真夜中の救出(真名木風由 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 ウィンクルム達は、車内でA.R.O.A.の本部から受け取った資料に目を通した。
 これより向かう村からの依頼のものである。
 緊急性が高いことにより、現地到着次第依頼人に挨拶、即任務に行けるよう事前情報に目を通す必要があるのだ。
 その依頼とは、少年達の救出である。

 これから向かう村の近くには、山と裾の広がる森がある。
 以前、オーガが山裾の森で出没し、派遣されたウィンクルム達がこれを討伐したことがあるそうだ。
 が、オーガの存在がなくとも危険な野生動物が出没する場所でもあった為に村の大人達は立ち入り禁止を決めた。
 立ち入り禁止‥‥そう言われて、逆に度胸を試したくなったのかもしれない。
 13歳になる少年3人が森へ立ち入り、山に行って帰ってくる度胸試しを試みたようだ。
 ……学校から帰ってこないと心配した親の元に何とか通じた携帯電話で彼らからの助けが来なければ、それすらも判明しなかったが。

 ここまでであれば、過去にオーガが絡む任務でウィンクルムが訪れた場所と言えど、ウィンクルム達の領分ではない。

 立ち入り禁止とした大人達の判断は正しく、ただの野生動物だけがいた訳ではなかった。
 少年達は山の中腹にある洞窟へ逃げ込んだそうだが、角が生えている野生動物やゴブリンがいる、つまりデミ化した野生動物やゴブリンがいると連絡してきた為だ。
 上手く逃げたが、1人が足を挫いており、洞窟に逃げるのもやっとの状態だったらしく、動くことも叶わない。
 彼らの安全を考慮すれば、洞窟へ逃げ込んでもねぐらにしている存在の可能性が否定出来ず、仮に現在安全だったとしてもいつまで安全かは保障出来ない。
 故に、早急に救出する必要がある。

 緊急性が高いとして本部は短時間で可能な限りの資料を作成、現地へ向かうウィンクルムへ託した。
 時間の無駄は許されず、現地に向かうまでも資料を読む必要がある。
 村への到着は、夜になるだろう。
 ……間に合えば、良いが。
 祈る気持ちと共に資料を捲る。

 今夜は、長い夜になりそうだ。

解説

●目的
・少年達を救出し、村へ送り届ける
・その過程における障害を全て排除

救援を求めた少年達の情報より、野生動物の他、デミ化した野生動物、ゴブリンの存在が確認されています。
充電が切れてしまったらしく、少年達と現在連絡は取れませんが、依頼をした村長の話によれば、クマやウルフが出没するようです。

●任務時間帯、場所
・夜間
・裾に森を抱く山

添付されている資料には少年達がいると思われる洞窟の位置も記されていますが、時間帯が夜間であり、灯りもない場所であるということをお忘れなく。

●注意事項
・戦闘場所はいずれも開けた場所ではありません。ジョブスキルによっては、使用した場合に悪影響が想定されるものもありますので、ご注意ください。
・遭遇する障害自体は強いものではないですが、1度に登場する、少数であるとは限りません。村に帰るまでを考慮した上で全員で協力して任務を遂行されることをお勧めします。

ゲームマスターより

こんにちは、真名木風由です。
最初のアドベンチャーはごくシンプルな救出任務となります。
敵も強くない為、まだレベルが高くない方でも十分対応出来ます。
ただし、たった1組のウィンクルムの活躍でどうにかなるような状況ではないですので、ウィンクルム同士の協力は必要となるでしょう。
任務成功の為、協力して臨んでください。

それでは、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  「急がねば」

武具と鞄だけ掴んで乗車
車中で軽く打合せ

●往路
トランスし移動

地図と地形を合せ
星の位置と地形で方角把握し迷わず進む

件の洞窟へ
足場や周囲はライトで照らす
うち1本はハンカチ類と首飾りを繋げ俺の首横に固定
戦闘中でも周囲をしっかり照らす工夫だ

敵は前で杖で戦う

洞窟見つけたら少年達を落ち着かせたい
中心人物を見極め、ライトを1本渡す
「敵は倒すから任せろ。君にライトを1本任せたい」
少年達の気力を奮わせるためだ

☆弱ってる子は俺も背負う

●帰路
盾の《ライフバースト》で少年含めHPを底上げ
杖の《封樹の理》で、植物を蔦状に
⇒敵を縛り、首を絞める

★帰還後
「よく頑張ったな」と少年達を褒める
皆に謝るよう優しく後押しだ



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  ●皆で協力して任務に当たる。
●基本的な流れは
戦闘を極力回避して子供達と合流を優先し
子供達を護って村まで帰還

