そらのいろ(雨鬥 露芽 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

とある小さな町に、高台があった。

その高台はとてもこじんまりとしており、草木に囲まれた中にベンチがたった一つ置いてあるだけ。
その上階段が多く、辿り着くのが大変なために、訪れる人も大変少ない。

しかし、木々の開けた場所から空や街並みが一望でき、とても綺麗な夕陽が見える。
穴場スポットのような場所だった。

ただ、そこから見える夕陽には一つだけ不思議な噂があった。

――夕焼けの見え方によって、この先のことがわかる――と。

自分にとって心地の良い景色であれば吉。
自分にとって心地の悪い景色であれば凶。
同じ景色のはずなのに、一緒にいる人には全く違う様子が見えるという。

それを聞いたウィンクルムが運だめしにと夕焼けを見に来たことがある。
その時、神人には清々しい程晴れ渡った夕焼けが見えたが、精霊には血のように赤く染まった夕焼けが見えた。
そして、その景色を見た精霊は、次の任務で大けがをしたなんて話もあるらしい。

逆に、二人で良い景色を見たウィンクルムが結婚をしたという話もある。

ただの偶然かもしれないが、そんなことが続いたため、噂は少しずつ広まっていた。


それを知ってか知らずか、貴方達は高台に訪れた。
腰ほどの高さの手すりに近づけば、山の端に沈む夕陽と染まっていく空が見える。

あなたには、どんな景色が見えましたか?

解説

■目的
高台から夕陽を見てお喋りしよう。


■PC情報
高台に夕陽を見に来ています。
雨などは降っていないため、ちゃんと夕陽が見えます。
高台の情報や、夕陽での吉凶については、知っていても知らなくても構いません。
基本的に一組ごとになりますが、お互い同意の上であれば、グループ参加も可能です。

また、高台にいる間の話のみとなります。


■高台
長い階段を上って、やっと辿り着いた場所です。
草木に囲まれた小さな高台で、真ん中にベンチがあります。
落ちないように腰の高さほどの手すりがあります。
他に人はいません。


■夕焼け
今回、夕焼けの見え方はサイコロで決めていただきたいと思います。
6面ダイスを二つ振っていただき

・【ゾロ目】なら自由に選択可能
・二つの数字を足した数が【偶数】なら良く見える
 夕焼けの吉凶を知らなくても、とても清々しい気持ちになります。
・二つの数字を足した数が【奇数】なら悪く見える
 夕焼けの吉凶を知らなくても、とても不穏な気持ちになります。

として、プランに記入いただきたいと思います。

※精霊は精霊、神人は神人の結果になりますので
二回振っていただくことになります。


■プラン・行動
・☆マーク
今回、一人称視点で書かせていただきます。
そのためアドリブ満載になる可能性がありますので、ご注意ください。
主軸になる方のプランの頭に、☆マークをお願いします。
☆が無い場合、こちらで決めさせていただきます。
また、アドリブがどうしても嫌な場合は、最初か最後にxを入れてください。

・どう見えたか、感じたかの描写
ダイスによって決まった結果から
それぞれが見た夕焼けについての描写や感想、感情をお願いします。
ダイスの目の記入は不要です。


また、主軸にならない方のプランも
台詞や行動の他に、感情を織り交ぜて書いて下さると助かります。

最後に、高台までの交通費として300jr頂ます。

ゲームマスターより

雨上がりの夕焼けとかすごく綺麗ですよね。
雨鬥露芽です。色々と試みもありますが、頑張ります。

夕焼けの結果が他のエピソードに反映されるなんてことはないため、気楽に書いてください。

万が一悪く見えても、楽しい時間が過ごせたら
見える景色って良いものに変わるんじゃないかな。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

篠宮潤(ヒュリアス)

 
※心の声は口調途切れず

「わ、あ!本当に、大きな夕陽が、綺麗、に…綺麗…、…あ、れ?」
吉凶の噂知って
美しい景色見れたら、精霊にも吉凶の話をするつもりだった
これからも宜しくネ、的に


「?!み、皆、綺麗に…見えて、るの!?ヒューリ、もっ?」
仲間の反応に少し場所移動してみたり角度変えたり
うう…どうやっても、今にも何か起きそうな、怖い色…に見える…っ
しょぼーーーん
「う…実は…」
かくかくしかじか吉凶説明

