ジュースを賭けてゲーム対決!(星織遥 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 タブロス市から北東に少し進んだところにある町。交通はタブロス市に比べると不便なところは否めない。しかしのどかなで場所で、公園で遊具を楽しむ子どもたちやベンチに腰掛けて談笑する大人たちの姿が見られる。そんな町に唯一娯楽施設と呼べるものが1つだけある。貴方たちはそこへ遊びにいくことに。
 町に着いて、その施設を見つける。外観はヒビや汚れが目立つ。しかし建物周辺の植物は手入れがされているようなので、これは手抜きではなく年季が入っているということだろう。中に入るとボウリング、ダーツ、ビリヤード、ストラックアウトの4つがそれぞれ区切られたスペースで遊べるようになっていた。どれで遊ぼうかと迷っているとき、ふと、1人がこんなことを言い出した。
「負けたほうが勝ったほうにジュースを1本おごるというのは?」
 普通にゲームを楽しむのも悪くない。けれど、少しエッセンスを加えたい。そんな感覚で出された提案。それを聞いて面白そうだ、ともう1人はその提案を受け入れた。
(ジュース1本ならそれほど高いものでもない。ちょっとした刺激にはちょうどいい)
 そうして2人はどのゲームで遊ぶのかを決めて、いざ勝負。

「すこしだけ、本気でいくよ!」

解説

ゲーム代など:500jr

ゲーム内容は以下の通りです(ルールは一部簡易化しています)
◇ビリヤード:ナインボール
①白球(手球)で1~9までのカラーボール(的球)を狙います
②一番小さい数の的球に手球を当てて、順番にポケットに入れていきます
③②を繰り返して9の的球をポケットに入れたほうが勝利
④一番小さい数、もしくは9の的球がポケットに入らなかったら手番交代です
⑤一番小さい的球に手球が当たっていれば、球同士の接触で9の的球がポケットに入っても勝利です
⑥9の的球のみが残った状態で2人とも失敗した場合は引き分け

◇ダーツ:カウントアップ
①10本のダーツを交互に投げます
②刺さったところの得点を加算していき、10本投げ終わった時点で得点の高いほうが勝利
③的は20に区切られていて、1~20点に割り振られています。中心は50点です
④同点の場合引き分け

◇ボウリング
通常のボウリングと同じ。同点の場合引き分け。

◇ストラックアウト
①縦3マス×横3マスの的で左上から右下に向かって1~9の番号がついています
②①の的に向かってボールを投げます。持ち球は9球
③多く的に当てたほうが勝利(同じマスはカウントしない)
④当てた数が同じ場合引き分け

●勝敗について
会議室で『10面ダイスを2つ』振ってください。
ダイスAを神人、ダイスBを精霊として数字の大きいほうが勝利です。
同点だった場合は引き分けです。また点数が近いほど接戦だと判断します。
スキルがある場合は補正として『ダイスに2点』加えます。
(ビリヤードとダーツはスキル『ビリヤード・ダーツ』、ボウリングとストラックアウトはスキル『スポーツ』を該当スキルとします)

●プランについて
どのゲームで遊ぶのか。ゲーム中・ゲーム後の会話や行動、勝敗結果。買うジュースの種類などをお願いします。
引き分けは2人でそれぞれ1本ずつ買ってください。
おごりの提案は神人・精霊どちらからでもOKです。


ゲームマスターより

星織遥です。
ゲームのルール説明で解説が長くなってしまい、すみません。
やったことがない方にも伝われば嬉しいです。
プランを書く際の参考にしてください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)

  ビリヤードで勝負は楽しそうですが、
ジュースを賭けるのは、その、子どもじみていますし。
「それに私、ビリヤードの勝負は初めてです」

(でも、球を打っている内に楽しくなってきました)
緊張しながらもキューを手に、1番の的球から順に打つ。
自分の番じゃない時は翡翠さんの構えを見つめたまま。
彼に点をいつ取られるのか、目が離せません。
(ビリヤード・ダーツスキル使用)

