夏だ! 暑い! 水玉合戦濡れ透けろ!(寿ゆかり マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「あぢぃ」
 A.R.O.A.本部の受付職員がデスクにだらっともたれながらつぶやいた。
「あぢぃね」
「暑い」
「あっちー」
 三人娘はあぁぁぁと唸りながら暑い暑い言っている。
「暑いっていうから暑いんだぁぁぁ!」
「うるせぇぇ暑いもんは暑いんだぁぁああ!」
 そういう病は気からみたいな理論は解せぬと一人の職員、イチコが立ち上がる。それに、おさげ髪の職員、フタバが乗っかるように右手を挙げた。
「根性論はよくないと思いまーす」
 ショートヘアの職員、ミナミが口を尖らせる。
「根性、だいじ」
「あっ」
 イチコがぴょこんと立ち上がる。
「いい事思いついた」
 彼女がそういう時はだいたいロクでもねーことを思いついた時だ。
「何?」
「えっとね」
 イチコがカレンダーの裏紙に何やら油性ペンで案を書きだす。
「……良いじゃん」
 そこにつづられていた言葉とは……。

『夏だ! 暑い! 水玉合戦!!』

 説明しよう。水玉合戦とは、たった今イチコが思いついた遊びである。
 ルールは簡単。水風船を投げつけてぶつけ合うと言うだけの超シンプルな遊びである。
「勝敗はどうすんの?」
 フタバが首を傾げる。
「んなもんフィーリングだ。もう暑くて考える気も起きん」
 イチコの投げやりな発言にミナミは脱力する。
「……」
「ともかくさ、どういう構図が出来上がるかわかるかね、きみ達」
 イチコがだんっとテーブルを叩いた。
「美男子たちが水風船投げる。濡れ透ける。わぁっ、つめてぇ! ははは あははは とじゃれ合う美男子たち。それ、オレタチ、見ル、眼福、シアワセ、ウホホ」
 ロングヘアの美少女がいつの間にかゴリラと化している。暑さって怖い。
 フタバとミナミもにやりと口の端を釣り上げた。
「いいね、それ……いいね……」
「美男子に水風船ぶつけられるのも……いいね……」
 もう一度言おう。暑さって怖い。

 かくして、水玉合戦と銘打った濡れ透け涼みが始まるのであった……。

解説

目的:水玉合戦で涼もう!っていうか濡れ透けよう!(本音出てる)
参加費としてお一組300Jr消費致します。
ルール:あってないようなものです。
    一人に付き、腰に水風船を三つ所持。無くなったら、
    フィールド真ん中にあるビニールプールへ取りに行けます。
    その際あてられることも考慮してくださいね☆
フィールド:
バスケコート一面くらいの公園。初期位置はそれぞれコートの端っこに分散するイメージです。
精霊と神人、一緒にいても敢えて離れても構いません。ど真ん中(バスケで言うとジャンプボールするところ)にビニールプール設置、
中にたくさんの水風船を入れてありますので、持ち玉がなくなったらそこへ取りに行くといいでしょう。
試合時間:気が済むまで
勝者:濡れぐあいの少ない方。その他。
景品:勝者に高級アイスをふたつ(パートナーと分けるもよし)。
服装:濡れ透けやすい白のトップス限定(タンクトップでも、ワイシャツでもTシャツでも塗れ透けのわかりやすいものならOK)ボトムスは自由です。
デートコーデに無いものでも、服装をお書きください。明記されていない場合職員が勝手に着せますのでご注意を。職員も参加しますが、彼女らは何故か透けません。ずるいぞ。

*会議室で誰にあてに行くか宣言してもしなくてもOK。ただ、どうなるかはわかりません。アドリブ多め、絡み多めになる事をご了承ください。
*プランには戦い方のスタンスや、どんなふうに立ち回るかをお書きいただくと良いかも。パートナーを庇うもよし、ひたすらバーサーカーのように皆にぶつけまくるもよし。パートナーにあてたっていいんだぞ! 自分以外皆強敵と書いて友と読む。
*公序良俗に反さないようおねがいしますね。


ゲームマスターより

濡れ透け陣営より新たな刺客、寿参上!(ででどーん)
暑くておかしくなっちゃってるのは寿だと思います。
さあ、カオスな遊びを始めようぜ……!
よろしくお願いいたします!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  無気力Tシャツに海パンで全力で濡れに行くスタイル
濡れるのが怖くなければ遠慮なくぶつけに行けるもんね
覚悟しろ桐華さん!ずぶ濡れにしてくれる!
同じ場所からスタートして出会い頭に投擲
卑怯とか!聞こえない!