「え…?えっと…あ、ほらっ!皆みたい、に、笑顔になったり…言葉が出なくなった、り?」
僕と?…うん、それ、嬉しいかも(照笑
精霊の顔に映る橙色チラッ
…こっちの色、は怖く無いかも
怖そうな夕陽も気持ち次第なのかな



月野 輝(アルベルト)
  グループ参加同意
友人達と一緒と言うのが珍しくて楽しく、心の中はウキウキ
ただ、人目がある為、それをあまり表に出しすぎないように無意識にストッパーをかけている

(子供みたいにはしゃいだらみっともないかなって…)

■夕焼け
とても綺麗に見えて思わず目を輝かせる
皆はどうだったのか少し気にしつつ、幼い頃の思い出話

「私、小さい頃夕焼け大嫌いだったのよね
だってその時間って、みんなお母さんがお迎えに来てくれるんだもの」
「それに大好きな人とも一旦さよならしなくちゃだったし」

脳裏に浮かぶのは、夕焼けの中、剣の稽古が終わって家に帰る少年アルの姿

「今はこうやってずっと一緒に同じ景色を見てられるから
夕焼けも悪くないかなって」



紫月 彩夢(紫月 咲姫)
  長い階段の先にこんなきれいな景色があるなんて…頑張って見る物ね
ねぇ、咲姫。ここの夕陽、見え方が違う事があるんだって
美的感覚とか天候とかに左右されるのじゃなくって
心地よく見えるか、気持ち悪く見えるかっていう意味よ
咲姫は、どっち?

あたしは心地いいよ
夕陽が街を染めるこの色が、凄く綺麗だなって思う
このまま段々沈んでく間に、この色も少しずつ変わって見えるけど、どの色も、繊細で力強くて、好き
咲姫も同じ風に見えてるなら、それって結構、嬉しいよ

高台で一緒になった人の様子もちらっと見てみる
何だか不安そうな顔してたら、声掛けたいな
大丈夫、明日はいいことあるよ
良い顔なら、そのままそっとお見送り
星が出るまで、居たいな


アンダンテ(サフィール)
  グループ参加

人によって見え方が違うだなんて面白いわね
みんなは一体どんな景色を見るのかしら
周囲見回しつつうきうき

夕焼けは胸を打つような美しさ
清々しくていつまでも見ていたくなる
また明日もいい一日になりそうだわ

サフィールさんにはどう見えてる?
あら?サフィールさーん?(顔の前で手をひらひら
大丈夫?

何となく結果を察し、頑張って背伸びして頭撫でる
大丈夫、占いも運試しも結局は指針でしかないのよ
不安な気持ちにはなるかもしれないけど、どんな結果を得るかは自分次第
大事なのはこれを元に何を考えどう行動するかよ
何も怖がる事はないわ

占い師の私が言うのだもの
信じてみない?

…ねえ、私今すっごくいい事いったんじゃないかしら!


それは、ある日のウィンクルムの休日。

篠宮潤、ヒュリアス、月野輝、アルベルト
アンダンテ、サフィール、紫月彩夢、紫月咲姫の8人は
揃って高台の夕焼けを見にやってきた。
長い長い階段を超えて、拓けた空間に辿り着く。

周りには緑色の木々。
そして射し込む、オレンジの光――


●いつか君と一緒に(篠宮潤)
この高台から見える夕陽で吉凶がわかると聞いて、わくわくしてやってきた。
ヒューリは夕陽に興味はないみたいで、アルベルトさんと喋ってるけど
それでも、もし美しい景色が見れたらヒューリにも占いの事、教えてあげようと思って。