勝負後、翡翠さんにミルクティーを注文。
その時の背中がいたたまれなくなり、
半分飲んだ所を彼に渡す事で気遣い、気づく。
「あのっ、こ、これは!」

勿論、間接的にこんな事をするとは思っていませんでしたが。
「お金を出してくれたのは翡翠さんです。だから……どうぞ」



リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
  目的:ゲームを楽しむ
心情:勝負も面白いだろう?
手段:
ストラックアウトで遊ぶ
『スポーツ』使用

「敗者は勝者へジュースをご馳走のルールでも設定しないか?」
提案終われば、どちらの順序で行うか決める
私の番の時は、5番狙いの後、各所に散らす
自分の想定と実際のコース確認、修正しつつ、より多く当てることを狙う
「コントロール修正は、簡単なものではないが」
銀雪の番の時は、放る前は口出ししない(集中力が乱れる)
当てたら、「いいコントロールだな」とか「私も笑ってられないな」と褒める
(ダイス的にスキル加点での勝利)「辛勝といった所か。楽しかった。お前もやるじゃないか」
さて、銀雪にはスポーツドリンクをご馳走して貰おう



紫月 彩夢(紫月 咲姫)
  ビリヤードとダーツだったらどっちがいい?
だってストラックアウトとボウリングはあたし自信あるもの
じゃ、ダーツね。負けた方が勝った方にジュース一本ね

ルールを二人で一緒に確かめながら遊びましょ
咲姫から投げなよ
とりあえず…素直に得点高い所狙えばいいのよね

…ちょっと咲姫、ちゃんと真面目にやってる?
精霊って、戦えるけどゲームが強いわけじゃないのね
まぁ、運もあると思うけど、っと…投げ切ったけど…どう見てもあたしの勝ちよね

勝ったはいいけど、ジュースくらいなら咲姫はいつでも奢ってくれるのよね…
ねぇ、咲姫。ジュース自分で買うからさ、別のご褒美頂戴
じゃあそれで
何よ。早くしなさいよ
何照れてんのよ
…へんなの(微笑して)


瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  そうですね。
ジュースを賭けての真剣勝負、良いかもしれません。
でも私、運動系は苦手なのです。
だから『ビリヤード:ナインボール』に、しましょう。
(にっこり)

基本に忠実に行きますね。
ボールの反射は基本的に計算出来るものです。
正しい角度で手玉を撞けば、的球の動きが大きくそれる事は無いのです。
でも力加減が難しいので、冷静に落ち付いて撞きます。上級者のようなテクニックは無しで。
地道にコツコツとボールを落としていきます。
何故か、ミュラーさんはあたふたしていますね。
冷静になった方が有利だと思うのですが。
普段見た事無い姿なので何だか可愛い、とつい微笑んでしまいました。

オレンジジュースを下さいな。美味しいです。



エヴァ・シュッツェ(ラルス・ツェペリン)
  □ボウリング(提案は精霊)
「はい? あ、私から…で、良いんですか?」
そういうところだけ紳士ですよね。
(――どんどん点が入る)
「わ、ラルス、見ました?」
その後もエヴァの方に点数が入り、結局エヴァの圧勝。

ゲーム後
「でも提案もラルス、でしょう? ちび助って…あと1cmなんです。それからその悪人面、なんなんですか」
どれが良いか訊かれ、
「んー……じゃあオレンジにします」
ふわぁあ…(あくび)
疲れました。でもボウリングっていうのはなかなか楽しかったです。
「こういうのなら、また来たいですね」
また連れて行っても良いと言われ、微笑む。
今日は楽しかった。何かを賭けるのも悪くない。



 タブロス市から北東に少し進んだところにある町。これといった観光名所はないものの、のどかな雰囲気のなかで人々が暮らしている。そんな町に唯一娯楽施設と呼べるものが1つだけある。そこへ『七草・シエテ・イルゴ』と『翡翠・フェイツィ』、『リーヴェ・アレクシア』と『銀雪・レクアイア』、『紫月彩夢』と『紫月咲姫』、『エヴァ・シュッツェ』と『ラルス・ツェペリン』、『瀬谷瑞希』と『フェルン・ミュラー』の5組がそれぞれ遊びにきていた。


