー



明智珠樹(千亞)
 
うねうねタコさんマッサージ…!
千亞さん、ぜひマッサージを!さぁ!

え?私も千亞さん揉んでいいんですか?
それでは私のあらゆるテクニック千亞さんに…!

違いますか残念です、ふふ。
それでは、アカタコさんにぜひ…!!

●強
アカタコさん、どうぞ思いっきり、
それはもう痕が残るぐらいに力強く、ぜひ。
遠慮は要りません、ふふ…!
(肩凝り酷い。身体ガチガチ)
く、ふふ…流石のパワァ…!しかしまだまだ…!
貴方の力はそんなものですかっ!?

嗚呼、そうですソレです、素晴らしい…!
く、ふふ、ふははははははは!
(痛いと笑い出すド変態)

●終
身体が軽くなりました…!(恍惚)
マッサージと千亞さんのキックは私を癒してくれますね、ふふ…!


 うねうねうにょうにょ。愛らしいコタコちゃんと男前のアカタコくんは、満面の笑み(イメージ)で、明智珠樹と千亞を迎えた。うにょり。コタコちゃんが足を一本揺らす。いらっしゃいませの挨拶の代わりである。
 珠樹はずいと、隣の千亞をコタコちゃんの前に押し出した。
「千亞さん、ぜひマッサージを! さぁ!」
 コタコちゃんはこくりと頷き、千亞の背後へと回った。にょにょーん。伸びた四本の足が、千亞の両手首両足首に絡みつく。背面からふわりと持ちあがった体に、千亞は「うわっ」と声を上げた。うねうね、うねうね。足には、吸盤がいっぱいついている。背中を揉んでくれるらしいコタコちゃんの姿は見えないが、これぜったい珠樹に妄想されるコースだ。
 わかってしまう自分が憎いが、わかってしまう程度には珠樹を理解してしまっている。コタコちゃんの足が、柔らかに千亞の背中に押し付けられる。にょん、にょん。押さえられるとなかなか気持ちがいい。ただ正面で珠樹がにやけているのが嫌だ。
「おい、珠樹もやれ」
 くいっと顎を上げて言ってやれば「え? 私も千亞さんもんでいいんですか?」ときたものだ。
「それでは私のあらゆるテクニックを千亞さんに……」
「ち・が・う!」
 蹴っ飛ばしてやりたいが足はコタコちゃんに囚われている。まあどうせ蹴ったってあふううんとか言うだけだからな、問題はない。それより。
「お前もマッサージうけろって言ってるんだ」
「なるほどそういうことですか。ではアカタコさんにお願いしますね」

 千亞はとろとろとしたまどろみの中にいた。マッサージはあまり受けたことがなかったのだが。
「気持ちいいもんだなあ……」
 千亞の背で、むにゃりとステップを踏む風のコタコちゃん。タコなのに人間のツボをしっかり心得てくれていて、肩甲骨のあたりがとてもイイ。ああ幸せだなあ。時折吸盤が、すっぽんと吸い付くのもたまらない。なんか体の悪いものが排出されそうだ。
 そこで聞こえてきたのは、珠樹の笑い声。
「ふ、ふふふ」
 なんだ、このマッサージに笑いどころなどあったか。もしかして僕を見て妄想を……。
 千亞はかっと目を見開いた。と、珠樹は千亞と同じように背中にアカタコくんをくっつけていた。首をひねり、アカタコくんを振り返る。
「どうぞ思いっきり、それはもう痕が残るぐらいに力強く、ぜひ。ええ、遠慮はいりませんとも」
 ふふふ、と笑う珠樹に、アカタコくんはにやりと片頬を上げた。(イメージ)うにょり。四本の足が、珠樹の背中を張っていく。にょん! 力を込めたのか、吸盤が肌に張り付いた。そこで、アカタコくんの眉間にしわが寄る(イメージ)
 ぐぐ、さらに込められる力。みょみょん。押し付けられる多くの吸盤。く、ふふ。珠樹の唇が開く。
「……流石のパワァ……! しかしまだまだ……! 貴方の力はそんなものですかっ!?」
 みょみょみょん。アカタコくんは自らのプライドと体重をかけて、珠樹の背を押した。その額には一筋の汗すら浮かんでいる(イメージ)
 珠樹はぐっと両手を握る。
「嗚呼、そうですソレです。素晴らしい……! く、ふふ、ふはははははは!」
「なんでコイツ、マッサージで白熱してるんだ……く、蹴り飛ばしたいのに足が……!」
 そのとき、千亞の両足からするりとコタコちゃんの足がほどけた。気がつくタコのコタコちゃん。これが人気の所以である。
「ありがとう、コタコちゃん。――この静かにしろ、ド変態!」
 珠樹の頭に炸裂する千亞の踵落とし。ちなみにコタコちゃんがちょうどこの位置に運んでくれた。気がつくタコのコタコちゃん。これが(以下省略)
「あはあああん」
 その声で、アカタコくんは全身から力が抜けた。ぬるうり珠樹に絡みつく、足に頭にその他諸々。ああ客に抱き付いてしまうなんて!
「なんて情熱的なマッサージ……!」
 珠樹の言葉に、瞳に涙を浮かべるアカタコくん。(イメージ)当人衝撃の失態であった。