●ヘッドライトを全員分準備。
無理ならマグナライトをベルトに固定。
両手を自由にして灯りを確保。
●森に着いたらトランス。
●携帯用食糧も持っていく。
●サバイバル5、ハンティング4を活用し野生動物の生態を仲間達と相談しつつ進行。
敵を出来るだけ避けて洞窟へ向かう。
●敵遭遇時、オレ達2人は壁役で敵の攻撃を引きうける。射線を確保しつつ敵の気を引き仲間を敵攻撃から守る。後で村が襲われないようにデミやオーガは倒す。
野生動物は敵が逃げれば追わない。
出来たら逃げて欲しいぜ。
●ラキアのMP不足時はディスペンサ。




アイオライト・セプテンバー(白露)
  依頼人に御挨拶したら、携帯食用意してもらう時間はあるかな?
男の子達は、お腹空いてると思うの
お菓子もいいけど、家族の御飯が一番だもんっ
あと、新しいぱんつ(もご←白露に止められた

トランスは、パパがスキル使わなきゃいけないほどピンチになったら
並び順は一番前か、後
でも、敵はなるべく相手しないで逃げたいな
鞭で拘束して隙を作って、その間に他の人に急いでもらったり

洞窟近くまで行ってどうしても見付からなかったら、声を出してみよっと
名前を呼んだりして元気づけられたらいいな

応急処置が終わったら、帰りだね
皆で囲んで守るようにしよ
帰りもやっぱり敵は相手したくないけど、逃げて救助者に負担がかかるなら、あたしも頑張るよ



柳 大樹(クラウディオ)
  行きは先頭。
戦う前にトランス。そうでなくても洞窟に入る前にする。

マグナライトを使って、周囲と足元に注意して進む。
行きは敵に遭遇しないように急いで洞窟に向かう。
蔦や草が邪魔なら斬る。時間が掛かるなら無視。
戦闘は中衛。前衛を抜けた敵を攻撃。
後衛の射線に注意する。

森はデミ・トレントにも注意する。いないとも限らないし。
デミ・ウルフがいたら、保護した後は怖がらせないように注意しないと。
俺、無表情になるらしいし。

洞窟到着後、少年達の名前を呼んで探す。
資料に無ければ依頼人に聞いておく。

足挫いた子を背負って運ぶ。
鎧が痛いならお姫さま抱っこにする?

