


窓の向こうは、雨の世界。
雲が太陽を隠し、雨を降らせるだけで街は表情を変える。
そう、普段知るタブロスではないかのように。
いつ止むか分からない雨は、窓の向こうで等しく地を濡らす。
『あなた』は、今ひとりだ。
休日、何か目的があって外に出ていたかそうでないかは『あなた』次第になるが、『あなた』の隣にはパートナーがいなかった。
途中、雨が降ってきて、このカフェに避難を余儀なくされ、今に至る。
メニューを広げ、何を頼もうか思案するものの、ひとりの今は何を頼むか相談する相手がいない。
ウィンクルムになって、隣にパートナーがいるというのが当たり前に思っている?
改めて認識したような気がして、あなたは苦笑をひとつ、零す。
何を頼むか決めたものの、パートナーだったら何を頼むだろう、なんて想像もしたりして、ゆっくり目を閉じた。
ざあざあ ざあざあ
ざあざあ ざあざあ
窓の外から聞こえる雨音が、感傷を呼び起こす。
当たり前になっているパートナーは、迎えに来てくれるだろうか?
迎えに来てくれるかもしれないし、来てくれないかもしれない。
来てくれたら───嬉しいのに。
ざあざあ ざあざあ
ざあざあ ざあざあ
『あなた』は、緩やかに時を過ごす。
その『時』を待つように。
待つのは、雨上がりか迎えに来てくれるパートナーか、それとも───


●出来ること(いずれか1つまで)
ア:神人を迎えに行く
イ:精霊を迎えに行く
連絡を受けてカフェに行くか、或いは連絡の前に雨のタブロスへ捜しに出ていたか。
或いは喧嘩なんかして、連絡を貰えてないけど捜しに行くか。
迎えに行くシチュエーションは自由です。
●カフェのメニュー
ホットコーヒー 40jr
アイスコーヒー 40jr
紅茶(ポット) 50jr
アイスティー 40jr
ハーブティー 40jr
パンケーキ 60jr
フルーツパフェ 70jr
本日のケーキ 50jr
ケーキセット(飲み物+本日のケーキ) 80jr~90jr(紅茶(ポット)のみ)
●その他
・店内には他の参加者もおりますが、それぞれの時間を過ごしている状態です。
・相手を想って待つ、迎えに行くのがメインとなり、帰宅後の描写はありません。
・深刻な被害を受ける前にカフェへ避難し、カフェからタオルも借りることが出来たので、再会時点で待っている側が濡れて風邪を引きそうだという状況ではありません。
はじめまして、真名木風由と申します。
女性側で既にエピソードを公開させていただきましたが、こちらでも皆様のらぶてぃめライフをお支え出来るよう力を尽くしたいと思いますので、よろしくお願いします。
雨で避難したカフェ。
ひとりでパートナーをどのように想うでしょうか。
喧嘩で飛び出してきたならばその時を想うかも知れませんし、改めて隣にいる当たり前や当たり前と思うようになった過程を思い返してもいいかもしれませんね。
パートナーを迎えに行く方もカフェへ向かう過程を大切にされてみてはいかがでしょうか。
お2人にとって、素敵な午後になれば幸いです。
それでは、お待ちしております。


◆アクション・プラン
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
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イ⇒ランスを迎えに行く ◆ 洋昼食を広げた所で電話が鳴った 今日は2部のシフトだっけ? ああ、そういえば雨が降ってるな 俺?今から昼御飯かな あー、傘忘れたのか(苦笑 この季節に鞄に傘くらいいれておけよと内心思うけど、 好きで忘れていく人なんて居ないのも分かってるので 「いいよ、どこのカフェだ?」 ◆ 仕事で疲れたあいつを早く家に迎えてやりたいから急いで用意 車を走らせるよ こんな時間までかかるなんて滅多に無いからな ホスト的には残業じゃんこれ? きっと疲れてる だから転寝中のランスを見たら静かに前に座って起きるのを待つ 起こすのが忍びなくて あと、寝顔が可愛くて 店員には指差して無音でコーヒーを頼むさ うん? 今来たところだよ(にこ |