まー、濡れるの嫌がって避けまくるだろう桐華さんに無駄球使いまくるのも勿体無いし、
近くの子にもぽいぽい投げまくるよ
真ん中に近い位置で水風船は抜かりなく補充していこう

わぉ、桐華さんがやる気だなんてめーずらしー
なぁに、可愛い子達の濡れ透けに刺激でもされちゃった?
…僕、君がこの手の冗談に頷いてくるの初めて見た
なんだよ。君もしっかり男の子なんだから
拗ねてませんー
桐華さんなんか可愛い女の子の前で醜態晒しちゃえ!



アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  受付のお嬢さんは来ないの?
透けない服を着たら大丈夫じゃない?
と誘ってみるよ

ランスに誘われ、なしくずし、かな
けど負けるのもシャクだし
ハデに戦いマスカット(ヤルキ

●服
現場に来たら帽子やズボンや靴はペアだった
偶然だし(汗
あ、シャツはノーマルだよ

●戦法
はっちゃける
背後を取らせないように端を行く形
ランスへ近づいてポイ
咄嗟に傘を開いてガード
玉は傘ガードしつつササッと補給したい

動き難いし、もう上は脱ぐか(水絞る
ふー
海だと思えば平気だろ(気持ちいい

ランスに雪だるまの杖ピトッ
はは、驚いたか
…って冷たっ!
やったな(やり返す

★終わったら
アイスを食べる
濡れた髪を撫で付けてオールバックにして見せたり

「そうだな、行くか」



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  暑い時に何と楽しそうな企画!
そして高級アイスに釣られたぜ(単純。
白Tシャツに濃紺ハーフパンツで参加だ。

女子(←ここ大事)職員達もゲームに参加だと…!
(目がキラーン☆)
女の子達を最初は狙っちゃうぞー。
いくつか水玉ぶつけて濡れ透けないと判ったら早々にターゲットを全員に変更。
(うう、せっかくの山脈が雲に包まれたままだ)

スポーツ得意。
ドッジの要領で、ぽいぽいっと皆に投げる。
飛んできたのはギリギリで避け、水玉は随時補充。

ラキアが身をよじるたび髪が鞭のように動いて危ねぇ。
そのくせ水玉避けれてないし!
ラキア…結構ドジッ子だな。
面白いように当たるので気が付いたら多めに投げてた!
水もしたたるラキアもなかなか…!



レン・ユリカワ(魔魅也)
  ・服装お任せ
「好きなだけびしょ濡れになれるってなんだか新鮮ですね。楽しみです!」
準備運動しつつ無邪気な笑顔

えいやあとう!と子供らしく無邪気に投げ。
しかし魔魅也に護られているのを感じ
「…えぃっ」
魔魅也の背中に水風船を当て
「もー、魔魅也さん、こういう時ぐらいは僕を護るとか考えないでくださいっ」
頬ぷくー。
「裏切りじゃないです、今日はアイスを賭けたライバルですよ?」
楽しそうに魔魅也に追撃を。

・誰かれ構わず楽しそうに投げる&浴びる

濡れ透けた魔魅也が妖艶に見えて
(女の人がドキドキするのも…ちょっとわかるかも)
と己も赤面&少しドキドキ

終了後は
「楽しかったです!また遊んでください!」
勝敗関わらず、にっこにこ!


カイン・モーントズィッヒェル(イェルク・グリューン)
  (着用のシックなワイシャツで参戦)
童心に帰るのも悪くねぇし?
イェルが怒るまで、イェルしか狙わねぇ
自分が濡れるのは気にせず徹底的に
怒らせてぇのは……笑いたくもねぇのに笑ってっから
怒ってても、生きてる表情のがいい
キレたら、笑ってやる
「ざまぁ。澄ましたツラしてっからだよ。水も滴るいい男だな、オイ」
「エンジン暖まったみてぇだし? 楽しもうぜ」
後は、他の奴にも当てて楽しむ(この辺りはお任せ)
っと、楽しみ過ぎたか
(自身の濡れ透けシャツを見て)
着替えるしかねぇな、更衣室行くか
(女性の前で脱ぐ発想はない)
てめぇら(女性陣)も風邪引く前に着替えろよ
(着替えてる間見られていることは気づかない)