帰りは真ん中で戦闘は不参加。
人運んでるから、余計足元気をつける。



●時間との勝負
 村へ到着したウィンクルム達は、待ちかねていた村長へ面会した。
 今回は、この村長が依頼人になる。
「リク・ラント、カイ・ユーラ、クウ・シエロ……写真画像があるのは助かります。足を挫いた子が、クウ……」
「ええ。体格がしっかりした子で、リクとカイを守ろうとしたと聞いています」
 柳 大樹は依頼人より資料に記されてあった少年達の写真を見て呟くと、村長はそのように教えてくれた。
 資料に名前があっても本人確認する情報はひとつでも多い方がいい。
 声こそ平坦ではあるが、心も同じではない。
 無気力そうな目ではあるが、確認すべき箇所は確認する。
 時間がないとは言え、短時間でも必要な情報は押さえなくてはならないのだ。
「携帯食……は、持参のものを持って行った方が良さそうだね」
「足挫いてる状況だし、長居はしたくないと思う。それに───」
 アイオライト・セプテンバーが、空腹であろう少年達を安心させるには家族のご飯がいいのではと口にするが、大樹が視線を巡らす。
 村長が気を遣って自分達に会わせていないが、別室にいるらしい少年達の家族の平静ではない声が聞こえてくる。
 生命の危機が考えられる場所へ取り残されていたら……冷静でいられる家族はいない。
 宥めて、携帯食を作って貰い、出発するタイムロスは無視出来ないだろう。
 子を想う気持ちが、逆にウィンクルム達の初動を遅らせる可能性があると判断してくれた村長の配慮は妥当なものと言える。
「詳細な地図は受け取った。急いだ方がいいだろう」
 資料を読み込み、車内でも皆と軽く打ち合わせていたアキ・セイジは、準備を整えていた。
 洞窟の場所が分かるとは言え、灯りがある場所ではない。
 白露が本部から貸与されたコンパスを所持しているとは言え、その指針を基に夜間の山中を往くのは自分達だ。
「オレ達が痕跡から戦闘回避で洞窟に急行しても、向こうがオレ達の痕跡から追跡する可能性もあるだろうしな」
 痕跡を見つける技能に関してはこの中では最も優れるセイリュー・グラシアが、皆を急かす。
 狩猟技術そのものに関してはセイリューより上のアキがサポートする局面があるかもしれないが、セイリューもそちら方面に関して十分過ぎるものを持っている。
 自分達には敵ではない野生動物であっても、今回に関して言えば油断してはならない。
 痕跡を消しつつ進む時間的余裕がない以上、こちらが痕跡を警戒して戦闘回避出来たとしても、彼ら自身がこちらの痕跡で追跡してくる可能性は否定出来ない。
 本部も緊急であるが故に適切なヘッドライトまで人数分揃える時間がなく、複数で持参した懐中電灯「マグナライト」が頼りなら、慎重はし過ぎる程した方がいい。
「洞窟を出る時を警戒すべきだ。少年達が最も油断し易いタイミングでもある」
「そうだね。足を挫いている子もいる状況だからこそ、ほっとしてしまうかもしれないね」
 クラウディオの言葉に少年達の手当ても行うラキア・ジェイドバインも頷く。
 村へ送り届けるまでが任務と村長の家を出た所で、村長を振り切った少年の母親達がウィンクルムへ泣き縋る。
「出来たら、スープを作って貰っていいですか」
 ヴェルトール・ランスが、涙する母親達へそう笑った。
「きっと疲れてますから、村へ帰ってきたら、家族のスープを食べて貰いたくて」
 発見次第、携帯電話で連絡しようと思っていたが、何かしないと落ち着かない気持ちは理解出来る。
 その為、絶対助けるという意味も含めての依頼だ。
「うちにも厄介な子供がいるから分かります。必ず連れて帰ってきます」
「今、あたしのことちらっと見た?」
 母親達に声を掛ける白露にアイオライトは不服そうに言ったが、白露は母親達が十分に離れた所でこう言った。
「アイはいい子だと思いますよ。……ぱんつにさえ拘らなければ」
 新しいぱんつも必要だから用意して貰おうと車内の打ち合わせで主張したアイオライトを阻んだ白露は、その拘りはちょっと悩ましいようだ。
 村を出て、まずは森へ。
 少年達の痕跡、障害になりうる存在の痕跡を見るセイリュー、有事に備えるアキがトランス状態となり、懐中電灯「マグナライト」の灯りを頼りに進んでいく。