それに、とても綺麗に見えるとも聞いていたから。

「わ、あ!」

思わず声が出た。
木の間からも夕陽が零れてて、高台が橙色に染まってる。
手すりに手をかけて一面の夕焼けを見れば、そこには大きな夕陽が輝いてる。

「本当に、大きな夕陽が、綺麗、に――」

ヒューリに伝えようと、その感動を口に出した。
でもそれは想像していた景色と、違くて。
言葉に、詰まった。

「綺麗……」

綺麗に見えると、信じてた、のに。

「……あ、れ?」

だけど、どう見たって僕の考えてた『綺麗』じゃない。
何だかすごく怖くなる。
深く深く染まる街が、そのまま沈んでいきそうな。
まるで今にも何かが起きそうな、そんな気持ちになる景色。

目の前に広がる光景に呆然として、周りの反応に慌てる。

「み、皆、綺麗に……見えて、るの!?」

僕の声に、近くにいた輝さんがきらきらと輝かせた目を僕に向ける。

「えぇ、とても綺麗よね」

僕にも同じく綺麗に見えてるのだろうと、とても素敵な笑顔を見せてくれる。
輝さん、夕陽の吉凶知らないんだと思う。
だから、怖いって、言いづらくて。

「……なる程」

隣から、ヒューリの納得したような声が聞こえた。
さっきは「改めて見る物かね」なんて言ってたヒューリが納得してる。

納得してるんだ。夕陽を見て。
もしかして――

「ヒューリ、もっ?」

様子を伺うと、僕の反応にヒューリが首を傾げる。

「これが見たかったのではないのかね?」

ヒューリにも、美しい景色が見えてるみたいだった。
だって僕と同じ景色が見えてたら、こんな納得した反応できないと思うし。
……もしかしたら、見た場所が悪いのかもしれない。
ヒューリとの身長差は20cm位あるし、周りのみんなも、僕より背が高いし。

そう考えて、場所を移動してみたり、角度を変えてみたりする。
みんなが楽しそうに色々話してる中、一人で行ったり来たり背伸びしたりしゃがんだりを繰り返す。

変わらない……。

うう……どうやっても、今にも何か起きそうな、怖い色……に見える……っ。
これってつまりどういうことなんだろう。
何か、嫌なことが起きるってことなのかな。

その結果にショックが隠せず、段々と不安が溢れてきて、ずーんと手すりにうなだれる。
そんな僕を見て、ぽんと肩を叩いてくれる人がいた。

「彩夢、さん……」

振りかえると、そこにいたのは彩夢さんと咲姫さん。

「大丈夫。明日はいいことあるよ」

その優しさに、思わずじーんと感動。
彩夢さんも、夕陽の話、知ってたんだ。

「気持ちに引き寄せられて悪いこともやってきちゃうし。
 だから笑顔でいましょう。ね?」

咲姫さんがそう言葉をくれる。

「占いで全てが決まるわけじゃないもの。
 ほら、こうしてみんなもついてるし!」

近くで会話を聞いていたアンダンテさんも、笑顔をくれる。
みんな……。

「潤さん、そんなに落ち込まないで」

ぱたぱたと走ってきた輝さんが、そう声をかけてくれた。

「悪いことだけが起きるとは限りませんよ」
「そうよ。必ずいいことも待ってるはずだわ」

輝さんがにこりと笑って、アルベルトさんと一緒に僕を励まそうとしてくれてる……。
輝さん、占いの事知って、わざわざ来てくれたんだ。

「みんな、ありがとう、だ」

何だか涙が込み上げてきそうで、思わず顔を上げた視線の先。
そこにあったのは、ヒューリの怪訝な顔。

「う……実は……」

僕はみんなと離れて、ヒューリに夕陽の吉凶の話を伝えた。
本当は、美しい景色が見れたら、これからもよろしくって、お互いの話をするつもりだったんだ。
なのに、こんな怖い景色を見るなんて、僕はヒューリに何を言えば……。

「……感動、とはどういうモノなのかね?」
「え……?」

僕の思考を遮ったのは、ヒューリの淡々とした言葉だった。
ヒューリは、本気で分かってない様子で、僕に真っ直ぐ視線を向ける。

どういうと言われても、どう伝えたらいいのか……。

「えっと……あ、ほらっ!」

ふと周りの反応を思い出し、それを例えに説明する。

「皆みたい、に、笑顔になったり……言葉が出なくなった、り?」

うまく伝わったかな……。
ヒューリの表情を伺うと「なら……」とヒューリの口が開いた。

「なら、今度ウルが感動した時にその物を教えてくれ」

僕の、感動した物……?