※勝たなくてOK



「お」
 現場について、アキ・セイジとヴェルトール・ランスは互いに顔を見合わせる。ファッションが被っているではないか。
「嬉しいシンクロだぜ! 俺達って周波数合ってるな♪」
 絡んでくるランスをセイジは照れながらあしらう。
「偶然だし」
「あ、でも俺のシャツもしかして透けやすい……?」
 どこからか受付嬢三人娘最年長、イチコが現れた!
「それがいいんですよ!」
「んだんだ!」
 おさげ髪のフタバはその横で首がもげるほど頷いている。
「受付のお嬢さんは来ないの? 透けない服を着たら大丈夫じゃない?」
 セイジの提案に、ミナミが大きく頷いた。
「もちろん参加しますよ!」
 三人娘は全員えんじ色のハーフパンツに黒のTシャツ。完全防備である。
「ところで、アキさんがその手に持っているのは傘かな?」
「はい」
 それが何か、と言いたげなセイジにイチコが親指で空を指す。
「ヘイ! 今日はこんなにゴキゲンなピーカンだぜ!? 傘なんてどうしたんだ!」
「ガードに……」
「没収」
 フタバが無慈悲に冷徹な声色でセイジから傘を取り上げる。
「えっ」
「決闘に盾を持ちこむ奴があるか? 答えはNOだ……真夏のガンマンに盾などいらないのさボウヤ……」
 完全に暑さで脳をやられているイチコが手で銃を作り、人差し指をふぅと吹く。
「自信がないんだろ?」
 ニヤニヤとセイジの顔を覗き込むランスに、乗っかるようにミナミが笑った。
「盾を用意するくらいだものね~」
「ランスに誘われ、なしくずしで来ただけだしっ……」
 俺は初めからそんな乗り気じゃないと言いたげだったセイジだが、むっと口を尖らせてランスの挑発に乗った。
「けど負けるのもシャクだし」
 ハデに戦いますかっと、そう言って腕まくりするセイジ。
「好きなだけびしょ濡れになれるってなんだか新鮮ですね。楽しみです!」
 レン・ユリカワは準備運動のストレッチをしながら、無邪気に笑った。白いTシャツと、濃紺のハーフパンツから覗く華奢な手足が眩しい。(イチコ談)傍らでは精霊の魔魅也がかっちりとした白シャツに黒のスラックスを着用し、ふわりと微笑む。
(楽しそうな坊っちゃんが見られるんはいい事だが……)
 ちらと視線を送った女性職員の目が輝いていることとイチコなんかは有りがたいものを拝むような顔をしていることに若干ヒいてしまう魔魅也。
(まあ、見られて恥ずかしいもんもないし、楽しませていただくさァ)
 シックなワイシャツに身を包み、不敵な笑みを浮かべたのはカイン・モーントズィッヒェル。
「童心に帰るのも悪くねぇし?」
 傍らの精霊、イェルク・グリューンは彼の普段着とかけ離れた白のシンプルなTシャツを着用し、小さくため息をついた。というのも、この企画にはカインに引きずられてきたのだ。が、他参加者たちがとてもノリノリなのを見ているとそれを無下にするのも良くなさそうだ。
(適当に楽しむふりをしよう……)
 今日はよろしくお願いいたします、と柔らかに微笑む彼はとても大人だった。
「高級アイスに釣られたぜ!」
 元気よく参上したのはセイリュー・グラシア。濃紺のハーフパンツに白Tシャツは、この長身の青年が着用することによりアイドル大運動会感を醸し出している。
「セイリューに引っ張られて来ちゃった」
 よろしくねーと右手を挙げるラキア・ジェイドバイン。彼もまた、濃緑のハーフパンツに白Tシャツ。長い髪は一本の三つ編みに。動きやすさ重視なのだが、なんとなく女子高生みたいで可愛らしい。完全にお楽しみ特番じゃないか! とミナミの鼻息が荒くなる。
「こんにちはー」
 海パンに、燦然と輝く無気力Tシャツを身にまとって現れたのは叶。無気力Tに反して彼はとてもやる気満々である。白Tシャツに普通のパンツスタイルで本当に無気力な感じでやってきたのは桐華。
「初めから海パン装備とはやりますな」
 フタバが感心したように頷く。
「濡れるのが怖くなければ遠慮なくぶつけに行けるもんね」
 にこっと屈託のない笑みを浮かべる叶。べしゃべしゃになることなど彼は恐れていない……!