 洞窟にいる少年達は、今、『連絡が取れていない』状態。
 無事であるといいのだが───

●慎重に急げ
 懐中電灯「マグナライト」で地面を照らしたセイリューが痕跡を見分けていく。
 普段立ち入り禁止にされている場所であれば、痕跡が残っている確率は高いと白露も見越した通り、少年達の痕跡自体はすぐに見つかった。
「遠回りでも痕跡を辿りましょうか?」
「最速ルートのがいいな」
 白露の言葉にセイリューが緩く首を振った。
「オレ達の痕跡が残り過ぎる。糞から彼らの通り道を逆算して、戦闘回避しつつ向かった方が遭遇の危険性がないな」
「……つまり、彼らは通り道を通った為に危険に遭遇してしまった、ということだね?」
 セイリューの意見にラキアが確認を取る。
 彼らの痕跡を辿る、つまり、特に野生動物の通り道に行き当たった場合、戦闘回避が難しくなり、時間が掛かる可能性がある。
「俺もその方がいいと思う。ウルフ、クマが出るって話だし、痕跡で特定出来るから、そこから通り道を逆算して、先行は出来ると思うし」
 動物学に関しては、大学へ行かないのが勿体無いとも言われるヴェルトールは皆の知識と技術の『合わせ技』を使えば、最速ルートで向かうのも可能と口にする。
「その知識と技術に優れている方に頼る状況になると思いますが……お願いします」
 白露は納得し、皆と共に先を急ぐ。
「……風の向きが、あまり良くないな」
 セイリューが糞のあった場所から野生動物の遭遇確率が低い場所を選んで進んでいるが、セイリューは風向きで人の匂いで感づかれる可能性があると注意を促す。
 先頭を歩く大樹にも懸念事項はあった。
「情報はなかったが、デミ・トレントも出そうだからな。倒すことより振り切ることを考えるか」
 足元だけでなく周囲も警戒する大樹が視線を巡らせるが、今の所、デミ・トレントらしき動きはない。
 その時だ。
 風が微かにウルフの唸り声を運んできた。
 まだ、デミ・ウルフなのかただのウルフなのか判断出来ない。
 が、唸り声は複数、少なくない数だとは分かる。
「確認出来るまで、様子は見た方がいいと思うの」
 アイオライトが先制のタイミングを計る周囲へ、ひとつ提案。
 デミ・ウルフであれば、今後村に危険が及ぶ可能性もあるのでそうは言ってられないが、野生動物であれば出来る限り戦闘回避したい。
 また、ただの野生動物相手に力を尽くした後、本当に必要な局面で使えなくなっても本末転倒である。
「数が多ければ別だけど……そうだね、見定めた方がいいかも」
 ヴェルトールが頷いたその時、懐中電灯「マグナライト」で照らされた先に2頭のウルフが姿を現した。
「角もない……ただのウルフみたいですね」
「数も多くないなら……今の内だろうな」
 言葉を交わした白露とクラウディオがそれぞれの武器を構える。
 数は多くないことより、威嚇すれば一旦退くだろう。
 ウルフが大樹とセイリューへ到達するより早く、白露のダイヤモンドショットから威嚇射撃が行われた。
 同時にクラウディオの手裏剣「隻眼の鷹」が後退するウルフ達を牽制すれば、味方を呼ぶ意図があるのか、ウルフ達は退いていく。
「今度は本格的に狩ろうとして来るだろうな。チームプレイで狩る能力は、無視出来ない」
 アキが本格的に狩る準備をするだろうと見解を示し、急行を提案した。
 今は、構っている場合ではないのだ。
「やっと山に来たけど……中腹までまだあるね。その前にウルフ達が戻って来たら、朝霧の戸惑いかな」
 ヴェルトールが、周囲を警戒しつつ呟く。
 最速で進んでいるとは思うが、普段立ち入り禁止の場所であり、夜間ということもあって思った以上に進むのは難しい。
 ウルフ達が戻ってくる可能性は、ある。
「こうして考えると、セイリューがいなかったらと思うと怖いね」
 ラキアが頼もしそうに先を歩くセイリューを見る。
 が、先を行くセイリューに言わせると、アキの地図と実際の地形確認があるのと、大樹とクラウディオが共に前を歩いてくれることで専念出来る状況が大きいらしい。
「洞窟自体は見つけ易い場所にあるらしい。より足元に注意する必要はあると思うが……」
 アキが洞窟内部は違う意味で足場が安定しない可能性もあると注意を促し、自身の懐中電灯「マグナライト」の固定が解除されないか今一度確認する。
 やがて、中腹にある洞窟の前へ到達した。
「クラウディオ、トランス」
「ああ」
 洞窟に入る前、大樹がクラウディオにトランスを申し出た。
 このタイミングで?
 他のウィンクルム達の表情を見たのか、大樹はインスパイアスペルを口の端に乗せる前にこう言った。
「洞窟内部が『安全』って保障がないから」
 少年達とは、既に『連絡が取れていない』状態。
 自分達が痕跡を警戒したのは、ここが『安全ではない』から。
 洞窟へ逃げても、その洞窟がいつまで安全かは保障出来ないからこそ、早急な救出が必要であると自分達は派遣された。
 つまり、少年達が『今』『安全である』という『断定』は禁物。
 この『断定』は、状況によっては命取りになりかねない。
 大樹は洞窟内部での戦闘もありえると判断したからこそ、今トランスを選んだのだ。
 下から風が吹き、白銀のオーラが彼らを包んだ瞬間、洞窟から悲鳴が響く。
「急がないと、ヤバそう」
 大樹の言葉に、ウィンクルム達が頷く。
 少年達の元へ急行せよ!