●気遣いと躊躇い
 施設へとやってきたシエテと翡翠は案内板で設置されているゲームを確認すると、ビリヤードのコーナーへと移動した。そこで折角の機会なのでジュースを賭けた勝負をしようという話題になった。
「ビリヤードで勝負は楽しそうですが、ジュースを賭けるのは、その、子どもじみていますし。それに私、ビリヤードの勝負は初めてです」
「俺も初めてだ」
翡翠はレンタルのキューを握って、簡単な構えを取りながら手に馴染むか確認する。
「けど、最初から勝負に慣れている人なんていないからね」
 勝負ではあるけれど気楽に。そんな雰囲気を感じさせる表情で翡翠は答えた。

 お互いに使うキューを決めたところで先攻・後攻を決めるコイントス。翡翠は手を軽く握り、親指でコインを上に弾く。それをもう片方の手に乗せるように押さえた。
「表が出たらシエ、裏が出たら俺から打つ」
 2人の視線が翡翠の手に集中する。コインを確認すると、それは表側が上になっていた。こうしてシエテが先攻、翡翠が後攻で決まった。シエテは緊張した面持ちで手球にキューを近づける。その視線の先には1番のカラーボール。慎重に狙いを定めてショットを放つ。緊張のせいで軌道の乱れた手球はなんとか1番の的球には当たったものの、ポケットに落ちることはなく台の上に残った。
 続いて翡翠の番。早く打ちたいという気持ちを抑え、キューを握る。その表情はポケットに入らなかったら、なんて考えていない。手球と的球の距離を見極め、キューを指の隙間から滑らせる。カツンと綺麗な音が鳴り、続けてポケットに吸い込まれた的球の落ちる音が聞こえた。まるでそれが勝負開幕を告げたようだった。2人とも指先に意識を集中させてポケットへいかにして的球を落とすかを考える。
(うふふ、球を打っている内に楽しくなってきました)
 シエテはそう思いながらビリヤード台を眺める。その台を挟んだ向こう側で翡翠がキューを構えている。彼女はその姿をずっと見つめている。いつ翡翠が勝負を決めてしまうか分からない。そんな気持ちがあり彼から目が離せずにいた。一方で翡翠もシエテが打つときにはその姿を見ていた。緊張も無くなり自然体で打てるようになったシエテはポケットへと的球を入れていく。そんな彼女の様子を見ながらも翡翠は勝つ気十分だった。ゲームはさらに進行し、的球も少なくなってきた。シエテが真剣な表情で台の上に並ぶボールを見つめる。意を決して構えを取ると、力の加減を考えながらキューを滑らせ手球を弾く。転がる白い球は8番の的球にあたり、さらに9番の的球へ当たった。カツンカツンと繋がる音に乗って9番の的球がポケットへと吸い込まれていった。このショットでシエテの勝利が確定した。

 勝負の決着がつき、2人はジュースコーナーへと移動した。翡翠は敗北した悔しさを笑みで隠して、シエテにミルクティーを奢る。それを受け取るとさっそく口をつけるシエテ。ふと視線を翡翠に向けると、負けたことが余程ショックだったのか、その背中はとても淋しそうだった。それを見た彼女はいたたまれなくなり、半分飲んだところで彼にミルクティーを手渡した。
「どうぞ」
「あ、ああ……」
 翡翠は彼女からミルクティーを受け取る。それを飲もうと口に近づけたところで、ふと動きが止まった。不思議に思うシエテ。躊躇いをみせる翡翠。少し沈黙が流れたところでシエテが気付いた。これは間接キスになる、と。
「あのっ、こ、これは!」
 必死に微妙な空気を払拭しようと試みるシエテ。彼女自身、予想していなかった事態に慌てている。なんて言葉をかけようか迷った末、彼女はこう話した。
「お金を出してくれたのは翡翠さんです。だから……どうぞ」
 その言葉を聞いて翡翠は表情を変えないまま、その言葉に返事をすることもなく残った中身を飲み干した。ふたたび訪れる微妙な空気。その空気のなかで先に動いたのは翡翠だった。シエテに近づくと耳元で、間接キス最高だった、と囁いた。
 お互いに相手を直視できなかったが、流れる空気はどこか温かいものに変わっていた。