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イ:精霊を迎えに行く 仕事の打ち合わせに出掛けたゼクの帰宅予定時間は過ぎて 連絡も無し 大雨 傘は玄関脇の定位置に確認 慌てて出て行ったから珍しく傘忘れたかにゃー ざまみよー、と普段なら放っておくんだけど たしか今日の行き先はあっちだから最短ルートはあの道で うーんうーん……よし! 心優しい神人様が情けない精霊を救いに来てやったぞー! 有難く思いたまえよ? さあキミは何を注文したんだい……ってコーヒーだけ? それで? 気になってたメニューはどれ? はいはい、店員さーん 『フルーツパフェ』と『ケーキセット』。紅茶で! ケーキは二口ぐらいなら進呈してあげよう。 パフェのフルーツごっそり貰うけど。 どうしたのゼク。全部食べちゃうよ? |
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ア:神人を迎えに行く キャットフードが安かったからさ。 買いに出かけたら、降られた! ラキアの言う通り傘を持つべきだったか。 オレ的には、雨は降らないと思ったんだけどなぁ。 オレが外出している間は持ってくれるだろうと! まあいいや、ラキアに電話したし。 ケーキセット(紅茶ポット)頼んで、ラキアを待つぜ。 待っている間、スマフォでウチの猫達の写真を幾つも眺めて頬を緩めている。可愛いなぁ。 美味しいご飯を持って帰るからね、待っているんだよ。 むむっ! 本日のケーキがウマい! 雨宿りで飛び込んだカフェだがこれは当たりだ! ラキアにもぜひケーキセット食べさせなきゃ。 勿論オレの奢りで!感謝の気持ちさ。 ラキア、早く来ないかなぁ。 |
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イ:精霊を迎えに行く 空模様の怪しさに急ぎ足で学校から帰宅 同居してるアパートにフィンは居なくて 冷蔵庫の中身が少ないから夕食の材料を買いに行ったのかも 窓の外、降りだした雨に玄関にフィンの傘が残っている事を確認 急いで着替えて、傘を持って飛び出した いつもの商店街に行っているのなら、見つけられる筈 早く早く 急かす心の声に気付けば走り出し 濡れて風邪でも引かれたら… 独り雨に打たれるフィンを想像したら…胸が傷んだ 商店街の喫茶店の中、フィンの姿を見つけて安堵 良かった、雨宿りしてたのか 気付いて手を振ってくるフィンに気恥ずかしくなりながら店内へ 傘、持ってないと思ったから…迎えに来た そうだな、少し休憩していくか 微笑む |
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【ア】 おや、雨ですね… そしてこんな所に、千亞さんが気になると言っていたカフェが…! 奇遇ですね、ふふ 雨宿りしましょう ●紅茶を注文 …美味しいです(うっとり) これは千亞さんに強くオススメを…おや。 (丁度千亞からメール) 『千亞さんの気になっていたカフェにおります。 傘を忘れたので雨が止んだら帰ります。貴方のたまちゃん(はあと)』 ★しばし思案 (千亞さんは私の記憶を取り戻したいようですが… 私は、むしろ何故記憶を失くしたのか? そちらの方が気になります、ね) おや、千亞さん?(驚き) …ふふ。ありがとうございます。 カフェで待てば千亞さんが来てくださるならば 私は一生傘を持ち歩かないことにしましょう、ふ、ふふ…! |
●気遣いは空気を伝って
アキ・セイジが、昼食を広げた所で携帯電話が鳴った。