「マッサージと千亞さんのキックは、私を癒してくれますね」
「蹴りを癒しというなド変態!」
 珠樹と千亞がにぎやかに帰っていく。海の中では、アカタコくんを慰めるコタコちゃんがいたとかいないとか。

 ※

「世界って広いよね……」
 レーゲンはコタコちゃんとアカタコくんを見上げた。ふわふわと海の中を漂う彼らははっきり言ってとてもでかい。信城いつきは興味津々で「この足でマッサージしてくれるの?」とアカタコくんの太い足や吸盤に触れているが、その適応能力の高さに、レーゲンは驚くばかりだ。
 とはいっていても、せっかくの機会である。
「じゃあ俺、アカタコくんにお願いするね」
「それでは私はコタコちゃんに頼むよ」
 ……と、二人はそれぞれ、マッサージを受けることになった、のだが。

「いっ……いたたたたっ!」
 さっきまでのんびりゆったりしていたいつきが、急に大きな声を出した。ばたばたと手足を振って暴れるも、そこにはアカタコくんの足がうにょにょんと絡みついている。客が波にのって流れて行かないようにと、けっこうしっかり押さえてくれているのだ。だから、いつきが暴れるくらい、アカタコくんにはたいしたことではない……ので、遠慮をしないアカタコくん。ぐいぐいといつきの足裏に、自らのうみょった足先を押し付ける。
「痛いんだってばっ」
 それを蹴り上げるいつき。しかしアカタコくんはコタコちゃんほどマイルドではない。他のあいている足でにょんにょんといつきの肩を叩き「落ち着け、これも君にかせられた試練だ」と囁くと(イメージ)、さらに力を込めて、足裏を押した。
「ちょっとおおお」
 暴れるいつき。押さえこむアカタコくん。どちらも気を抜けない勝負である。

 さて一方レーゲンは、うっとりふわふわマッサージを受けていた。あんな大きなタコさんにのりかかられるなんてどんなものかと思っていたけれど、案外普通に気持ちがいい。肩や手を押さえてくれるコタコちゃんの手つきは優しくて、みょんと触れる足先のぺとつき感も、全く気にならない。
「ここ、凝ってますね」(イメージ)
「ああ、最近仕事で、細かい作業が続いていたからね」
「それはそれは……さぞお疲れでしょう」(イメージ)
 丁寧な指圧……足圧? にレーゲンはつい、言葉を返してしまうくらいだ。
 こんなに気持ちがいいなんて本当に幸せだ……と相棒の方を見やる。と。
「……なんだか戦ってるようにしか見えないんだけど、大丈夫かな」
 いつきにのしかかるアカタコくんは、舌打ちでもしそうに不機嫌だ(イメージ)
「まさか墨とか吐かないよね?
 呟いた途端、コタコちゃんがふるふると首を振る。そうか、ないのか。これは失言だった。
「ごめんね、そんなことしないよね」
 謝ると、コタコちゃんはさすさすと腕を揉んでくれた。絶秒な力加減。いつきには悪いが、だんだん眠気がやってくる。