●矢の射抜く先は
 彩夢と咲姫は建物に入ると案内板を確認する。すると彩夢が咲姫に問いかけた。
「ビリヤードとダーツだったらどっちがいい?」
「え?全部で4種類あるみたいだけど……」
 咲姫は改めて案内板を見る。ビリヤード、ダーツ、ボウリング、ストラックアウト。やはり4種類のゲームが書かれている。
「だってストラックアウトとボウリングはあたし自信あるもの」
「あ、そっか、ふふ、ありがと、彩夢ちゃん。じゃあ、ダーツしてみたい」
「じゃ、ダーツね。負けた方が勝った方にジュース1本ね」
「あら、可愛い賭けね。勿論いいわよ」
 2人はそんなことを話しながらダーツコーナーへと移動した。

 ダーツコーナーには放射状に区分けされた的が用意されていて、そこから離れたところに投げる位置を示すラインが引かれていた。ラインの近くにある壁には遊び方と得点の数え方が貼られている。2人でそれを見ながらルールを確認する。
「とりあえず……素直に得点高い所狙えばいいのよね。まずは咲姫から投げなよ」
「うん、やってみるね」
 咲姫は彩夢に促され、ライン上に立つ。ダーツの矢を眼前に構え、的をめがけて放つ。しかしその矢は的のどこにも当たらず、枠の外に刺さっていた。次に彩夢がラインに足を乗せて構える。高得点である中心の部分に狙いを定めて矢を放つ。しかし的には当たったものの、中央には当たらず。そんな調子で交互に矢を投げていく2人。少しずつ得点を重ねていく彩夢。一方、矢が的を嫌っているのではないかと思うほど当たらない咲姫。
「……ちょっと咲姫、ちゃんと真面目にやってる?」
「ま、真面目にやってます……うぅ、私意外とノーコンかもしれない……」
「精霊って、戦えるけどゲームが強いわけじゃないのね。まぁ、運もあると思うけど、っと。さて、2人とも投げ切ったけど……どう見てもあたしの勝ちよね」
 スコアボードを確認するまでもなく、咲姫の記録的惨敗だった。

 ジュースコーナーへと移動した2人。しかし彩夢は少し悩んでいた。
(勝ったはいいけど、ジュースくらいなら咲姫はいつでも奢ってくれるのよね……)
「ねぇ、咲姫。ジュース自分で買うからさ、別のご褒美頂戴」
「別のご褒美?んーじゃぁ、ほっぺにちゅーとか」
「じゃあそれで」
「……え?いいの?本当に?」
「何よ。早くしなさいよ」
(何か、どきどきする。トランスで、いつもしてもらうのに)
「何照れてんのよ」
 咲姫は彩夢の顔を見ながら、心の中で色々なことが巡っていた。
(あぁ、もう、ずるいな、彩夢は。そんな可愛い顔、どこで覚えてきたんだよ。こんな可愛い女の子が、俺の妹だなんて。……なんで、こんなに可愛い女の子が、妹なんだろう)
「咲姫?」
「……悔しいなぁ」
「ん?ダーツに負けたのが?」
「うん、負けて、悔しいから」
「……へんなの」
 咲姫の言葉に微笑みながら返す彩夢。
「ねえ。別のゲームも、遊ばない?」
「いいよ」
 今の内に、少しでも一緒に。咲姫はそんな思いを胸に秘めて、彩夢と1日遊んだ。
 

●ギリギリの勝負
 リーヴェと銀雪は建物に入るとゲームの種類を調べる。そのなかからストラックアウトを選択した。さっそくそのコーナーへ移動しようと思ったとき、リーヴェがこんな事を言い出した。
「敗者は勝者へジュースをご馳走のルールでも設定しないか?」
 ゲームを楽しむのはもちろん、そこに勝負の要素を入れるのも面白い。そんな考えから出た提案。
「俺だって負けないよ!」
 その提案に前向きな返答をする銀雪。
(勝ったら、カッコイイって思って貰えるかも……)
 彼はそんな期待を胸に抱きながら、2人でストラックアウトのコーナーへと移動した。