「さて、メンバーも揃いましてございます」
 全員が初期位置に着いたのを確認し、イチコが首に下げたホイッスルを構えた。
「さぁ……始めるぜ、カオスバトルをな……!」
 ピィー! とホイッスルに息を吹き込む。戦闘開始の合図だ。
「覚悟しろ桐華さん! ずぶ濡れにしてくれる!」
 ホイッスルが鳴るや否や、叶が高らかに宣言し傍らにいた桐華目がけて腰の水風船をぶん投げた。べしゃり。
「!?」
 多分自分がアイスを食べたいがために叶は参加したのだと思い、避けるのをメインに行動しようとしていた桐華は一瞬驚く。
(叶のためにアイス獲得してやろうと思ったのに、当人が全力で濡らしに来るってどう言う事だろうな)
「卑怯とか! 聞こえない!」
 大きく振りかぶり、至近距離で二投目をかます叶。
「普通に遊びたいだけなんだろ。知ってる」
 ふ、と鼻で笑って桐華は素晴らしい回避能力とテンペストダンサー特有の動きで水風船を躱して見せる。
「いきなり来るって判ってて喰らってやる気もねぇぞ」
「も一回~!」
 当たれ~とばかりに叶は三つ目をぶん投げる。ひらり。それも躱された。
 叶はさっさと持ち球を補充するためビニールプールの方へ向かう。
「えいやあ!」
 可愛らしい声と共に叶に水風船を投げつけたのはレンだった。
 ぱしゃん、と叶の背中に当たって水風船がはじける。
「つめたっ! あはは、やったなぁ~!」
 叶はビニールプールから水風船を拾い上げ、レンに投げ返した。
 が、そこには水風船を取りに来た魔魅也の姿が。
「これは……涼しいですねェ」
 腕にかかった水がそのまま手へと滴る。フッと髪をかきあげると、三人娘から歓声が上がった。
「お返しでさァ」
 軽く投げた水風船が、叶の肩に当たる。
「ひゃっ! ふふ、面白いね、これは避けられる、かなっ?」
 叶も、負けずに魔魅也に反撃。
(やっぱり先輩ウィンクルム方は動きが機敏さね……)
 もう一度水を被って、魔魅也は文字通り水も滴る良い精霊になっている。
「水滴ってますなぁ!」
「いいですなぁ! 実にいい!」
 イチコとミナミが完全に変態さんである。

 そんな女子二人に、背後から水風船が襲い掛かった。
「んぎゃっ」
「背中がガラ空きだよ!」
 水風船を投げた男、セイリューがニコッと笑う。
「さ、爽やかなんじゃ~!」
 ミナミが歓喜の声を上げた。しかし、彼はただ爽やかなのではなかった。
 女子職員もゲームに参加すると聞いて目を輝かせていた、ちょっぴり下心アリの健全なオトコノコなのであった。
「えいっ」
 三人娘を狙ってセイリューは水風船を補給しつつポイポイ投げまくる。
「きゃ~つめた~い!」
 ちょっと女子っぽい声を出しているが、三人娘よ。無駄だぞ。もう中身オッサンなのはバレてるぞ。
 パシャン、と小気味いい音を立てて水風船が女子たちの肌を濡らす。
(よし、当たってるぞ~)
 セイリューはご機嫌で振り返ったイチコをみつめた……が。
(全然透けてない!)
 黒Tシャツは見た目より厚手だったのか、はたまたTシャツの下にババシャツを着込んでいたのか定かではないが、イチコの大山脈は霧に覆われたまま。女子のアレコレが透けちゃうワーオ☆ を期待していたセイリューはがっくりと肩を落とす。
(う、うわぁ……セイリュー、あからさまに残念そうな顔……)
 ラキアは飛んでくる水風船を避けながら、苦笑した。
 ふと背後を見ると、全速力でセイジにかけよるランス。
「くらえセイジ!」
 先手必勝と言わんばかりに水風船を力いっぱい投げつける。
「うわ!」
 背後を取られないように端を陣取っていたセイジだが、真正面から来られるとは思っていなかった。眼前で超爽やかな笑顔を浮かべるパートナーを不敵な笑みで見つめる。
「やられっぱなしな訳ないだろ!」
 ぽい、と水風船を投げるとべしゃりとランスの胸が濡れた。
「ひー冷たっ! 小癪なぁ~!」
 二投目、がむしゃらに投げた球を躱される。セイジはニヤと笑って挑発した。
「何度も同じ手にかかるか!」
「くっ……これで、どうだぁ!」
 ランスは投げるポーズをとる。それに合わせ、セイジは避けようと右にずれた。
 瞬間、ランスもずれてピンポイントでセイジの胸を狙い球をぶつける。
「うわぁっ」
 フェイントとはやるじゃないか。セイジが笑う。ランスはもう一撃と思って腰に手をやり、残りがないことに気付いた。
「ほ、補給っ」
「隙ありィ!」
 補給へ向かうランスの背中目がけ、セイジの一撃が炸裂。