 相棒の寝顔とコタコちゃんのマッサージを、いつきは観察していた。どうなることかと思ったマッサージだったが、終わったらすごく身体が軽くなっていた。まだ終わっていなかったこちらにやってきたのは、自分もレーゲンにこんなマッサージをしてあげたいと思ったからだ。
 それに寝ているレーゲンって可愛いし。
 ふふ、と笑って、後は熱心にコタコちゃんから勉強モード。ツボとか力の入れ方とかね、大事だから。レーゲンが俺のマッサージでくつろいで、こんな風に眠ってくれたら幸せかも。

 ふわふわ、ふよふよ。
 タコさんたちのマッサージは終わり、二人は帰路についている。
「ああ、気持ち良かった。でも海の中だけでしか会えないのが残念だね。自宅にも居てほしいよね、こうこういう上手なマッサージ屋さん」
 レーゲンは未だ手を振り続けるコタコちゃんたちを見て言った。そこですかさず、いつきが手を上げる。
「はいはいっ、そのときは俺がマッサージしてあげる! 今回レーゲンが寝ている間に、少しは勉強したし」
「熱心だな。ありがとう。そのときはよろしくね」
 優しい相棒に笑顔を返し、レーゲンはふと首を傾げた。
 ん? 勉強したって、アカタコくんから? ……大丈夫かな?
 いつきVSアカタコくん。バトルモードのマッサージを思いだし、レーゲンは笑顔をひきつらせた。

 ※

 みょーんと大きなアカタコくんを見上げた叶は、傍らの相棒桐華を指さした。
「アカタコさん、桐華さんを念入りにマッサージしてあげて。僕はそれを眺めてるから」
 こっくん。深く頷くアカタコくん。すぐにでも桐華を持ち上げようと、柔らかい粘膜の足を伸ばしてくる。しかし桐華は冷静だ。アカタコくんの足を華麗に避けて、叶を見る。
「お前もやれよ。眺めてないでやれよ。『それにしても、おっきいタコさんは迫力があっていいよね』じゃねえよ」
 にょにょん。客を捕えようと、アカタコくんは熱心に足を動かしている。それをテンペストダンサーの身軽さを使って避ける桐華。
「ちょっと桐華さん。そんなに避けたらアカタコくんに失礼だよ」
 叶の言葉に、アカタコくんはまたも深く頷いた。悲しそうなつぶらな瞳。(イメージ)確かに仕事が遂行できないのは辛いだろうと、桐華は諦めて動きを止めた。にょにょん。すかさずアカタコくんに、手足を絡め取られる。肌に張り付く吸盤が、逃げることを許さない。叶はにこにこ上機嫌だ。
「お前、エロ漫画的な光景だとか思ってんじゃねえの」
「え? 思ってない思ってない、そんなこと思ってないよ」
 にこにこ、にこにこ。張り付いた笑顔が、なんとなくちょっと嘘っぽい。でもいかにも叶らしい、気もする。
「やー、桐華さん、日々僕に振り回されてお疲れでしょう? 労わってあげてるつもりなんだけどなあ?」
 みょん。アカタコくんの吸盤が、桐華の背中に張り付く。
「振り回してる自覚があるなら、改めてくれればいい」
 みょん。もうひとつ、吸盤ぺとり。
「……って言っても無駄か」
 みょみょん。さらなる足が、肩をタッチ。
「叶に自覚があって、俺が許容してるから……手遅れすぎる」
 叶は笑顔を真顔に変えた。タコを背負った桐華の顔を覗き込む。
「僕は、ちゃんとね、お疲れな桐華さんを今後も癒してあげられるよう勉強するつもりでいるんだよ、これでも」
 みょみょみょん。アカタコくんの自由になっていた最後の足が、桐華の腰に触れる。
 わかったよ、と桐華が答えてしまったのは、真剣な叶の眼差しを見てしまったからだろう。叶はまたもにっこり微笑むと、諦めた表情の桐華の頬をそっと撫ぜた。
「というわけで、どこが気持ちいいのか、ちゃんと口にして言うこと。おっけー?」
「……おっけー」

