やあ!俺の素敵ダーリンの話を聞いてくれよ(瀬田一稀 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 その日、彼はたいそう落ち込んでいた。
 なぜならたった五分前に、失恋をしたばかりだったからだ。
 しかもただの失恋ではない。人生において三十回目の失恋なのである。
 ちなみに彼の年齢は三十歳。年に一度は失恋している計算になる……が、赤ん坊は恋はしないので……続きは想像にお任せします。
(とりあえず、不憫なので初恋年齢は伏せておきます)

 しかしさすがにこれだけNOと言われると、自分は人間として駄目なんじゃないかという気になってくるものだ。ついさっき友達にメールをうってみたのだが、「大丈夫、次こそいい人見つかるって! ちなみに俺デート中だからまた後で☆」と浮かれた返事がきた。泣きたい。ってか空気読め。今度会ったらぶっとばす。

 彼はカフェでうなだれている。ちなみになぜこんな恋人同士が集まりそうな場所にいるかというと、振られた場所がここだからだ。そう、彼はそこから動けていない。
 頼んだコーヒーが熱を失う間もなくのお断り。ならどうして呼び出しに応じた。会う前に断ってくれればよかったのに、期待しちゃったじゃないかよう……。
 ああ目頭が熱い。そうだ、ここはもう帰ろう。返って泣こう。あの飼い主と犬の深い愛の映像でも見て。
 彼は思いたち、席を立ちあがった。そのとき店内に入ってきたのが、ウィンクルムである。別にウィンクルムだと書いてあったわけではない。しかし頭に猫耳をつけた精霊と人間のペアはちょっと目立っていたから、そうかなと思っただけだ。
 なんとなく見ていると、神人がポケットの中から携帯電話を取り出した。画面をタップし「ああ……」とうなる。
「どうかしたか」
 猫耳精霊が問う。神人は精霊に画面を見せた。ああ、と猫耳も、うなる。
「また振られたのか……。何回目だっけ? 十回?」
「十二回だよ。どうすっか……なんて返したらいい?」
「次は良い人見つかるとでも言っとけば?」
 精霊の気のないその言葉が、男の心に火をつけた。

 男は二人が座る席に向かうと、驚く彼らの前に立った。
「いくら自分達に恋人がいるからって、そんなこと軽く言わないでくださいよ! 次こそは次こそは! それっていつですか! そんないい人、世の中にいるんですか!」
「……さあ?」
 突然のことに驚きながら、神人が首をかしげる。
 なんだよ、さあ? って。あいまいだな!
「あなたの恋人はどうなんです。いい人じゃないんですか。僕に教えてくださいよ。彼の素晴らしいところを。こんなにいい人もいるんだって、相棒をプレゼンしてください!」

解説

 ……というわけで。
 相棒の良いところをプレゼンして、失恋した彼に「世の中にはこんなに素敵な人もいるんだよ」ということを教えてあげてください。
大丈夫、彼が相棒に恋に落ちることはありません。
ややこしいので、そういう都合になっています。

プレゼンするのは神人・精霊のどちらでもかまいません。
ひとりで足りなければお互いにしてもいいです。
なお、巻き込まれたことではありますが、カフェのお代として200jrいただきます。


ゲームマスターより

こんにちは、瀬田一稀です。
「へーいそこのナイスガイ! 聞いてくれよ! 俺のダーリンはこんなに素敵なんだぜ!」と全力でアピールしてください。
路線はロマンス、コメディ、なんでもOK。
ただケンカとかしちゃうとエピ失敗になっちゃうので、気を付けてくださいね。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  よしきた、僕の桐華さんの魅力をとくと聞けぃ
うん?僕が窓際?
…桐華さん?あの、手。何で握るの?