 そんな中、無言で精霊だけ狙って水風船をぶん投げる男が一人。
(何故私ばかり狙うんだ……)
「とうっ!」
 レンに背後から水風船をぶつけられてもお構いなしでひたすらカインはイェルク目がけて水風船を投げ続ける。持ち球がなくなってもささっと補給して、ひたすら投げる。良いだけ衣服と肌を濡らされたイェルクの眉間にだんだんと深いしわが刻まれていった。
 イェルクはレンや魔魅也と楽しく戦っていたのだが、何故味方陣営と思っていた神人が自分ばかり狙うのか。だんだんとイライラが募っていく。着用していた白いTシャツが濡れて重くなっていく。肌に張り付く感覚に、ついにイェルクは声を上げた。
「いい加減にしてください! 楽しむだけならあなただけ楽しめばいいでしょう!」
 瞬間、カインの口の端がニヤリと吊り上った。
「ざまぁ。澄ましたツラしてっからだよ。水も滴るいい男だな、オイ」
 ハハッと声をだして笑う彼に、イェルクは一瞬あっけにとられてしまった。
 何故、彼はこんなことを?
 カインはやっと見られた精霊の生き生きとした表情に満足そうな顔をしている。……彼は、イェルクが笑いたくもないのに笑っているのが気に喰わなかった。怒ってても、生きてる表情のがいい。生きている表情を引き出すには、これが有効だと踏んだのだろう。
 何故怒らせたかったのかまではイェルクは気付かない。しかし、自分を怒らせたかったということは、怒られながら嬉しそうなカインの顔を見てよくわかった。イェルクがフッと短く笑うと、カインが挑戦的なセリフを吐く。
「エンジン暖まったみてぇだし? 楽しもうぜ」
「私も一方的なのは趣味ではありませんね」
 にっこりとほほ笑み、イェルクは水風船を思い切りカインに投げつけた。