 だが、しかし。
 ――気持ちいいところなんてないだろ、これ!
 桐華はぎりりと唇を噛みしめた。怪我をするよりは痛くない、痛くない痛くないと言い聞かせ、背中のあちこちをうにょうにょぺたぺたする足に耐えている。いかにも柔らかそうに見えるくせになんだよこの力は。最初は気持ち良かった気がするけど……なんて考え続ける余裕がない。
「桐華さん、気持ち良くない? だめ?」
 くっそ、見てりゃわかるだろ聞くな叶!
 口を開けたら痛いと言いそうで、でもそれはアカタコくんの手前申し訳なくて。ひたすら歯をくいしばって耐える。両手は強く握ってしまったが、それは仕方のないことだ。
 アカタコくんの足は、腰から尻、太ももへと下っていく。ぬめった足が素肌をなぞるのは、何とも微妙な感覚だ。
「お尻が凝っていると腰が痛むんだ」と言うアカタコくん(イメージ)
 あ、そこは痛気持ちいいかも……と思うが、直後、にょにょん! と押さえこまれた。だめだやっぱり痛い!
「くっ……」
 耐えるため、眉間にきつくしわが寄る。
「あ、今のとこツボだったのかも」
 自覚はないだろうけど、桐華さん思ってたよりそれっぽい反応してくれてる。口に出してくれたらベストだったけど……どこがいいかなんて、顔見れば判るよね。
「……なんだよ」
「なんでもなーい。今度はちゃんと、僕に揉ませてね、桐華さん」
 最低限で問うた桐華に、叶は満面の笑みを見せた。

 ※

「ちょうどいい機会です。これからに備えて、じっくり体をほぐしてもらいましょう」
 そう思い、白露はアイオライト・セプテンバーとともに海中へとやってきた。しかし、コタコちゃんとアカタコくんは想像以上のビックサイズ。アイオライトは無邪気にコタコちゃんに話しかけているが、白露はそうはいかなかった。アカタコくんが、なかなかにシリアスな顔(イメージ)をしているからである。
「あたし、コタコちゃんともっと遊びたいから、パパがアカタコくんねっ」
 アイオライトはコタコちゃんと手をつないだかと思うと、にこにこと足に吸盤を付けられている。手を絡め取られなかったのは、アイオライトが「あたしもコタコちゃんもみもみしたい!」と言ったからだろう。人の心を解するコタコちゃん、さすがの優しさである。
「コタコちゃんの肌、すごいつるつるしてるね。あ、吸盤は別だよ!」
 もみもみ、もみもみ。小さな手(コタコちゃん比)で熱心にタコの足をもむアイオライト。エステのスキルはタコには効果はないだろうが、コタコちゃんは満足げである。
 その間、白露はアカタコくんに向かって一礼をすることから始めていた。
「どうぞお手柔らかにお願いしますね」
 アカタコくんは返事のかわりに、うにょにょんと四本の足を伸ばしてくる。それで背中側から、白露の両手両足を拘束した。
「どこが凝っているんだい?」(イメージ)
 背中をたたん、と叩くアカタコくん。
「背中と腰と肩を……全部ですね」
 なにせ子育てに忙しい身である。自由気ままなアイオライトは立派な愛……娘であるが、ぶっちゃけ疲れる。わりと。
「オーケイ、わかった。あんたも苦労性だな」
 声は聞こえないが、アカタコくんはなかなかいい奴のようだ。白露がそう思ったのは、うにょうにょと這う彼の足が、絶妙な力で筋肉をほぐしてくれたからである。
「あ……いいですね、そこ……あれ?」
 ぺとりと張り付く吸盤。みょんと押される肩のあたり。凝りまくっていることは自覚している。けれど。
 ……痛いです。ちょっとじゃなく、ものすごく痛いです!
 みょん、みょん、びよん、びよん。
 二本の足に揉まれ、二本の足に吸い付かれる。これはすぐにでも外したい。しかし。ちらりと視線が向いた先には、金髪を波に漂わせるアイオライト。
「あー、楽しかった! コタコちゃんありがとう。あたし、パパの方見に行くね!」
 元気いっぱいの彼女は、ふわふわとこちらに向かってくる。あんな愛娘を前に、泣き叫んで醜態をさらすことは、白露にはできなかった。
 海中なので握り締める枕はなく、ぎゅっと拳を握って耐える。すっぽん、と吸盤が離れたところが、じんじんと痺れている。そこを寄ってきたアイオライトがつんつんつつく。
「アイ、そこ痺れてるんでっ、わざわざつつかないでください!」
「ふふ、涙目のパパかわいー♪」
 ばれてる。いろいろばれてる。っていうかなんでこんな近くで見ているのか。
 白露が聞くと、アイオライトはきょとりと大きな瞳で、アカタコくんの手元を見た。
「おうちであたしがパパをマッサージしたげるから、その参考にするの」
 ――それでは、見るなとは言えませんね。
 なんて優しいうちの子。でも。
「だから、つつかないでくださいって!」