桐華さんが饒舌すぎて怖い
え、ていうか半分以上文句じゃない?それ文句だよね?
いや、待って、あの、僕が桐華さんの魅力をだね…
桐華もうやめて!もう沢山!僕もうお腹一杯!
煩いじゃなくてもう十分(もが
精霊の馬鹿力ー!
はずかしぬ

顔覆って突っ伏す
片手取られたままだし
恥ずかしい台詞羅列しておいて涼しい顔しおって…
何で君は時々そう淡白なの!恥じらえ!照れろ!

そうだおにーさん、手貸して。左手
はい僕の左手の掌の上に乗せてー…桐華、桐華も左手重ねて
ウィンクルムの飛び切りの絆パワーをお裾分けだ
おにーさんも、良い人見つかると良いね



信城いつき(レーゲン)
 
えっと…手かな。荒れた手と思うかもしれないけど

練習怠るといざという時大切な人達を守れないって、弓や銃の練習欠かさないし、
頼み事されたら、どんな雑用でも手を抜かず丁寧にこなす

真面目な思いをコツコツつみかさねて作られた手だって思うんだ

知らない事ばかりの俺にも一つ一つ教えてくれたし
逆に不安になった時は、暗い気持ちが消えるまで側にいてくれた
俺は色んなものをレーゲンからもらってるよ


(レーゲンの話を聞いて)
ちょっとオーバーじゃない?褒めすぎっ

まだあるの!?
…偉くないよ。俺がしてもらって嬉しかった事をお返ししてるだけだよ(照れくさい…でもレーゲンがそう感じてくれたなら、少しは誇らしく思っていいのかな)



蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
 
嬉々として話そうとするフィンの口を慌てて手で塞ぎ、俺が話すと言う

フィンが何言い出すか怖すぎるからな

えっと…フィンは…料理が上手くて、家事も何でもこなしてくれて
俺が疲れて帰って来た時に、笑顔で迎えてくれるから…その、凄く助かってる…

それに…何でも楽しむ所、凄いといつも思ってて…フィンが楽しんで笑っていると、俺も自然と楽しいと思えるようになるんだ

恥ずかしすぎて顔が熱い

も、もういいだろ?
って、何でフィンが強請ってくるんだよ
フィンの為に話してた訳じゃ…

次は俺…って
聞いていたら更に顔が熱く
嬉しい気持ちと恥ずかしさでいたたまれない

俺も…独りだと思ってた時期があったけど、フィンに出会えたから
きっと貴方も



明智珠樹(千亞)
 

はい、それでは千亞さんの素敵な所を紹介いたしましょう…!ふふ。

まず外見面です。
見てください、この女の子と見間違う可愛らしさ…!
大きくてやや釣り目がちな瞳!
濃いピンクの瞳、そして髪の色が私の心に火を点けます…!
サラサラな髪はシャンプーの香り漂い、真っ白な兎の耳や尻尾も
ふわふわで清潔感がありしかも敏感さんです…!
そしてこの白い肌!赤面すると解りやすいのも愛らしさ満載ですね。
しかも顔に似合わず身体の一部がビッグマグナ(略)

次に内面ですが、ツンツンさも愛しくてたまりません…!
素直になれない思春期感、しかし最近では少しずつデレが…

…あれ?
千亞さん、待ってくださーい。
私まだ語り足りないのですが…!