「えいやっ!」
 レンが振りかぶって、水風船を補給に来たセイリューにあてる。
「うおっ、冷たっ!」
 セイリューは持ち前の運動神経で躱す、と思ったがギリギリ当たってしまって背中にびっしゃりと水を感じる。
「よ~し、反撃っ!」
 振りかぶってレンに水風船を。キャッキャしながら水風船が飛んでくるのを待つレンを庇ったのは、魔魅也だった。
(あれ、また魔魅也さん)
 自分の目の前を横切るふりをしながら、水風船を引き受けてくれている。そう感じたレンは。
「……えぃっ」
 手に持った水風船を魔魅也の広い背中にぶつけてやった。
 魔魅也は意外なところから飛んできた水風船に驚いてレンを振り返る。
「もー、魔魅也さん、こういう時ぐらいは僕を護るとか考えないでくださいっ」
 ぷくうっと頬を膨らませ、レンは抗議した。
「ははっ、思わぬところから攻撃が。まさか坊っちゃんに裏切られるたぁ」
 にっこりと笑う魔魅也に、レンは反論する。
「裏切りじゃないです、今日はアイスを賭けたライバルですよ?」
 ふわっと微笑んで、追撃。今度は、魔魅也の胸元に水風船があたり、ぱしゃりと跳ねた水がその顔にかかった。
「それじゃあ遠慮なく行かせてもらいますぜ、坊っちゃん」
 きゅっと唇を三日月形に釣り上げて、魔魅也が水風船を投げる。レンの肩にヒットした水風船が、きらりと水しぶきを上げて弾けた。
「ふふっ」
 レンが嬉しそうに笑う。
 流れ弾が、ラキアに当たった。
「わわっ、冷たいっ……負けないからねっ!」
 俺だって! と腕まくりをして、ラキアが水風船を勢いよく投げる。パシャ―ン、と良い音を立てて魔魅也の胸が更に濡れていった。
「戦闘の勉強にもなりまさァね!」
 ひゅん、と風を切って魔魅也の投げた水風船がラキアに当たる。
「うわわ、また当たっちゃった! 次こそは~!」
 ラキアが身をよじり、更に水風船を投げる。が、躱される。
「ちょ、危ねぇ!」
 傍らのセイリューにラキアの三つ編みが鞭のようにしなって襲い掛かる。セイリューは爆笑しながらラキアの動きを見ていた。
「そのくせ水玉避けれてないし!」
 セイリューからも水風船を投げつけられ、ラキアはあたふたとしてしまう。しかも、ビニールプールから無差別にぽいぽい水風船を投げまくっている男がいる。それは。
「はーっははは、圧倒的じゃないか」
 ランスであった。中腰で水風船を掴んでは投げ。弾幕のように飛んでくる水風船に、ラキアは何故か向かって行っている。
(……なにやってんだ?)
 ラキアもなんとなく自分がおかしな行動をしているのに気付いた。
(こ、これライフビショップの癖だー!)
 そう、いつもカウンター攻撃を意識しているラキアは、一度攻撃にあたりに行くのが常である。今はシャイニングアローなんて展開しているわけもないので、飛んできた水玉をぶつかる前に潰すことが出来るわけもなく、びしゃびしゃになりながらそれを全身で受け止めているというわけだ。
(いつもの癖って怖い!)
 ラキアはなんだか笑えて来てしまって、一人で笑いながら水風船に突っ込んで行っていた。傍から見るとなかなかにアヤシイ行動だろう。

「よっと……」
 桐華は持ち球を使わないのも違う気がしたので、叶の攻撃を避けながらあまり濡れていなかったカインに一撃、セイリューに一撃、ランスに一撃食らわせてそれからふらふらと水風船を喰らわないように避けに専念していた。ビニールプールに取りに行って水風船に当たるのは得策ではない。
「わぉ、桐華さんがやる気だなんてめーずらしー。なぁに、可愛い子達の濡れ透けに刺激でもされちゃった?」
 叶が煽るようにニヤニヤと笑いながら桐華に呼びかける。
 無言で、桐華がこくり、と頷く。
「え」
(つーか不可抗力とは言え全裸まで見たことあるし今更野郎同士濡れて透けるくらい面白くもなんともねぇだろ……とか思ってた時間が俺にもありました)
 桐華氏、パートナーの濡れ透けにちょっぴりご満悦の御様子。
(欲には忠実だよな、人ってのは)
 叶の無気力Tシャツはぴったりと肌に張り付き、整った程よい肉付きの手足は水しぶきに濡れてキラキラ輝いている。
「多少いい光景が拝めるなら、濡れるのもやぶさかじゃねぇわ」
 と、いいながらも桐華はあまり濡れていない。
 そんな桐華のぽつりとした呟きに叶は目を丸くする。
「……僕、君がこの手の冗談に頷いてくるの初めて見た」
(なんだよ。君もしっかり男の子なんだから)
 ぷい、とそっぽを向き、叶はビニールプールから水風船を拾う。
「……何で拗ねてんの」
 ゆるりと近寄り、尋ねる。
「拗ねてませんー」
 絶対拗ねてる。そう思って桐華が顔を覗き込もうとしたその時。
「桐華さんなんか可愛い女の子の前で醜態晒しちゃえ!」
 桐華の顔面に水風船直撃。結構痛いぞ。
「ぶ!」
「もっとー! もっと濡れ透けてくれぇぇえー!」
 ゾンビのように濡れ透けを求めるイチコが投げる水風船をサッと躱し、顔に着いた水を払いながら桐華は小さく呟いた。
「可愛い女子……? あぁ、女子居たんだっけ」
「へ?」
 女子がいるのを認識してなかった桐華を、叶はちょっと失礼な奴めと思ったり……。