 さて、帰路である。
 コタコちゃんとアカタコくんに挨拶をして、海中都市を目指す。道中アイオライトは嬉々としてコタコちゃんのことを語っていたが、不意に自分のぺたんこのお腹に手を当てた。
「ねーパパ、おなかすいたー。帰ったらたこ焼き食べに行こうよー」
「たこ焼き……あの、アイ、さっきまで仲良く遊んでいたのは……」
 いえ、深く考えないようにしましょうと、白露は思考を中断する。
「でも私は……タコは抜いてもらいますね。今は、ちょっと」

 ※

 海の中を、スウィンとイルドは歩いている。光が差し込む海中はキラキラと輝いていて、周囲には色とりどりの魚が泳いでいた。
「スピリットチョーカー、初めて使ったけれど、海でも息できるって不思議ね~。貴重な体験……素敵♪」
 スウィンはご機嫌でイルドの手を引いていた。そんな彼らを迎えてくれたのは、都市で話に聞いていた、コタコちゃんとアカタコくん。でっかいタコさんたちである。
「コタコちゃん、アカタコくん、よろしくね!」
 人間相手同様、にこりと微笑みかけるスウィン。選んだのは力強いマッサージがウリのアカタコくんである。
 スウィンが指名をすると、アカタコくんは嬉しそうに足を持ち上げ、すぐさまスウィンの手足に絡みついた。傍らではコタコちゃんが丁寧にイルドに挨拶をしている。巨大な頭がうにょりと下がったのでイルドは一瞬驚いた。が、身を引くことはせずに口を開く。
「よろしく頼む」
 コタコちゃんの足が伸びる。みょんと手足をとられて、波間に体が浮かんだ。
 先にタコの足に抱かれたスウィンは、すでに四本の足で背中を揉まれ始めていた。本人が落ち着いているから問題はないが、傍目にはどう見てもタコに襲われる人間の図だ。うにょーん、うにょーんとたゆたう身体。真顔(イメージ)のアカタコくん。囚われた手足。自分もそんな風に見えているのかと思うと、心地よさげに目をつぶっているスウィンには、そのままで居てもらいたい。
 イルドの背中にも、コタコちゃんの足が伸びてきた。にょにょん。まずは軽くタッチして。うにょん。ぐっと押される。的確な位置と力加減に、唇からはほうっとため息が漏れそうになった。
 いつもはマッサージなんて受けてなかったが、気持ちいいものだな。吸盤で引っ張られるとか変わってるが……悪くない。
 日頃の任務や筋トレで、肉体は疲れていたようだ。背中、腰、ふくらはぎ。コタコちゃんの緻密なマッサージは心地良く、揺れる波はウォーターベッドのようで、次第にまぶたが重くなる――。と。
「あっ! い、いたたたたたッ!?」
 突如聞こえたスウィンの叫びに、イルドはパッと目を開けた。まさかあの巨大タコに襲われでもしたかと寝ぼけた頭で焦って武器を探すけれど、体はコタコちゃんが捕まえているので動かない。そうか、そういえばマッサージ中だったと一息ついてスウィンを見れば、そこには涙目となった彼がいた。
「痛いだけじゃなくてイタ気持ちいいけど! これはけっこう強力ね」
 顔を歪めて耐えるスウィン。イルドと目が合うと、「余裕じゃない」と睨んでくる。
「こっちはちょうどいいからな。おっさん自分からそっちがいいって言ったんだろ?」
「そうだけど……イルドだって、アカタコくんにしてもらったら同じように……」
 そこまで言って、スウィンは大きな声を上げた。
「いったーいッ!? ああぁぁぁ」
 悶えようにも手足はアカタコくんにがっしり掴まれている。さっきまでせっかくうとうとしているかわいいイルドが見られていたのに、もうそんな余裕もない。