●パターン1

「要するに惚気話をしろって事だよね? なら任せて!」
「待て、俺が話す!」
 いかにも楽しそうに、そして得意げに話し始めようとするフィン・ブラーシュの口を、蒼崎 海十は慌てて手で覆った。フィンに任せていたら何を言いだすかわからない。怖すぎる。それなら恥ずかしくても、自分が喋ったほうがいい。
 海十の手のひらの下で、フィンの唇は素直に動きを止めた。しかしきらきらと輝いている青い瞳は、海十が言うことへの期待を表している。別にこれはフィンを喜ばせるために言うんじゃないぞ、俺はこの人に聞かれたから答えるだけであって……!
 海十はフィンから手を離し、落ち込む男に視線を向けた。まだフィンの無言の圧力的な何かは感じるけれど、それはあえて気にしない方向だ。それでも言葉は、しどろもどろになってしまうのだけれど。
「えっと……フィンは……料理が上手くて、家事も何でもこなしてくれて、俺が疲れて帰って来た時に、笑顔で迎えてくれるから……その、凄く助かってる……」
 海十を見ていた男の目がフィンに向く。しかし海十はフィンを見ない。見ればきっとこの先の言葉は言えなくなってしまうだろうから。
「それに……何でも楽しむ所、凄いといつも思ってて……フィンが楽しんで笑っていると、俺も自然と楽しいと思えるようになるんだ」
 とつとつと、海十は語る。男は無言のままなので、どう思っているのかわからない。これで良かったのかと不安に思ったところに、フィンの声が響いた。
「ああ、そんな風に思ってくれていたのか。これは嬉しい」
 フィンは海十の隣で、満面の笑みを浮かべていた。そのあまりにも素直な表情は、見ている海十の方が恥ずかしくなってしまうほどだ。
「も、もういいだろ? ってなんでフィンが強請ってくるんだよ。フィンのために話してた訳じゃ……」
「わかってる。その男の人のためだ」
 フィンは神妙に頷いた……が。その後に続くのは「でも」である。
「でも俺は海十の考えが聞けて、とても嬉しかったんだ。こうなったら、次は俺の番だよね♪」
「え、ちょっと待って……」
 言わせないために俺が言ったのにと、海十は反論しようとした。しかしそうする隙を、フィンは与えてくれない。
「まあまあ聞いてよ。一方通行なんて、感じが良くないじゃない」
 ね? とフィンは首をかしげ、誰の答えも待たずに勢いよく話し始めた。
「海十は凄く可愛いんだ。朝、寝起きが凄く悪くてね、寝惚けてる姿とか凄くいいよ。俺と暮らし始めた直後は、結構好き嫌いが激しかったけど……俺の作った物は絶対に残さない。負けず嫌いなんだよね。嫌いとは絶対言わず黙々と食べるんだ。見てれば分かるんだけどね♪ それを元に俺はレシピを改良して……好き嫌いも随分と減ったよね? あと……」
「わああ、もうやめて」
 海十はフィンの口を手で覆った。まさに立て板に水の褒め言葉は嬉しくはあるが、羞恥に脳みそが沸騰しそうだ。結構な強さで手を添えてしまったので、フィンの目が一瞬大きく見開かれる。しかしそこにこの行動に対する非難は含まれていない。フィン的にはからかったつもりはなくすべて本心ではあるのだが、それが海十の羞恥のツボを刺激してしまっていることに気付いているからだ。
 海十はフィンに目を合わせず、赤く染まった顔を落ち込む男に向けた。
「俺も……一人だと思ってた時期があったけど、フィンに出会えたから……きっと貴方も」
「……僕も?」
 男が不安そうに海十を見上げる。それに頷いたのはフィンだ。
「うん、俺も……独りだったけど海十に出会えた。貴方もどこかできっと出会えるよ」
 フィンは並ぶ海十の手に、そっと手を伸ばした。男の顔は自分達の目を見ているから気付かないだろう。触れる海十の指先は一瞬引きかけたけれど、逃げないでいてくれた。
 こういうことが一緒にいる幸せなのだなと思う。
 海十の人差し指から小指までを、フィンは握る。海十は、少しばかり目を細め、唯一自由になる親指の腹で、フィンの手の甲をさらりと撫ぜた。