●障害の向こうの少年達
 懐中電灯「マグナライト」の光で先を照らし、可能な限り急ぐ。
 悲鳴が上がっているということは、何かと遭遇していることを意味する。
 彼らが対抗出来る手段を持っている訳ではないし、怪我人もいるなら逃亡もままならない。
 いや、洞窟という状況なら、万全であっても逃げ切れるかどうかは───
「いた!」
 灯りの向こう、デミ・ゴブリン達の姿を見つけ、ジャックオーボディの恩恵で殺気感知能力が上がっていたアキが真っ先に声を上げた。
 が、状況が想定より悪い。
 デミ・ゴブリンの向こうに件の少年達がいる。
 行き止まりに追い詰められた彼らは、壁を背にして震えている状態だった。
「ランス!」
「分かってる!」
 アキが振り向いた時には、ヴェルトールが朝霧の戸惑いを準備していた。
 この状況においては、まず、デミ・ゴブリン全体の行動妨害が必要である。
 閉所という立地上、範囲攻撃のカナリアの囀りⅡは少年達に被害が及ぶ可能性もあり、使用は見合わせるべき状況だ。
 かと言って、他のジョブスキルは単体攻撃のもの、他がやられている間に少年達へ到達される訳にはいかない。
「パパ、あたしが絡め取った相手を狙って!」
 少年達の壁になるべくセイリューがラキアを守りつつデミ・ゴブリン達へ走る中、アイオライトがウィップ「ローズ・オブ・マッハ」を振るう。
 万が一、流れ弾が少年達に当たるようなことがあったら───その可能性をなくすには、自身が動きを阻害させるよう立ち回った方がいい。
 デミ・ゴブリンの数も少なくない為、確実に仕留めにいかなければ。
「仕留めることそのものはお願いしますね」
 白露は、デミ・ゴブリンの無力化重視でダイヤモンドショットの引き金を引く。
 セイリューとラキアが少年達へ到達するのを援護するようにアキが前に出、アイオライト達を狙おうとするデミ・ゴブリンへ大樹が儀礼刀「エムシ」を振るい、命中した所をクラウディオが双葉弐式で確実にダメージを重ねた。
 ここで、ヴェルトールの朝霧の戸惑いがデミ・ゴブリン達へ発揮される。
 デミ・ゴブリンに纏わりつく霧は、彼らの動きの全てを奪う訳ではない。
 だが、支援として大きいのは事実だ。
「無事か!?」
 セイリューがラキアと共に少年達の元へ到達すると、彼らは震えながら頷いた。
 位置的に2人の少年が1人の少年を守る形になっており、守られている少年が座り込んでいることや他の2人の少年より体格に恵まれていることより、クウと判断、ラキアがクウへ懐中電灯「マグナライト」を渡した。
 これは、洞窟内部を急行の間、誰かがリーダー格であるクウに光源確保を依頼すべきとアキが提案したことによるものだ。
「2人も下がって。大丈夫」
 セイリューがデミ・ゴブリンを相手取る間、ラキアは残る2人も光源を持つクウと一緒にいるように言う。
 今は、彼らの安全確保が大事───チャーチで少年達の安全地帯を形成した。
(本当は、帰りに強敵が出るならばと思っていたけれど……この状況で使わないと、皆が十分に戦えない)
 少年達の安全を確保しなければ、何かと不利な状況が起き易い。
 ラキアは自分がすべきことを心得ており、だからこそ、セイリューがラキアを守って強行突破を選択したのだ。
 そのデミ・ゴブリンもヴェルトールの朝霧の戸惑いで動きを制限されていた。
「安全確保されたようですから……打って出ましょうか」
「こんな状況だもん、あたしも頑張る!」
 チャーチ形成で少年達の安全が確保されたことで、白露が無力化から確実にデミ・ゴブリンを仕留める方向に切り替え、アイオライトもデミ・ゴブリンの攻撃をハートフル・ウォールで受け止め、その直後の隙を狙ってウィップ「ローズ・オブ・マッハ」を振るう。
「ランス、仕上げは任せる」
 杖で応戦するアキに応じるかのようにヴェルトールが小さな出会いをデミ・ゴブリンの1体へ撃ち、確実に仕留める。
 劣勢を感じ、ヴェルトールを狙おうとする動きもあったら、アキが足止め、それさえも突破しようとしても大樹とクラウディオが黙っていない。
「突撃してきても胴ががら空き」
 大樹が当てること重視で儀礼刀「エムシ」を振るえば、その隙をクラウディオも逃さない。
 セイリューが背後にいる為に対応が分散しているデミ・ゴブリンがウィンクルム達の敵になる訳もなく。
 最終的に、全てのデミ・ゴブリンが地に倒れていた。
「リク、カイ、クウ……で、いいんだよな?」
「間に合って良かった。もう大丈夫だからね」
 大樹が名を呼んで確認を取り、アイオライトがほっとした笑顔を向ける。
 感情のない声で尋ねてきた大樹へは緊張した表情を見せた彼らも、続くアイオライトのお陰で緊張が解けたようだ。
「無事とは言え、深刻ではない範囲でも負傷はしているみたいだね」
 彼らがセイリューが差し出した携帯用食糧を食べている間、ラキアがサンクチュアリを発動させて傷を癒し、下山出来るようにしておく。
「退けたウルフ達が追跡してくるかもしれない。下山した方がいいだろう」
「それに、デミ化した野生動物も見たなら、そっちの脅威もあるだろうし」
 アキがオリジン・オブ・ライフでライフバーストを行い下山を促すと、緊張を少しでも和らげるようにと苺飴を少年達へ配っていたヴェルトールも同意。
「行きより帰りのが大変かもしれないけどな」
 自分達の痕跡を消してここへ来る余裕はなかったとセイリューは帰りの方が追跡される為に困難であるだろうと口にする。
「前方だけを注意すればいい話でもないだろう。左右後方も奇襲される可能性は憂慮すべきだな」
「という訳で、あんた達は真ん中」
 クラウディオの見解を理由にクウへ肩を貸す(13歳の少年を背負っての下山は本人のプライドを始め、見送られた)大樹がリクとカイへもそう話す。
「ご家族が心配していますからね。帰りましょう」
「……しっかり謝れ。ここまで頑張ったなら、出来る筈だ」
 白露の言葉を聞いて両親の説教を想像した少年達へ、アキが優しく言葉を掛ける。
 怒られることも謝ることも。
 全ては、無事だから出来ることなのだから。