「俺も初めて実感するなら同じ物で感じてみたいのでな」
「僕と?」

ヒューリが小さく微笑む。
頭の中には、先程の言葉が響いてた。

ヒューリが、一番最初に感動するものが
僕と、同じ物……。

「……うん、それ、嬉しいかも」

何だかそれがくすぐったくて、少しだけ照れくさい。
緩む頬を隠しきれないままヒューリをチラリと見れば
ヒューリは目を細めて夕陽を見つめてる。
その顔に映る橙色。

あれ……。
こっちの色、は怖く無いかも。
怖そうな夕陽も気持ち次第なのかな。

それとも、と、ヒューリの隣に並んで見る夕陽。

時間の経過のせい、かな。
さっきよりも、怖くなくないや。


●同じものを見つめて(アルベルト)
高台には、夕陽が差し込んでいた。
長い階段を上ってきたせいか「改めて見る物かね」と友人のヒュリアスが疑問を述べる。

「女性は綺麗な物が好きですからね」

そう言葉を返した。
ヒュリアスは何か考える表情を見せていたが
私が気になったのは自分の隣にいた輝の表情。

「もう少しはしゃいでも良いんじゃないか」

輝は歳の割に落ち着きすぎている。
恐らく仲間の目を気にしているのだろうが
せっかく夕陽を見に来たのだから、少しくらいはしゃいでも構わないだろうに。


先に手すりへと近寄った輝の隣に並ぶ。
目の前に広がった夕焼けはとても美しく、思わず息を呑んだ。
鮮やかな色の広がりは、なんとも清々しい気持ちになる。

「これは、評判になるのが判るな」

そう口を衝いた。
それほどの美しさ。
この高台の夕陽は吉凶が占えると聞いていた。
ならば、これは吉の景色なのだろう。

そして輝の結果が気になり視線を向けた。

どうやら、輝も綺麗に見えているようだ。
目を輝かせて、隣にいた篠宮さんに「とても綺麗よね」と話している。
これなら、安心だな。

「私、小さい頃夕焼け大嫌いだったのよね。
 だってその時間って、みんなお母さんがお迎えに来てくれるんだもの」

ふと、輝がそう零した。

「それに大好きな人とも一旦さよならしなくちゃだったし」

夕陽に視線を向けながら、遠くて近い昔を思い出しているかの表情で。

そういえばと思い出されるのは
帰る時間になると自分の稽古着の裾を放さず泣きそうな表情を見せていた、幼い輝の顔。

「あの頃みたいに泣かないようにな」

本当は自分もかなり後ろ髪引かれる思いで帰宅していたのだが
それは言わずにしておこうと、からかうような言葉。

すると、輝が視線をこちらに向けた。

「今はこうやってずっと一緒に同じ景色を見てられるから
 夕焼けも悪くないかなって」

にこりと笑う。
泣いていたあの頃とは違う、笑顔の輝。

「そういえばこの高台の夕陽は、これからのことが占えるらしい」

人によって見え方が変わり、良く思えたのなら良い未来が待っているのだと伝える。
すると輝がハッとした表情をして、いつの間にか移動していた篠宮さんの元へ向かった。
篠宮さんは沈んだ様子で、しゃがんでいる。
周囲には紫月さん二人とアンダンテさん。
どうやら篠宮さんは良くない景色を見てしまったようだ。

「潤さん、そんなに落ち込まないで」

励まそうとする輝の隣で、私も声をかける。

「悪いことだけが起きるとは限りませんよ」
「そうよ。必ずいいことも待ってるはずだわ」

一生懸命な輝の言葉に、篠宮さんがお礼を言いながら少しだけ目を潤ませる。
篠宮さんの傍らでは、ヒュリアスが不思議そうな表情をしていた。
どうやら篠宮さんに何が起きているかわかっていないようだ。
とはいえ、これは私が説明すべきではないな、と
元気な笑顔を取り戻した篠宮さんから離れて二人でベンチに座った。