●パターン2

 相棒の紹介を、と迫る男に、千亞はぶんぶんと首を振った。もちろん横に、である。
「いやその前に恋人じゃないしっ?」
 ピンクの髪と、白い兎耳がひよひよ揺れる。そんな千亞の隣で、明智珠樹は嬉しそうに口を開いた。
「はい、それでは千亞さんの素敵な所を紹介いたしましょう……! ふふ」
「ちょっとなに勝手に話し始めようとしてるんだよ!」
「この方が聞きたいと言っているんです。いいじゃないですか。それに私は千亞さんの魅力を存分に語りたい! です」
 興奮しきった眼差しで言われぐっと身を引くも、男から「聞かせてください!」と声が上がっては、それ以上言えない。気を良くしたらしい珠樹は、千亞の背後に立つと、男に見せつけるように両肩にそっと手を置いた。
「まず外見です。見てください、この女の子と見間違う可愛らしさ…! 大きくてやや釣り目がちな瞳! 濃いピンクの瞳、そして髪の色が私の心に火を点けます…!」
「珠樹っ!? おい、黙れっ! っていうか後ろからよくそんなこと言えるな」
「当然です。私は千亞さんの体なら、耳の先から足の先まで、詳細に思いだせますよ」
 なんて恥ずかしいことを言う奴! 千亞の顔には一瞬で熱が集まった。だが照れている場合ではないと珠樹の手を振り払い、落ち込む男の前に一歩を踏み出す。……珠樹は無視だ、無視! じゃないと耳に毒なのだから、しかたない。
「えぇと……僕はまだ恋だとかそういう感情が掴めていないので、恋心を自覚して、それを相手にしっかり伝えられるのって凄いと思います。とても、尊敬です」
「尊敬……?」
 男が信じられないと言うように呟く。千亞は一度、深くうなずいた。
「はい。結果が残念でも、また恋が出来るのは、貴方が素敵な人を見つけるのが上手なんだと思います」
 そんなまじめな話をする背後では、珠樹の千亞アピールが続いている。
「サラサラな髪はシャンプーの香り漂い、真っ白な兎の耳や尻尾もふわふわで清潔感がありしかも敏感さんです……! そしてこの白い肌! こうやって赤面していると解りやすいのも愛らしさ満載ですね」
 ここまでは千亞も、珠樹が言う通り顔を赤く染めながらも、なんか言っているなという程度で受け流すことができた。しかし、次の発言はさすがにかなり、いただけない。
「しかも顔に似合わず身体の一部がビッグマグナ(略)」
 振り向きざま。がん! と珠樹の腰のあたりに蹴りを入れる。無言である。
 ああん、と細く切ない声を上げる珠樹。カフェでもこれか、そうなのか。
 だがさすが明智珠樹という男。蹴られたごときではご褒美に過ぎない。彼の唇は動き続ける。
「次に内面ですが、ツンツンさも愛しくてたまりません……! 素直になれない思春期感、しかし最近では少しずつデレが……」
「デレてないっ」
 千亞はかっと口を開けて珠樹を一喝した。その後すぐさま深呼吸をし、対珠樹以外の人への落ち着きを取り戻す。
「個人的には人生は恋愛だけではない、と思うけど……。貴方が共に楽しい毎日を過ごせる恋人に出逢えること、僕も願ってます」
 後ろで喋り続ける珠樹をガン無視して、千亞はそう締めくくった。願ってる、なんて。初対面の、しかも年上の相手に失礼だったかもしれない。男は黙ったまま、千亞を見つめている。
「すみません、役に立つ話じゃなくて……」
 千亞がぴょこりと頭を下げる。そんな千亞に、男の方はもっと深く腰を折った。
「……こんなことを言われたのは始めてです。ありがとうございます!」
 そんなに感動してもらえるようなことを言っただろうか。嬉しいとは思いつつも困惑する千亞の背後から、珠樹の声が響く。
「貴方も千亞さんの素晴らしさに気付いてしまいましたか。この純粋さこそがまさに千亞さんの愛らしさを彩る最高の……」
 まだまだ先は続きそう。だがこれはきっととどまるところを知らないというやつだ。
「ほら、いつまで言ってるんだよ。帰るぞ、珠樹。置いてくぞっ」
 男に会釈をし、千亞は踵を返す。珠樹に見せられない顔は、きっとまだ、この瞳のように赤いはず。しかし背後に残された珠樹は気付くはずもない。
「……あれ? 千亞さん、待ってくださーい。私まだ語り足りないのですが……!」
 ぱたぱたと近寄ってくる足音を、千亞は長い耳でしっかりと聞いていた。