表示されている電話番号は、ヴェルトール・ランスのもの。
『セイジ、迎えに来て欲しいけど……ダメ?』
窓の外を見れば、雨が降っている。
確か、午後から雨が降るという話だった。
「傘、忘れたのか?」
『時間があったらで、いいんだけど……』
「大丈夫だ。昼食前だったし。……今、どこにいる?」
ヴェルトールから、住所が告げられる。
メモをした後、周辺地図で最寄の駐車場を確認。
(季節的に折り畳み傘位鞄に入れておけばいいのに。いや、傘を忘れた客に渡してそうだ)
ありえそうな想像に苦笑を零す。
彼は、ホスト。
シフトを考えれば、きっと疲れてる。
仕事で疲れてるだろうから、早く迎えに行こう。
急がなくていい。
ランスはそう言ったが……俺は、早く迎えに行きたい。
(セイジ、昼食前って言ってた)
悪いことしたかな、とヴェルトールは窓の向こうの雨を見て罪悪感。
注文は、ミックスベリーのタルトと白桃のヨーグルトケーキ。そしてホットコーヒー。
「美味しい……」
ケーキを口に運び、ほんわりしていると眠気が襲ってくる。
何か食べていないと、起きて待っていられない。
(寝ないように食べないと……)
あ、でも。
(セイジの分の1個は残して……おか……ない、と……)
ヴェルトールの意識は、そこで途切れた。
夢を見てるのかな。
セイジが、ずっとそこにいる。
「……やっぱり、疲れてたか」
近くの駐車場に車を停め、急いでやってきたアキは、テーブルに突っ伏して眠っているヴェルトールの寝顔を見る。
電話してきた時間を考えれば、いつもより遅く店を出たと分かる。
滅多にないことだと思うが、今日は残業でもしたのか?
起こして尋ねるのは忍びなくて、アキはヴェルトールの向かいの席へ座った。
(惜しげもなく、可愛い寝顔を晒して……)
アキは苦笑を零し、手招きで店員を呼ぶ。
寝ているヴェルトールに気づいていたのだろう、店員も配慮するように近づいてきた。
メニューを指し示し、ホットコーヒーを注文。
すると、店員が筆談で幾つか尋ねてきたので、アキはそれに返答をした。
会釈して店員が去っていくと、アキは被っていたワークキャップでヴェルトールの顔を隠す。
(見せたい訳じゃない)
「ん……」
暫くして、ワークキャップが動いた。
「え!? セイジ、いつの間に!?」
「今来たとこだよ」
驚くヴェルトールへアキは微笑を向ける。
(多分……違う)
ヴェルトールは何となく、そう思う。
きっと、起きるまで待っていてくれた。
「ありがとう、セイジ」
「お疲れ様、ランス」
ヴェルトールがワークキャップを差し出してそう言うと、アキは労いの言葉を掛けてくる。
「今日は残業だったか? 店が忙しかったとか」
「仕事自体はまったりって感じだったかな。あと、同僚の相談に乗ったりしてた」
アキの問いに、ヴェルトールが遅かった理由を話す。
ヴェルトールは、トップのホストのような高い接客技術を持っている訳ではない。
が、話し上手の聞き上手に加え、子供好きという一面は客にとって馴染みやすく、音楽やダンスにも明るいということもあり、接客技術をカバーしていた。
自身が相談することもあるが、こうして相談を受けることもある。
お互い、持ちつ持たれつという訳だ。
「なら、尚のことお疲れ様だな」
アキの言葉がヴェルトールには嬉しい。
褒めてくれるから、頑張れる。
「ケーキ、食べないのか?」
「食べる!」
アキに問われ、ヴェルトールは残っていたケーキに目を移す。
「俺にも少しくれないか?」
「勿論!」
察してくれたかのように言われ、ヴェルトールはアキに笑った。
疲れてるからか、ケーキはいつもより美味しく感じる。
「あと、家に帰ったら、ご飯だな。ランスと一緒に食べる方がずっと美味しい」
(やば……嬉しい)
昼食をお預けにしちゃった心配は、その言葉だけで吹き飛んだ。
やがて、アキの好みを反映したホットコーヒーがやってくる。