高台を染め続けるのは、未だ落ち切らない夕陽の光。
その美しさを目に焼き付けて、笑みを浮かべる。

「二人共良い物を見たようだし、帰ったらお祝いでもしようか」

私の言葉に輝も頷き、大人びた笑顔を私に向けた。


●変わらないあなたと(サフィール)
「人によって見え方が違うだなんて面白いわね」

皆の結果が気になるのか、アンダンテがきょろきょろと周りを見回す。

「みんなは一体どんな景色を見るのかしら」
「そうですね。アンダンテはどんな景色が見えますか?」

楽しそうに笑っていたアンダンテが、夕陽に目を向けた途端パアと表情を明るくする。
どうやら、良い景色が見えたようですね。
感嘆の吐息すら聞こえそうなその反応を確認し、俺も夕陽へ視線を傾けた。

俺は、どんな景色が見えるでしょうか……。

少々期待のようなものを感じながら見つめた空。
そこに広がるのは、街を染め上げていく赤い夕陽。
しかしそれはただの赤などではなく……

何でしょう、この、夕陽に思えないような色。
まるで……

血――

そう思った瞬間、恐怖が全身を駆けた。
一面に広がるその夕陽は、不穏な空気を纏いながら街を覆い尽くしていく。
頭に大きく響く単語は、恐怖、不安、警告。

これは夕陽ではなく、本当に血の色で
近い将来このような血の海に遭遇するのでは、と
胸の中を侵食していく感情。

ありえません。
そんなこと、ありえるわけが……。

そう否定しながらも、どんどんと沸いてくるあまりの不穏さに
この景色が全ての世界のように感じ、恐怖から防衛するために思わず全身に力が入った。

瞬間、その世界を壊すが如く、ふっと何かが横切った。

「サフィールさーん?」

見れば、アンダンテが俺の顔の前でその手を振っている。
もしかして俺は、声も届かぬ程夕陽を見ていたのでしょうか。

「大丈夫?」
「いえ、夕焼けがあまりにも赤くて……」

さすがに血の色に見えたとは言えなかった。

それにしても、占いなんかの抽象的なものはあまり信じていないつもりでしたが
こんなにも影響されてしまうとは……

そんな自分に驚きを隠せずにいると、何かが俺の頭に触れた。
何やらアンダンテが、背伸びをしながら俺の頭を撫でている。

「大丈夫、占いも運試しも結局は指針でしかないのよ」

どうやら、気付かれているようですね。
俺は否定をすることは諦め
その言葉と行動に一瞬戸惑いながらも、耳を傾けることにした。

「不安な気持ちにはなるかもしれないけど、どんな結果を得るかは自分次第。
 大事なのはこれを元に何を考えどう行動するかよ。
 何も怖がる事はないわ」

静かに俺に言い聞かせるような言い方。
そして、優しく柔らかい微笑みを浮かべる。

「占い師の私が言うのだもの。信じてみない?」

彼女の言葉は、スッと俺に入ってきた。

「……そうですね」

こう見えて……と言ってしまうのは失礼かもしれませんが
やはり彼女も、ちゃんと考えているんですね。
少し見直しました。

現に自分の中から恐怖が消えているのを実感している。
何気なく静かな彼女を見ると
さっきまでの柔らかい表情が、にっこりといった笑顔に変わっていた。
気付けば俺の頭に伸びていた手は、いつの間にか彼女の胸元でもう一方の手と組み合わさっている。

「ねえ、私今すっごくいい事いったんじゃないかしら!」

思わずきょとんとした。
先程までの雰囲気はどこへやら。
今、目の前にいるのはいつもの彼女。

「ええ」

俺の相槌を聞いて、嬉しそうにくるりと背を向けると
「みんなはどんな景色を見たのかしら」と楽しそうに歩いていく。

……この人は本当に最後までしまらない人ですね。

あまりの自由さに、さすがだと思う部分がある。
いつも、どんな時も、アンダンテはアンダンテらしくあろうとする。
悲しむ時ですら、おどけてみせようとしていたアンダンテ。
そんなことを思い出しながら、視線を戻した元の景色。
そこに浮かぶのは、先程と違う夕焼けの色。