●パターン3

 相棒をプレゼンしてください、と男は言った。
「それは、レーゲンのいい所を言えばいいってこと?」
 そう言った信城いつきがはにかんで視線を落としたのは、相棒の手、だった。
「えっと……俺が好きなのは手かな。荒れた手って思うかもしれないけど」
 言いながら、そっとそれに指で触れる。
「練習怠るといざという時大切な人達を守れないって、弓や銃の練習欠かさないし、頼み事されたら、どんな雑用でも手を抜かず、丁寧にこなす……。真面目な思いをコツコツ積み重ねて作られた手だって思うんだ」
 これだけ言われて、それを見ない理由はない。男の視線は、レーゲンの手の上で止まっている。レーゲンはいつきが掴んだままのそれに、そっと力を込めた。以前もこうして褒められたことはあったけど、改めていつきに言ってもらえると、なんとも嬉しいものだ。
 いつきは口を閉ざして、黙っている男を見ている。これでよかったのかなと考えているのがまるわかりだ。なんて素直でわかりやすい子だろう。
 もう終わりなのかな。だったら次は自分の番……とレーゲンが思ったところで、いつきはゆっくりと口を開いた。男が反応を見せないから、まだ足りないのだと感じたのかもしれない。
「あとは……知らない事ばかりの俺にも一つ一つ教えてくれたし、逆に不安になった時は、暗い気持ちが消えるまで傍にいてくれた。俺はいろんなものをレーゲンからもらってるよ」
 ここまで言ってやっと、男は一度頷いた。納得した仕草。男がレーゲンをゆるりと見上げる。
「……それでは、あなたから見た彼のいいところは、どんなところなんですか? 相棒だから、きっと気付いているでしょう?」
「私から見たいつきのいい所?」
 ふむ、とレーゲンはいつきを見下ろした。きょとんとした瞳にちょっとだけ不安やら期待やらが混じって見える。本当にとてもわかりやすい。この子の笑顔を見たいと思う。そのためには、自分が感じていることを正直に口にすればいい。人の前で言うと、ちょっと恥ずかしがってしまうかもしれないけれど、今ならきっと許されるだろう。
「いつきは料理がとても上手だよ。何事も一生懸命だし」
 その言葉に、いつきはやはり困ったように笑う。それを見「そうそう」と先をつなげた。
「笑顔もだね。笑いかけられるとこっちまで幸せな気分になるんだ。ほら、君も見てよ。この顔素敵だよね? あと元気に走り回ってる姿も……」
 そこまで言うと、さすがに我慢できなくなったのか。いつきは顔を赤く染め「ねえ」とレーゲンの腕を握る。
「ちょっとオーバーじゃない? 褒めすぎっ」
「オーバーじゃない、本心だよ。あとはね」
「まだあるの!?」
「あるよ。あとはね、優しさかな。仕事先でも不安げな人達に積極的に声をかけたりしてる。ただ笑ってるだけじゃない、少しでも安心させたいって気持ちが伝わるから、皆をホッとさせるんじゃないかな……偉いよね」
「……偉くないよ。俺がしてもらって嬉しかった事をお返ししてるだけだよ」
 いつきはうつむいた。こんなことを言うのは照れくさい。でもレーゲンがそう感じてくれているのなら嬉しい。大したことはできないと思っていたけれど、少しは誇らしく思ってもいいのかな……なんて気がしてくる。
 下を見たいつきの頭の上に、レーゲンはぽんと手のひらをのせた。好きだと言ってくれたこの手から、想いが伝わればいい。そう思いながら、指先だけでくしゃりと髪を撫ぜる。
「私は、いつきの笑顔を見ると幸せな気持ちになるんだ。いつきは私から色々もらってるっていったけど、私のほうがいつきから貰っているんだよ」
「与えて、与えられる関係……ですか」
 男はほっと肩を落とし、二人を見つめた。不安が見えるその表情に、レーゲンはにっこり笑う。
「大丈夫、あなたも見つかるよ。……ね、いつきもそう思うよね」
「うん。きっと、想いが伝わる人が現れる……と思う」
 いつきは顔を上げ、男に笑顔を向けた。それはレーゲンが褒めた、優しい微笑みだった。