●真夜中の帰還
 洞窟を出た直後が、一番注意すべき。
 クラウディオの見解は、的確なものだった。
「予想通りだ」
「追跡されているなら、こうなっちゃうよね」
 左右から襲い掛かってきたデミ・ウルフの攻撃をクラウディオとアイオライトがそれぞれの盾で受け止める。
 守られている少年達へ牙が届くことはないが、十分脅威だ。
 盾で攻撃を受け止めている間に白露がデミ・ウルフを撃ち、弱った所をクウに肩を貸している大樹以外の全員が仕留めに掛かる。
 挟撃であったが、クラウディアの警戒もあり、少年達を守る体制を整えていた為に挟撃された不利もなく、デミ・ウルフ達は洞窟前で仕留めることが出来た。
 だが、油断は出来ない。
 途中、クマも遭遇し、こちらも中途半端に攻撃を仕掛けてはその憎しみで村への脅威になる可能性の排除より仕留め、村への道を急ぐ。
「ウルフは追って来ないようだな」
「リスクを考えたのかもしれないね」
 アキがその方が助かると漏らすと、ヴェルトールは周囲を警戒しながらも現れないウルフについてそう推察する。
 デミ・ウルフがウルフより先んじて自分達へ襲い掛かっており、仕留められていった様をウルフ達が目の当たりにしていれば、狩りのリスクを感じてそのまま夜の闇へ消えたかもしれない。
 この状況においては、その方が助かるが。
「村に帰るまで、油断は出来ないけどな」
「気が緩んだ直後に有事が発生したら、立て直しが難しいからね」
 大樹が少年達へ注意しておくと、ラキアも続く。
 面倒くさがりの大樹からすれば何度も危機に陥って欲しくないのだろうし、サンクチュアリを扱えるラキアも癒せる範囲ではなくなる負傷を彼らに負って欲しくないのだろう。
 だが、それとは裏腹にデミ・ベアーが左脇から現れる。
 クラウディオが盾で受け止め、アキが封樹の杖を用いて発生させた植物でデミ・ベアーの行動を妨害している間にウィンクルム達が単体登場ということもあり総攻撃を仕掛けて倒した。
「先を急がないとな。これさえもいい痕跡だし」
 セイリューが痕跡を消している場合ではない為、彼らが手出しを諦めるであろう村まで急ぐことを提案する。
 疲れを実感してきている様子の少年達を励ましつつ、村を目指すウィンクルム達。
「……どうやら、待っていられなかったようですね」
 森の終わりが見え、間もなく村の入り口へ差し掛かる頃、白露がそれを見て微笑んだ。
 村の入り口には、明かりが見える。
 それは、少年達の両親が灯りを持って彼らの帰りを今や遅しと待っていたからだ。
「スープは味わって食べてあげてね」
 安心してぼろぼろ涙を流す少年達へヴェルトールが笑う。
 きっと彼らは怒られるだろうが、それ以上に無事を喜ばれるだろう。
 クラウディオが最後まで警戒を忘れなかったように、大樹も帰りこそより注意していたこともあり、少年達が両親の元へ帰ることが出来てほっとする。
(洞窟内部、疑って良かった)
 大樹は、最新の情報が得られない状況を考慮した動きが正解であったと心の中で呟いた。

 村の入り口から少年の両親達が駆けてきて、少年達を泣きながら叱って、それから抱きしめている。
 村長がウィンクルムへ感謝の礼を何度も言い、宿へ案内すると頭を下げてくれた。
 既に時刻は真夜中、単純ではなかった救出任務後の今、ウィンクルム達はすっかり疲れている。
 けれど、少年達の無事を思って作られたスープをお裾分けして貰って宿のベッドでぐっすり眠れば───きっと、心地良い疲労に見合う心地良い睡眠が得られるだろう。

 少年達にとっての英雄は、明日も誰かの為に戦い続ける。
 互いの絆を信じ、共に在る様を誰かの目に焼きつけるように。



依頼結果:成功
MVP
名前:柳 大樹
呼び名:大樹
  名前:クラウディオ
呼び名:クラウ、クロちゃん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 真名木風由
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 06月28日
出発日 07月05日 00:00
予定納品日 07月15日

参加者

会議室

  • 会議室の流れに沿ってプラン書いたぜ。
    ヘッドライト皆の分も用意って書いといた。
    できたら両手を空けたいじゃん。
    駄目だったらゴメンよ?
    その時は各自所有のマグナライトが火を噴くぜ(噴かねーよ

    相談とか色々、皆さんお疲れさまでした。
    巧く行くように祈っている!