……ですが、そういう所に救われているのかもしれませんね。
何故なら、目の前の夕陽はこんなにも、明るい色に変わっているのですから――


●段々と変化する(紫月咲姫)
「長い階段の先にこんなきれいな景色があるなんて……頑張って見る物ね」

彩夢ちゃんの言葉に、さっきまでの階段を思い出して思わず零れる返事。

「長い階段って足に来るのよね……」

そう、言ってはみたけれど、目の前に広がる景色を見て「でも」とすぐに言葉を繋げる。

「本当、登った甲斐はあるわね」

目の前に広がる圧巻の景色じゃ、充分な対価、かしら。
といっても、やっぱり辛いものは辛い。
足と腰がちょっとじんじんするわ。

「ベンチ、少し座ってて良いかしら」

私の言葉に彩夢ちゃんが頷いてくれて、私はベンチに腰をかける。
彩夢ちゃんといえば、全然辛くなさそうに夕陽を眺めてる。

彩夢ちゃんは元気ね……。

背中からも感じるくらい、楽しんでいるのがわかる。
これだけ綺麗な景色だもの。
感動しちゃうのも、わかる気がするわ。

少し座っていたら大分楽になってきた。
そろそろ彩夢ちゃんの傍に行こうかしら。

「ねぇ、咲姫。ここの夕陽、見え方が違う事があるんだって」

後ろから近づく私に気付いた彩夢ちゃんが
振り向かずにそう話し始めた。

「美的感覚とか天候とかに左右されるのじゃなくって
 心地よく見えるか、気持ち悪く見えるかっていう意味よ」

彩夢ちゃんの説明に、なるほどと言葉が漏れる。

「ジンクスみたいなものかしら」

私に見えるのは、木々を額縁にした綺麗な夕焼け。
とても、気持ち悪くなんて見えないわね。

「咲姫は、どっち?」
「私は……そうね」

言葉にするために少しだけ考えて、答えを紡ぐ。

「綺麗で心地いいと思うわ」

隣に並んで、彩夢ちゃんは?と聞くと「あたしは心地いいよ」と返事。
良かった。
彩夢ちゃんにも良く見えているのね。

「夕陽が街を染めるこの色が、凄く綺麗だなって思う。
 このまま段々沈んでく間に、この色も少しずつ変わって見えるけど
 どの色も、繊細で力強くて、好き」
「うん、時間と共に変化する色って、私、好きよ」

彩夢ちゃんの言葉に共感しながら思い浮かぶ、空の色。
お昼は青くて、夕方にオレンジになって。
それから段々赤、紫、そして夜になって……。
そんな風に変化していく色の一つが、今目の前にあって。

「だからこの景色もとても綺麗で、好き」

そう彩夢ちゃんに伝える。
彩夢ちゃんと同じ気持ち。
そして、同じ景色が見えていて。
何だか幸せね。
そんな事を考えてたら、彩夢ちゃんがこちらを見てきた。

「咲姫も同じ風に見えてるなら、それって結構、嬉しいよ」

嬉しいお返事。
思わず頬が緩む。
そのまま彩夢ちゃんは視線を戻して、また夕陽を見つめ続けて。
時折、真上を見上げて、徐々に変化していく空一面を堪能しながら……。

前から思ってたけど
彩夢ちゃんって女の子っぽいもの、やっぱり好きなのよね……。
今もこうして夕陽を見続けて、口元は優しく笑っていて。
さばさばしててボーイッシュだけど、占いみたいなお話も、彩夢ちゃんの方がずっと詳しいし……。
可愛いのは、今更だけど。

本当、愛しい子――

その愛しさにずっと見つめていると、彩夢ちゃんが何かに気付いたのか空から目を離した。
何かと思って視線の先を確認する。

潤ちゃん、手すりに向かってしゃがんで何してるのかしら。

気になって彩夢ちゃんについていく。
潤ちゃんに近づいた彩夢ちゃんが、後ろからぽんと肩を叩くと
なんとも悲しそうな表情で潤ちゃんが振り返った。

「彩夢、さん……」

その表情から、本当に良くない景色が見えてしまったのだろうと察する。
彩夢ちゃん、気付いてたのね。さすが私の妹……!と思ったけど
何だかすごく絶望そうな潤ちゃんを見て、私も、元気を出してほしくて。