●パターン4

 男が、正面に並ぶ叶と桐華を見上げている。
「よし来た、僕の桐華さんの魅力をとくと聞けぃ」
 楽しそうに笑うのは叶。これは自分の役目とばかり、嬉々として先を続けようとする。しかしそれを「ちょっと待てよ」と止められる。桐華である。
 桐華は叶を窓際に移動させると、その手をぎゅっと掴んだ。
「……桐華さん? あの、手、何で握るの?」
「これでお前も逃げられないだろ?」
「逃げるって、どういうこと?」
 顔を傾ける叶ににやりと笑みを向けて、桐華は男に向き直る。
「まぁ聞けよ。基本的にこれは人で遊ぶのが好きな傍迷惑な子供でな。もう何度振り回されて面倒被ったかもわからん。無茶するし嫌いなの知っててお化け屋敷連れてくし女装強いるしこの年で人参嫌いだし迷子ごっこするし隠し事ばっかりだし」
 ここまでを、桐華は一気に語った。こんなに饒舌な彼は、本当にとてもかなり珍しいことだ……というか。
「ていうかそれ、半分以上文句じゃない? それ文句だよね?」
 叶は握られている手を引いて、桐華に抗議の声を上げる。なにこれプレゼンじゃないの。僕こんなにいろいろ言われるようなこと桐華に……してる、してるけどね。
 しかし桐華はちらりとこちらを見るだけ。まだ言い足りないのか口を開ける。
「いや、待って、あの、僕が桐華さんの魅力をだね」
 なんとか口を挟みたい叶の言葉も完全無視だ。
「……それでも、一目見た時から、放っておいたらいけない気になってた。楽しそうなの見てるのは心地いい。構ってやって、笑って貰って、なんだかんだ、いつだって待っててくれるこいつに、こう見えてベタ惚れでな」
「桐華もうやめて! もう沢山! 僕もうお腹一杯!」
「……叶、煩い」
「煩いじゃなくてもう十分……っ」
 桐華の手が叶の口を塞ぐ。外そうにも精霊の力は強くてびくともしない。だめだこれははずかしぬ。そんな叶をよそに、桐華はさらにとどめの一言。
「まあとにかく……何が何でも幸せにしてやるつもりだ」
 ここでやっと、桐華は叶から手を離してくれた。だが叶は文句など言えない。言える状態ではない。
 握られていない手で顔を覆った。桐華さんなんて恥ずかしいこと言うの。僕が桐華を困らせるつもりだったのに……!
 手指の間から覗く桐華は涼しい顔。あんな恥ずかしい台詞さんざん言っておいて、なんていう男だろう。
「何で君は時々そう淡白なの! 恥じらえ! 照れろ!」
「本当のことを言うのに、なにを恥ずかしがる必要がある」
 桐華はそう言ったが、口元がかすかに歪んでいるあたり、確信犯だ。しかも男はなるほど、と深く感心している様子。なにがどうしてこうなっているのかよくわからない。でも。
 これはこれでいいかな、なんて。
 そう、たまには、きっと。
 叶は、はっと手のひらを顔から離した。
「そうだおにーさん、手貸して、左手! はい、僕の左手の手のひらの上にのせてー……桐華、桐華も左手重ねて」
「何を言いだすんだ?」
 桐華も男も怪訝な顔をしたものの、叶に言われた通り手を重ねた。ウィンクルムの手のひらの間で、男の手が居心地悪そうに動く。
「そんなに緊張しないで。ウィンクルムの飛び切りの絆パワーをおすそわけだ」
「絆パワー……さっきは恥ずかしくて悶えていたじゃないですか」
「あれは……そうだけど! でも……うん、ああいう桐華もいいんじゃないかな」
 男の突っ込みに叶が笑い、そのままの表情で相手を見つめる。
「おにーさんも、良い人見つかると良いね」
 叶の笑顔が自分に向けられていないことがいただけない。桐華は思わず自分の手のひら――下には男の手がある――に力を込めた。しかし彼は一切悪い事をしていないのだと気付き、力を抜く。それに叶は今言ったではないか。おにーさん『も』と。たしか最初にも『僕の』桐華さんと。
 自分をからおうとする叶がどこまで本気かはわからない面もある。でも言動は嘘ではないとは思っている。叶のすべて……かはわからないが、彼を、桐華は信じている。