 コーナーに着くと、そこには9つに区切られた的があり、野球のピッチング練習場を思わせるつくりだった。じゃんけんの結果、銀雪から投げることに。
(的の真ん中にいくように……できるだけ多く当ててプレッシャー掛けられたらいいな……)
 彼はボールを手にすると、すぐには投げずに的との距離感を測る。その様子を静かに見つめるリーヴェ。意を決すると銀雪はボールを振りかぶって投げる。ボールは放物線を描きながら的に向かっていき、そのうちの1枚を打ち抜く。
(やった!)
「いいコントロールだな」
 リーヴェに褒められて、嬉しいという気持ちから満面の笑顔を浮かべる銀雪。その後も慎重にボールを投げ続け、何球かフレームアウトしたものの、なんとか半分を超えることが出来た。
「なかなかやるじゃないか。これは私も笑ってられないな」
 そういいながらリーヴェがピッチングポイントにたつ。まずは中央の5番を狙い、そこから各所に散らす。自分の想定と実際のコースを確認。それをもとに修正しつつ、より多く当てることを狙う。
「コントロール修正は、簡単なものではないが」
 リーヴェは1球投げるごとにその軌道を分析して精度をあげていく。その様子を見つめる銀雪。
(当てないで……。でも、投げてるリーヴェもカッコイイ!)
 自らの勝利を願いつつも、彼女の姿に見惚れていた。ゲームは進みリーヴェが最後の1球を投げ終え、それが見事に的を打ち抜いたところで終了した。打ち抜いた的を数えると、リーヴェがわずかに上回っている。銀雪は負けたことにガックリと肩を落とした。
「辛勝といった所か。楽しかった。お前もやるじゃないか」
 しかしリーヴェの言葉を聞いて彼の表情がパァッと明るくなる。
「さて、銀雪にはスポーツドリンクをご馳走して貰おう」
 2人はジュースコーナーへと移動すると、銀雪は彼女にスポーツドリンクをおごった。すると彼女はご褒美だといって、銀雪にオレンジジュースを買った。彼は嬉しそうにそれを受け取ると幸せな笑みを浮かべた。ふと視線をゲームコーナー全体に向けると、同じく遊びにきたと思われる男女2人組がちらほら見えた。どこも戦況は男性側がおされているようだ。
(俺達頑張ろうね……)
 銀雪は心の中でそう呟いた。


●圧倒的勝利
「負けたらジュース奢るってのはどうだ?」
 施設に到着してからボウリングコーナーへと移動したエヴァとラルス。シューズを専用のものに履き替えているときに、突然ラルスがそう言い出した。ちょっとした刺激があったほうが面白い、といった程度の提案だろう。エヴァはそれを了承した。そして2人はそれぞれボールを選び、ゲームを開始する。
「お先にどうぞ?お嬢様」
「はい?あ、私から……で、良いんですか?」
 そういうところだけ紳士ですよね、と内心思いながらエヴァはボールを構えると、ファウルラインから少し離れたところに立つ。そして勢いをつけながら第1投をレーンへと放つ。彼女の手元を離れたボールはゆらゆらと揺れながらもピンへと迫っていき、半分以上を倒した。続けて2投目を投げると1本だけ残り、あと一歩のところでスペアを逃した。しかし出だしは上々のようだ。
「わ、ラルス、見ました?」
「はいはい、見ている」
 ラルスはそう言いながら立ち上がると、自分が投げる準備に入る。ボールを構え、助走をつけてレーンへと投げる。勢いのついたボールはピンへめがけて進んでいったが、途中で横道に逸れてしまい端のほうに立つ数本しか倒れなかった。首を傾げるラルス。気を取り直して2投目を投げるもうまく行かず、半分も倒れなかった。
 第1フレームから違いの出た2人。この差がそれ以降のゲームにさらに反映されていく。
(……どんどん点が入る)
 エヴァは第2フレーム以降、どのフレームでも半分以上のピンを倒した。そのなかにはスペアも含まれ、点数は伸びる一方だった。対するラルスは調子が悪いのか。それともコントロールが悪いのか。そもそもボウリングに向いていないのか。倒れるピンの数も少なく、ストライクはおろかスペア1つ出ずに最終フレームを終えた。結果はエヴァが大幅な差をつけ圧勝した。
「……アバの勝ちか。ちび助のくせに生意気じゃないか」
「ちび助って……あと1センチなんです。それからその悪人面、なんなんですか」
「悪人面……」
 エヴァにとって身長があと1センチあるか無いかで、140センチ台か150センチ台かが変わる。それは彼女にとって大きな問題なのだろう。
「ところで、勝負はついたけれど……」
「……おい、ちょっと待て。なんだその曇り一つない目は……」
「だって提案もラルス、でしょう?」
 負けたほうがジュースをおごる。確かにその提案はラルスから出てきた。彼は仕方ないといった表情を浮かべながら、2人でジュースコーナーへと移動した。
 