「大丈夫。明日はいいことあるよ」

そう言う彩夢ちゃんに続いて、私も言葉をかける。

「気持ちに引き寄せられて悪いこともやってきちゃうし。
 だから笑顔でいましょう。ね?」

すると他のみんなも集まって、みんなで潤ちゃんを励まし始めて。
ふふ、みんな優しいのね。

彩夢ちゃんも、潤ちゃんの元気なところが見られて安心した様子で
みんなと離れると、再び夕陽を見て
そして小さい声で呟いた。

「星が出るまで、居たいな」

その言葉に返事をするように、黙って隣で夕陽を見る。
私もよ、彩夢ちゃん。

段々と変わるこの景色を
その景色を見る可愛い可愛い彩夢ちゃんを
この場所で、一緒に、見させてね。


●また明日
陽も落ちて、それぞれが色々な想いを抱いて帰宅する。
素敵な景色は、きっと様々。
嫌な景色が見えたこともあったかもしれない。
だけどみんな、明日は良い日になるだろう。

なんとなく、そんな気がしていた。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 雨鬥 露芽
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 06月30日
出発日 07月07日 00:00
予定納品日 07月17日

参加者

会議室

  • [19]篠宮潤

    2015/07/06-23:43 

  • [18]月野 輝

    2015/07/06-23:22 

  • [17]月野 輝

    2015/07/06-23:22 

  • [16]篠宮潤

    2015/07/06-23:01 

    僕、も、同意…というか、皆の夕陽の反応、窺ったりー…な感じ、で、
    グループ前提内容、みたいに、書かせてもらってる、よっ。

    楽しみ…だねっ。

  • [15]アンダンテ

    2015/07/06-22:28 

    じゃあ私もグループ前提でプラン書くことにするわね。
    こちらもその辺りはさらっと触れるくらいになりそうかしら?
    同意している旨も入れておくわね。

    それじゃあ現地でもよろしくね。
    また会えるのを楽しみにしているわ。

  • [14]紫月 彩夢

    2015/07/06-09:19 

    皆と逢う時間があるのね。お出かけでそう言うのってあんまりないから、楽しみ。
    グループで空を見に行ったっていう、前提で、プランを組んでみるわね。
    基本的に一組ずつって言うお話だし、
    輝さんの言ってる感じの、様子を窺ってちょっとした声をかけるくらいが無難かなとも思ってるわ。

    同意している旨を記しておくのはいいと思うわ。
    他の行動も入れて見て、絡み可、ぐらいの短いのに縮みそうな気もするけど。

  • [13]月野 輝

    2015/07/05-12:14 

    みんな、グループ参加に興味あったのね。
    なら、グループ参加にしちゃってもいいかしら?
    基本的なプランは変わらないと思うんだけど、みんなと楽しく出かけてきた、とか
    様子のおかしい友人が居たら心配になるとか、そう言う感じをちょっと付け足してみるわね。
    「グループ参加に同意」とかも書いておいた方がいいのかしらね。

    とりあえず私はそんな感じでプラン書くけど、やっぱり二人きりがいい時は遠慮無く言ってね。

  • [12]アンダンテ

    2015/07/04-11:12 

    あら、サフィールさんもゾロ目なのね!
    結構みんな面白い結果になったわね。

  • [11]アンダンテ

    2015/07/04-11:06 

    アンダンテ:
    あら、ゾロ目ね!
    なんだか縁起がいいし、いい感じの景色が見れそうな気がしてるわ。

    サフィール:
    サフィールです。
    よろしくお願いします。
    (ゾロ目系の数字多いなと思いつつサイコロぽいっと)