「うわ~! 冷たいですー!」
 飛んできた水風船にキャッキャッとレンが喜ぶ。女子職員が
「私らの濡れ透けなんぞいらぬ! もっと男子にあててくれぇぇ!」
 と叫んでいる。
 ランスの弾幕水風船が続く。いくらなんでもそりゃずるいだろ。セイジはそんなランスの背後に寄り、手にしていた雪だるまステッキをぴとりと背中に当ててやった。
「ひぇあ!?」
「ははっ、驚いたか!」
「こんのぉ~」
 ランスも雪だるまステッキをセイジにぴとり。
「って冷たっ……やったな~!」
 こいつぅ~! この~! とかなんとか言いながら、彼らは雪だるまステッキ合戦に発展している。カオス。
「チッ、弾幕が止んじまったな」
「私が出ようぞ」
 悔しがるフタバ。ミナミがフルスイングで水風船を投げつける。
「うおっ」
 べしゃん! 当たったのはカインの背中だった。
「やるじゃねぇか」
 笑いながらカインも投げる。ミナミが躱す。躱した先にいたのはラキアだった。
「ひゃぁ!」
「ラキア……結構ドジッ子だな」
 いつもの癖であたりに行っているのもあって、すっかりラキアはびしょ濡れである。
(水も滴るなんとやら、かな。うん、なかなか!)
 セイリューが満足そうに頷いていると、叶の水風船が飛んできた。
「隙あり! だよ~!」
「ははっ、やったな~!」
 少年と言うにはちょっと大人すぎる男子たちがきゃいきゃいいながら戯れるさまは、三人娘にとってはオアシスだった。
 イチコが無差別に投げつけた水風船を受け、鬱陶しそうに髪をかきあげたのは魔魅也。濡れ羽色の髪から滴る水滴が肩に落ち、すっかり濡れそぼった白シャツは彼の引き締まった細身の体を更に強調させていた。
「あ、ありがたや!」
 イチコが拝み始める。
 傍らで、レンがひそかに頬を染めた。
(女の人がドキドキするのも……ちょっとわかるかも)
 外見、仕草が妙に妖艶なものだから、何故か胸が高鳴ってしまう。

 そんなこんなで水風船の在庫が切れて勝負は終了した。
 全員が肩で息をしている。エキサイトしすぎである。
「終了!」
 イチコのホイッスルの音で一同整列。
「ありがとうございました!」
 試合終了の挨拶なのだが、三人娘の声だけなぜかごちそうさまでしたに聞こえる。
 さて、優勝者の発表だ。
「え~と、今回は~あんまり濡れてないのが桐華さん!」
 わぁっと拍手が響く。
「どうも」
 あっさりとした会釈に叶が小さく舌打ちをしたようなしてないような。
「あと~、めっちゃ濡れ透けてたのが、魔魅也さん!」
「おや、私ですかィ」
 坊ちゃんを庇ううちに意外と濡れてたんだなァと笑う魔魅也。
「あとは自ら水風船に特攻してたラキアさん」
「えっ俺?」
「やったじゃーん!」
 セイリューが諸手を上げて喜ぶ。
「お三方は景品のアイスを後ほどお持ちします!」
 三人娘がにっこりとほほ笑む。
「楽しかったです! また遊んでください!」
 自らも濡れ透けながらも、レンは嬉しそうに笑う。
「坊ちゃん、アイス一つ食べますかィ?」
「いいの?」
 カインは自らの服を見て、小さくため息をついて笑った。
「っと、楽しみ過ぎたか」
 肌にぴったりとワイシャツがくっついて、落ち着かない。
「着替えるしかねぇな、更衣室行くか」
 じゃあな、と手を振り、カインはくるりと背を向ける。女性の前で脱ぎ捨てるという頭は無いらしい。ひらり、と手を上げたまま、背中越しにカインは職員へ伝えた。
「てめぇらも風邪引く前に着替えろよ」
「は、はい~!」
 イェルクも自分の濡れ透け具合にようやく気付いて三人娘に頭を下げた。
「見苦しいものをお見せしました」
「見苦しい!? とんでもない! ごちそうさまです!」
 ミナミが最敬礼でイェルクを見送る。
 ……更衣室にてイェルクが引き締まったカインの身体に妙にドキドキしてしまったのは秘密である。
「はー、面白かったな」
 ランスが前髪を後ろに撫でつけながらセイジを振り返る。全く同じ動作をしている彼を見て、妙なところで被るな、と一笑。
「な、海……行かね?」
 すっかり日も傾いてきた。夏休みの計画でも、立てようか。
「ほら、叶、やる」
 桐華は貰った景品のアイスクリームのカップをずい、と叶の鼻先に突きつける。
「いいの?」
「ん」
「ありがとー! いただきます!」
 まあ、そのために頑張ったのだけれど。桐華は嬉しそうな横顔を小さく笑って見つめる。
 ラキアが手にしたアイスクリームをじぃっと見つめるセイリュー。
「はは……一つあげるよ」
「マジ! ありがと~!!」
 そうそう、アイスに釣られたんだったよね、と自然、笑顔になる。
 