依頼結果:大成功
MVP
名前:明智珠樹
呼び名:珠樹、ド変態
  名前:千亞
呼び名:千亞さん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 瀬田一稀
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 06月12日
出発日 06月20日 00:00
予定納品日 06月30日

参加者

会議室

  • [20]明智珠樹

    2015/06/20-00:00 

  • [19]叶

    2015/06/19-23:23 

    あっ。ずるいずるい!僕もお喋りする!
    スタンプペタペタしまくりで賑やかいいなぁって見てた。
    あと、ないすおっぱい。(ぐっ)

    ふふふのふー。僕だって桐華さんの魅力いっぱい語るの負けないもんねー。
    とくと聞くが良いー!

    プランお疲れ様だよ。
    皆の素敵な言葉、リザルトで沢山聞けるのがとても楽しみ。

  • [18]信城いつき

    2015/06/19-23:08 

  • [17]信城いつき

    2015/06/19-23:08 

    みんなおつかれさまー

    スタンプぺたぺた、こういうのも面白いね。
    できればもっと色々スタンプ貼りたかったな
    次回に向けてもっとスタンプ考えようっと!

    相手の良いところを言葉にするのって、なかなか難しかったけど
    うまく伝わればいいな。
    みんなの素敵なところも、いっぱい聞けますように。

  • [16]明智珠樹

    2015/06/19-22:39 

  • [15]明智珠樹

    2015/06/19-22:39 

    ふ、ふふふ。ふははははははははは
    こんばんは、空気ブレイカー明智珠樹です。
    隣に居るのは兎っ子倶楽部会員ナンバー821の千亞さんです。バニーですね、ふふ。

    冗談はさておきや、皆様のスタンプに興奮とトキメキをたっぷりいただきました。
    んもぅ、皆様ノリが良いのだから…っっ!だいしゅき!
    勝手知ったる仲の皆様に感謝いたします。
    勝手知ったると思ってるのは私だけですかそうですね。

    最後までスタンプで終わらせる未来もありましたが、ちょっとブレーカーしちゃいました。ふふ。
    千亞さんの愛くるしさだけで8000字書けそうな勢いを300字に纏めました。
    ド酷いプランですね、ふふ。
    皆様の相棒愛を楽しみにしております、ふ、ふふふふふふふふふ!!

    そんなこんなで大好きな皆様にまたお会いできますのを
    心より楽しみにしております。
    それでは…!!

  • [14]明智珠樹

    2015/06/19-22:39 

  • [13]信城いつき

    2015/06/19-22:06 

  • [12]明智珠樹

    2015/06/19-10:27 

  • [11]明智珠樹

    2015/06/19-10:27 

  • [10]叶

    2015/06/19-04:38 

  • [9]蒼崎 海十

    2015/06/19-01:19 

  • [8]蒼崎 海十

    2015/06/19-01:19 

  • [7]明智珠樹

    2015/06/17-12:34 

  • [6]蒼崎 海十

    2015/06/16-23:57 

  • [5]明智珠樹

    2015/06/15-22:34 

  • [4]信城いつき

    2015/06/15-20:48 

  • [3]叶

    2015/06/15-20:38 

  • [2]蒼崎 海十

    2015/06/15-19:52 

  • [1]明智珠樹

    2015/06/15-01:26 


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