    【ダイスA(6面):4】【ダイスB(6面):4】

  • [10]アンダンテ

    2015/07/04-10:57 

    こんにちは、アンダンテよ。
    どんな夕日を見る事ができるのか楽しみだわ。
    どうぞよろしくね。

    グループ参加も面白そうよね!
    私達の所もどっちでも対応できると思うわ。


    【ダイスA(6面):1】【ダイスB(6面):1】

  • [9]篠宮潤

    2015/07/03-23:25 

    ヒュリアス:
    ?…そういうものなのかね?
    (アルベルトが言うのならそうなのだろう、と無条件に納得して。から、咲姫氏の言葉耳にして
     『つまり夕焼けが綺麗、ということなのだろうか…』と推察中)

    潤:
    あっ。ぼぼ…僕、も、もし良けれ、ば…皆と見るの、楽しそう、だな…って……(もごもご)
    ……
    (2組パートナー同士で出目が揃っていて、羨ましそうな視線 ※今の所不穏な夕焼け見る予定な神人←)

  • [8]紫月 彩夢

    2015/07/03-22:13 

    (……私達も、一緒の目だ……)

    咲姫:ある意味ゾロ目ね!(きりっ)

  • [7]紫月 彩夢

    2015/07/03-22:11 

    咲姫:
    男の子だって綺麗なものを愛でていいと思わない?
    私はどちらかというと、可愛いものを愛でていたい派だけど。

    彩夢ちゃんの見る景色が心地良いものになると分かってちょっぴりいい気分♪
    さて、私は、と。

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):4】

  • [6]紫月 彩夢

    2015/07/03-22:10 

    紫月彩夢と、姉の咲姫。輝さん達と、潤さん達は、最近少しずつ会う機会が増えた気がして、とても光栄。
    アンダンテさん、とは、初めまして…よ、ね?
    最近、会ったことがあるのか報告書で見かけただけなのか、
    ごっちゃになっちゃう人が多くて…見落としてたらごめんなさい。

    グループ参加もちょっぴり気になってる、私よ。
    精霊と神人とで違う見え方ってのも楽しいけど、
    グループの中で一人だけ違って見えたりしたら、それも、不思議で素敵だなって。

    それはともかくとして、私達もダイスを振っておかないと、よね。

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):4】

  • [5]月野 輝

    2015/07/03-18:22 

    Σダイスの目、アルと同じ……!?

    アルベルト:
    「おや。これはまた珍しい事になったな(くすっと笑っている)」

  • [4]月野 輝

    2015/07/03-18:20 

    アルベルト:
    偶数、と言う事は良く見える、か。
    良かったな、輝。

    ああ、皆さんご存知でしょうけど一応。
    輝のパートナー、アルベルトです。よろしくどうぞ。

    ヒュリアス、それは女性に言ってはダメですよ。
    女性は綺麗な物が好きなんですから。

    さて、では私もダイスを振りますか。


    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):6】

  • [3]月野 輝

    2015/07/03-18:15 

    こんにちは、月野輝です。私も見知った方ばかりね。
    また会えて嬉しいわ。皆さんどうぞよろしくね。

    同意があればグループ参加も可能って事だけど、それぞれの組ごとで行動、でいいのかしら?
    グループ参加もちょっと面白そうかなって思ったりもするんだけど……どっちがいいのかしらね。

    とりあえずダイズ振らないとよね。

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):6】

  • [2]篠宮潤

    2015/07/03-09:25 

    潤:
    ……(なんか困った顔)※サイコロに決めてもらう気満々だったノープラン横着者の影

    ヒュリアス:
    ウル、何をおかしな表情をしているのかね。
    ああ、精霊のヒュリアスだ。同行させて頂く。
    夕焼けとは改めて見るものなのだろうかね…?(情緒を持ち合わせない男、首を傾げた)

    【ダイスA(6面):1】【ダイスB(6面):5】

  • [1]篠宮潤

    2015/07/03-09:16 

    篠宮 潤、だよ。知った方ばかり、かな、みんな、どうぞよろしく、だ。

    すてき、な、夕陽の噂聞い、て…
    どんな景色見れる、か、楽しみ、だねっ。

    【ダイスA(6面):1】【ダイスB(6面):1】


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