 結局。
 スウィンの悲鳴とともにマッサージは終了した。痛いのに耐えただけあって、今はすっきり体が軽い。
「騒がしくってごめんね。痛かったけど気持ち良かったわ。疲れも吹っ飛んだみたい!」
 ありがとね、と笑顔を向けるスウィンに、アカタコくんは満足そうに頷いた。その隣では、イルドもコタコちゃんに話しかけている。
「ありがとな。うまかった……と思う」
 コタコちゃんの頬がぽっと染まったのは……気のせい、か?
「イルド、タコさんにまで人気者なのね」
 そう言うスウィンとイルドの肩に、コタコちゃんの前足が伸びる。
「やだ、おっさん嫉妬とかしてないわよ?」
 まさかタコさん相手にと手を振れば、コタコちゃんは「わかっていますよ」と美しい笑み(イメージ)を見せ、二人の身体をそっと近づけた。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: CZ  )


エピソード情報

マスター 瀬田一稀
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月13日
出発日 07月20日 00:00
予定納品日 07月30日

参加者

会議室

  • [9]信城いつき

    2015/07/19-23:29 

  • [7]明智珠樹

    2015/07/19-23:13 

    こんばんは、貴方の明智珠樹です。
    ちゃんとしたご挨拶もできぬままにプラン提出完了です、ふふ…!
    タコに絡まれ悶える千亞さん…!コタコちゃん、アカタコちゃん達のテクニック…!
    皆様のマッサージ風景も覗きたいものですね、ふふ…!
    素敵なアレやコレやを非常に、非常に楽しみにしております、ふふ…!!

    千亞「出禁になるようなことだけはするなよ…(いつでも蹴りに入れる体制で)」

  • [6]明智珠樹

    2015/07/19-23:10 

  • [5]信城いつき

    2015/07/16-20:18 

  • [4]叶

    2015/07/16-18:16 

    いつもお疲れな桐華さんを労ってあげよう作戦を計画している叶でーす。
    僕もみんなの揉まれてるところちょっと見たかったけど…タコの子急かすみたいでかわいそーだし、
    大人しくのんびりと桐華さん眺めてあs(げっふんげっふん)まったりしてることにするー。

    ツボ押しマッサージでみんなすっきり疲れが取れると良いね。
    どうぞよろしくー。

  • [3]明智珠樹

    2015/07/16-17:28 

  • [2]スウィン

    2015/07/16-16:05 

  • たこ焼き美味しい(もぐもぐ)

    アイオライトです、別々になりそうだけど、今回もよろしくでーすっ。
    本当はみんなのマッサージされてるとこ見たいけど(・ω・)


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