 素晴らしき濡れ透け男子達はそうして帰路に付く。
 皆さん、お風邪を召されませぬよう……!



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月04日
出発日 07月10日 00:00
予定納品日 07月20日

参加者

会議室

  • [10]レン・ユリカワ

    2015/07/09-23:40 

    こんばんは。俺はレン坊っちゃんの精霊、魔魅也と申しまさァ。
    よろしく頼んまさァ。

    プランの提出は完了だ。
    悔いの残らない戦いをしましょうぜ。
    それじゃ、会場で。

  • セイリュー・グラシアと精霊ラキアだ。
    高級アイスに釣られてやってきたのは言うまでもなく。

    皆に投げまくる予定。
    遠慮なくドーンと投げてもらってOK!
    皆で楽しく遊ぼうぜ。ヨロシク。

  • [8]アキ・セイジ

    2015/07/09-00:07 

    アキ・セイジだ。相棒はウイズのランス。よろしくな。

    俺も遠慮せず攻撃して良いよ。
    お返しに攻撃するけどそこは勘弁な(笑

  • [7]叶

    2015/07/08-23:31 

    桐華さんへの攻撃は大歓迎です!

    桐華:待てこら

    僕の分まで桐華さんがめっちゃ濡れてくれるって信じてる!
    ていうか桐華さん回避率高いから僕とタイマン張っても絶対負ける自信があるので濡らしてくれる人絶賛募集!

    僕は僕で無差別に投げまくります(きりっ)
    どーせならみんなでわっちゃわっちゃしたいしねー。皆纏めて濡れ透けちゃえー

  • >レン、魔魅也
    イェルになら集中攻撃していいぞ。
    ちっと、あいつは水でぶっかけときてぇし、歓迎。

  • [4]レン・ユリカワ

    2015/07/08-09:40 

    はじめまして。僕はレン・ユリカワと申します。
    よろしくお願いいたします。
    暑い中で涼しく楽しく過ごせそうなので参加しました。
    どうぞ遠慮なくぶつけてくださいね。
    僕もいっぱい投げますので(楽しそうに)

    魔魅也
    「俺ァ魔魅也と申しまさァ。よろしく頼みます。
    使用人の立場上、あまり坊っちゃんにぶつけるワケにも行かないが…さて、困ったもんさァね」

    えー、魔魅也さん遠慮なんてしないでくださいよぉ(頬ぷくー)

    ※積極的に、皆様に投げさせていただきたいです
    ご迷惑でしたらお伝えください
    そして遠慮なくぶつけてください!

  • カインだ。
    パートナーはイェルク・グリューン。

    イェルへ水風船を積極的にぶつけに行く。
    濡れ透けの意味がよく分からねぇが、あいつ水に濡れるとか無縁そうだしな。

    そういう訳で、適当によろしく。

  • [2]叶

    2015/07/07-00:26 

    何を頑張るのかはさっぱりだけどとりあえず全裸もといTシャツ待機しているつもりの叶と愉快な桐華さんでっす!
    今こそこの無気力Tシャツを着る時だと思って!

    びっちゃびちゃになっても怒られないっていいよね。
    目一杯楽しみたいと思いまーす。

  • [1]叶

    2015/07/07-00:22 


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