「なにが良いんだ?」
「んー……じゃあオレンジにします」
 エヴァのリクエストを聞いてオレンジジュースを買うラルス。それをエヴァに手渡すと彼女は美味しそうに飲み始めた。
「ふわぁあ……。疲れました。でもボウリングっていうのはなかなか楽しかったです」
 あくびをしながらそう話すエヴァ。それを見て、案外本気で勝負を受けたのか、とラルスは感じた。そんな彼女の姿を見ながら義父への報告で何を伝えようかと彼は考えていた。一方彼女は変わらずオレンジジュースを美味しそうに飲んでいる。その様子をみてラルスは
「また連れてきてやっても良いぜ?」
 と言葉をかけた。それを聞いたエヴァは嬉しそうに微笑んだ。
(今日は楽しかった。何かを賭けるのも悪くない)
 彼女はそう思いながらジュースを飲む。ジュースが空になるまで2人でのんびりと過ごした。


●意外な収穫
 瑞希とミュラーは施設に入り、どのゲームで遊ぼうか迷っていた。ふと、ミュラーがこんなことを言い出した。
「そうだ。普通に遊ぶだけじゃ刺激が足りない。ジュースを賭けよう」
「そうですね。ジュースを賭けての真剣勝負、良いかもしれません。でも私、運動系は苦手なのです。だからビリヤードで『ナインボール』をやりましょう」
 そう話す瑞希の顔はどこか有無を言わせぬものを感じさせた。
(何やらミズキにヘンなスイッチか入った気がする。い……意外と負けず嫌いだったのか?それとも真面目な彼女の事、賭けゲームが何かマズかったのか?)
 彼女の笑顔を初めて怖いと思ったミュラーだった。

 ビリヤードコーナーまで来た2人は係員からキューを借りてビリヤード台に近づく。カラーボールを台の上にセットして、いざブレイクショット。弾かれた的球が所狭しと台の中をさまよう。その動きが完全に落ち着いたところで瑞希が手球を台に置き、ショットの構えをとる。
(あくまで基本に忠実に、上級者のようなテクニックは無しでいきましょう。ボールの反射は基本的に計算出来るものです。正しい角度で手球を撞けば、的球の動きが大きくそれる事は無いのです。でも力加減が難しいので、冷静に落ち着いて……)
 指の隙間でキューを滑らせながら思考を巡らせる瑞希。1つ1つ堅実にポケットを狙う。最初はうまくいかなかったが慣れるにつれ、力の加減をだんだんと把握していく。一方、ミュラーは先ほど見た瑞希の笑顔が尾を引いていた。
(勝負の前に心的動揺はいけないな)
 そう思い、気持ちを切り替えてキューを握った。慎重に的球へ狙いを定めて手球をショットする。しかし放たれた手球は的球をかすめただけで、ポケットとの距離はほとんど縮まっていない。
(あ……あれ?何だか手玉が思った所に行かないというか……ちゃんと的球に当たってくれない……)
 何度もポケットに入れようと試みるが、どうにもうまくいかない。そうしている間に瑞希が次々にポケットへと的球を沈めていく。
(何故か、ミュラーさんはあたふたしていますね。冷静になった方が有利だと思うのですが。でも普段見た事無い姿なので、なんだか可愛い)
 ミュラーの思わぬ姿に微笑みを浮かべる瑞希。その表情にさらに心を乱されるミュラー。なかなか当たらなかった手球がさらに当たらなくなり、気がつけば瑞希が9番の的球をポケットに入れ、勝負がついていた。