  • プラン終了っ
    もうちょっと手直しするけど、とりあえず形地にはなったよ☆

  • [10]柳 大樹

    2015/07/04-15:41 

    行きはなるべく敵に会わないように急いで洞窟に、ってことか。
    了解。

    >食べ物
    少なくとも夕飯は食べてないだろうし、お腹空かせてるだろうからいいと思うよ。
    ちょっと腹になんか入るだけでも落ち着くだろうし。

    >呼びかけ
    貰った事前情報に少年らの名前が載ってたら、名前でよんだ方が反応がいいかも。
    依頼人に挨拶ってあるから、事前情報に無かったらそのとき聞けるかな。

  • [9]アキ・セイジ

    2015/07/04-10:22 

    うん、作ってもらえたらラッキーだよな。力もつくよな。
    一応、作ってる時間があるかわからないから、保険としてランスがもってる飴を書いておくよ。
    それと、帰るまでにスープでも作っておいてってのは頼んでおく。

    できるだけ敵にあわないように進めるといいと思う。
    戦いの音と血の匂いで次の敵が来るのも困るし。
    戦いは避けられないとしても、5の敵が4になるだけでも違うかなと。

    怪我人を抱えて移動は出来ないから、少年たちは洞窟にいる可能性が高いと思う。
    洞窟の場所は地図にあるので、そこまでは静かに進んでいいね。
    声をあげて、敵を呼んでしまうのは避けたいな。

    けれど、万一、洞窟に少年たちがいなかった場合は、声をあげて周辺を探さないとな。
    例えば、捻挫部分が熱を持って、それを冷やすために仲間たちは水を取りに移動、捻挫した子は辛くて眠った。
    …なんて場合な。

    障害と言えば、地割れや崖崩れで進めなくなるなどの自然の障害って可能性も少しだけどあるか。
    その時は協力して超えればいいよな。自然の障害、ないといいな。

  • こんな時間に、仮ぷらんちゅー

    >ライト
    じゃあ、あたしもきちんと持ってこうっと

    >依頼人に挨拶
    ってことは、そこで御飯もらうことできるかなー?
    あたしが食べるんじゃなくて(でも、お腹空いた←
    救助者の人にあげるの
    普通のお菓子でもいいけど、出来たら食べ慣れたもの届けてあげたいなーって

    >武器
    あたしが「拘束:+10」の鞭で、パパが「スタン:近接攻撃時のみ+3」の両手銃にしてみた。
    銃の関係で、並び順は一番前か後かを希望しとくね
    今回、わりと遠距離系の人多そうだし

    >その過程における障害を全て排除
    帰りのこと考えると、行きに出来るだけ蹴散らしておいたほうが、あとで楽かなって気もするけど
    うーん、でも、数が分かんないからなあ
    障害の意味が道のりの障害物ってことも考えられるかな?
    行きでなるべくある程度道をならしておいたほうが、帰りが楽だとか?

    山のほうに行ったら、おーいおーいって声を出しながら探し回るのは、大丈夫かな?

  • [7]柳 大樹

    2015/07/03-23:12 

    おー。人増えてた。
    セイジくん達とセイリューさん達、よろしく。

    >帰りの先頭
    あー。人が来ないかもなー、って思って。
    発言したとき二組だけだったから、クロちゃん盾にしつつとか考えてた。
    今は人増えたし、帰りは別に先頭じゃなくてもいいよ。

    >トランス
    往復でどんだけ時間かかるか判らないし。
    俺も戦う事になったらトランスしようと思ってる。

    >敵
    行きは相手しないで進んでいいんじゃないかな。
    戦って時間掛かって、少年達が襲われたら洒落にならないし。

    ただ『その過程における障害を全て排除』って部分が気になってる。
    蹴散らしつつ進んだ方がいいのかなとか。

  • [6]アキ・セイジ

    2015/07/03-21:34 

    アキ・セイジだ。相棒はウイズのランス、よろしくな。


    敵は鼻が効くので、明かりがあってもなくても俺達は見付かる。
    なので足場の悪い夜の森で事故らないためにも、ちゃんと照らそうと思ってる。

    道中の並び順については俺達はどこでもいいので、とくに書かずにおくことにするよ。

    足をくじいた子の運搬も樹に任せるよ。
    けど、怪我人を背負った人が先頭というのは一寸…危険だと思うんだ。
    怪我人は真中がいいと思うよ。守れるし襲撃にも対応できるし。
    ということで、帰り道は樹さんではなくクラウディオさんの方が前になるのでいいかもな。
    それか、帰りは他のPCが前。