 ジュースコーナーへと移動した2人。瑞希はどれにしようか悩んでいる。
「オレンジジュースをくださいな」
 悩んだ末に彼女が決めたのはオレンジジュース。その要望を受け入れ、それを差し出すミュラー。ジュースを受け取ると瑞希はさっそく口に含む。
「おいしいです」
 勝利の味も相まってか、とても満足そうな瑞希。
(全然当たらなかったな……でも、今回の収穫は彼女の意外な一面を見れたという事で……)
 ミュラーは楽しそうにオレンジジュースを飲む瑞希の横顔を見ながら、そんなことを考えていた。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 星織遥
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月05日
出発日 07月12日 00:00
予定納品日 07月22日

参加者

会議室

  • ご挨拶が遅れました。
    瑞希さん、エヴァさん、初めまして。七草・シエテ・イルゴです。
    リーヴェさんは先日。彩夢さんはお料理コンテストお疲れ様でした。
    改めて皆さん、よろしくお願いします。

    うふふ、どちらが勝つんでしょう。
    ……と思ったら、ダイス面を見た限り、こちら(神人側)が優勢のようですね。
    何か強運でも持ち合わせているのでしょうか。

    私達はビリヤードで勝負する予定です。
    他の種目で遊ぶ方もどうか楽しい一日になりますように。

  • [7]瀬谷 瑞希

    2015/07/11-14:56 

    色々と考えてゲームはビリヤードにします。
    他のゲームだと、ミュラーさんに勝てる気がしません。

    皆さんが楽しいひと時をすごせますように。

  • [6]瀬谷 瑞希

    2015/07/11-00:25 

    こんばんは、瀬谷瑞希です。
    パートナーはファータのミュラーさんです。
    紫月さんはまたご一緒できて嬉しいです。
    七草さんとリーヴェさん、エヴァさんは初めまして。
    どのゲームにしようかまだ迷っていますが、
    皆さま、よろしくお願いいたします。

    【ダイスA(10面):5】【ダイスB(10面):2】

  • [5]エヴァ・シュッツェ

    2015/07/09-19:58 

    どうもこんばんは。私はエヴァで精霊は兄のラルスといいます。
    彩夢さん、咲姫さんは先日ぶりですね。
    七草さん達とアレクシアさん達は初めましてです。
    えぇと、宜しくお願いしますね。

    こちら側はラルスの要望でボウリング、にします。

    【ダイスA(10面):10】【ダイスB(10面):1】

  • 私スポーツスキルあるから、加点あるんだよな。
    だから、私の勝利だが……。

    つまり、女性陣が今の所全勝のようだな。

  • リーヴェだ。
    パートナーは銀雪。
    皆、よろしく。

    ストラックアウトで勝負しようと思っているよ。
    さて、どちらが勝つのやら。

    【ダイスA(10面):5】【ダイスB(10面):5】

  • [2]紫月 彩夢

    2015/07/09-00:08 

    紫月彩夢と、姉の咲姫。シエテさんはお久しぶり、ね。
    勝負事なんて楽しそうだものね、ゲームならなおさら。
    目一杯、遊ぶわよ。

    あたしがスポーツ得意だから、咲姫に不公平だし、ビリヤードかダーツ…
    …ダーツの方が判り易そうだし、ダーツに挑戦しようかしら。
    とりあえず、サイコロね。

    【ダイスA(10面):10】【ダイスB(10面):2】



  • 【ダイスA(10面):10】【ダイスB(10面):2】


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