    残り2人の少年が疲労して歩くのがきつそうだった場合、俺達が背負おうと思ってる。
    元気に歩いてくれたら助かるんだけど、丸1日山中で逃亡し続けていたら、挫いてなくても衰弱するから念の為、な。

  • まだ全然まとまってないけど、思い付いたことだけー

    >ライト
    せめて灯りを広げすぎないようにするぐらいしか、今んとこ方法が思い付かないや

    >敵
    なるべく相手にしないで、逃げたほうがいい?
    まともに相手してると、キリがなさそうだし、帰りはそれどころじゃないだろうし
    せめてデミだけでも…と思ったけど、暗いし急いでるしで、すぐには見分け付かなさそう

    >トランス
    たぶん、最初からしないほうがいいよね
    戦うことになったらぐらい?

    >行きはなるべく急いで、帰りは慎重に
    きっとそんなかんじになるよね

  • セイリュー・グラシアとLBのラキアだ。
    見知った顔ぶればかりで心強いぜ。
    大樹さん達とはアド系任務、7カ月ぶり!
    色々と頼りにしているぜ。

    オレ達の行動基本方針:
    ラキアは怪我した子供達を治療したいと思っている。
    持って行くスキルは検討中。
    オレはディスペンサだな。
    トランス持続時間の関係でハイトランス使う訳にはいかないから。
    オレが前衛、ラキアが防御回復担当という方向で。

    マグナライト:
    オレ達も持っている。
    夜の山は本当に真っ暗だ。
    だからライトをつけないと山の中を歩く事もままならない。、
    灯りを消したからと言って敵に見つからない、という事もないので
    自分達の移動の時にはライト付ける方がいいと思うんだ。
    ただし、現実問題として
    『灯りを持ったまま魔物と戦闘』
    は色々と厳しいと思うので、敵の対処をどうしようか悩む所だ。

    とりあえず今考えた事はこれだけ。
    他の事はまた考える。

  • [3]柳 大樹

    2015/07/02-21:22 

    アイオライトちゃんと、白露さん久しぶりー。(ひらひら右手を振る
    今回はよろしく頼むよ。

    >マグナライト
    敵が寄って来るかも知れないのは確かにあるよね。
    暗い中で急ぐにも限度があるし。
    急がば回れー、とは、また意味違うけど。そんな感じで。

    >少年
    今のメンバーだと、足を挫いた子は俺が背負う方がいいかな。
    連絡の後に怪我した子が増えてないといいけど。

    >行きと帰り
    とりあえずどっちも先頭を希望しとく。
    行きはなるべく急いで、帰りは慎重にって感じで良いのかな?

    >スキル
    クロちゃんは、『双葉二式』と。
    影攻撃したら追加で威力の上がる『影法師』の予定。
    どこも開けてないみたいだし、とりあえず攻撃力上げる方向。

    >敵
    クマ: 洞窟にいそう。いや、途中で出くわす可能性もあるけど。
    ウルフ:こっちは森にいそうだけど、洞窟から出るときにも要注意かな。

    どっちにしろ、敵が出たらクロちゃんに前衛勤めて貰うつもりでいるよ。

  • 挨拶遅れちゃったけど、こんにちはー。
    アイオライト・セプテンバーとパパだよ-。

    あたしもマグナライト持ってるよ。
    ライト光らせてるとデミとかにも気付かれそうだけど、しようがないかな。
    行きも帰りもパターン考えないとだよねー。

    とりあえず、こんだけ。あとでもうちょっと考えて書くね。

  • [1]柳 大樹

    2015/07/01-21:39 

    柳大樹でーす。まだ誰もいないね。
    契約した精霊は、シノビのクラウディオ。
    ご一緒する人らはよろしくー。

    んーと。
    要救助対象が少年3人。内1人が足を挫いてる、と。
    帰りは誰か運んだ方がいいのかな。

    夜で山ん中。しかも森までありかあ。
    俺が一応マグナライト持ってるから、持ってくつもりでいるよ。

    立ち入り禁止なら、人が入ってないから足場は悪いかな。要注意、っと。

    とりあえず思いついたことだけ書いた。
    またなんか浮かんだら書き込むよ。


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