●当たり前の日常
「だから、言ったのに」
ラキア・ジェイドバインは、窓の向こうを見て苦笑を零す。
風が雨の匂いを運んできているから、傘忘れないでねと忠告したのに話半分に聞いてるから。
セイリュー・グラシアは、今頃何を思っているのやら。
「ヘーキヘーキ、と思ってそうではあるけどね?」
足元に擦り寄る愛猫達に声を掛けた所で、ラキアの携帯電話が鳴った。
言うまでもなく、セイリューからの電話だ。
雨宿りしているカフェの居場所を聞き、ラキアは電話を切る。
「セイリューが雨に降られて帰れなくなっちゃったんだって。お迎えに行ってくるね。君達のご飯持って帰ってくるから」
支度を整えたラキアは、出掛ける気配を察して纏わりつく愛猫達の頭を撫でる。
「きっと君達と早く遊びたくて、カフェでうずうずしているよ。……写真見て、デレデレしているかもしれないけど」
いや、多分デレデレの方かな。
ラキアは口の中で呟き、戸締り最終確認。
「良い子で、お留守番していてね」
だから、部屋の中で大運動会はしないでね。
玄関で見送る愛猫達に告げて、いってきます。
まったくもう。
君は仕方ない人。
電話向こうの君の声が明るいから、結局許してしまう。
ラキアへ連絡を終えたセイリューは、待ち受け画面に表示されている愛猫達をじっと見た。
黒猫のクロウリー、茶虎猫のトラヴァース。
まだまだ遊びたい盛りの男の子達。
一緒に遊ぶ時間は、至福以外の何者でもない。
「ウチの子は、世界一可愛いなぁ」
この子達の為なら、キャットフードの特売を逃すものか。
無事に確保した後で雨に降られているから、帰るだけなのだけど。
(オレ的には、帰宅まで雨は待ってくれると思ったんだけど、ラキアが来てくれるし、いいや)
傘を持つべきだったかという後悔も何のその、セイリューはラキアを待つ楽しみへ変えることにした。
「美味しいご飯を持って帰るからね。待っているんだよ」
もう1度、待ち受け画面を見る。
頬が緩んだって、構わない。
だって、ウチの子世界一だし。
家に帰ったら、待っているあの子達にただいまを言おう。
それから、ラキアにありがとうって。
「むむっ! ウマい!」
セイリューは、本日のケーキの中からサクランボのクラフティを選んで食べていた。
合うように淹れられた紅茶も薫り高くて、パックで淹れる紅茶なんて目じゃなくて。
紅茶ってこんなに凄いのか、と感心してしまう。
サクランボが沢山使われているクラフティも程よい甘さ、サクランボってこんなに美味しかったっけと思うレベルだ。
「雨宿りで飛び込んだカフェだが、これは当たりだ!」
ラキアにも食べさせたい。
迎えに来てくれるのなら、感謝の気持ちでご馳走しないと!
「早く来ないかなぁ」
「……お待たせ」
セイリューの独り言にラキアの返答が重なる。
見上げれば、ラキアが立っていた。
ラキアが思ったよりも早く来てくれたことに、セイリューが笑みを浮かべる。
「だから、傘を持って行ってと言ったのに」
「や、案外持って行かなくて正解だった」
セイリューがラキアに笑う。
美味しいカフェを見つけたし、ラキアが迎えに来てくれた。
傘を持って出掛けていたら、美味しいカフェも見つけていないし、ラキアも迎えに来てくれなかった。
だから、今日は持って行かなくて正解。
「セイリューらしいと言うか……」
「ラキア、座れよ。ここの紅茶もケーキもウマい! ご馳走するぜ?」
らしいと苦笑するラキアへセイリューが促す。
セイリューの向かいに座ったラキアは、セイリューのサクランボのクラフティがまだ半分残っていることに気づく。
「そのケーキなら、ご馳走されたいな」
「……ったく」
微笑むラキアに笑みを返し、セイリューは自身のサクランボのクラフティをラキアへ。
一緒にいるから、それも自然な行為。
こういう当たり前も、悪くない。
「食べ終わったら、帰らないとね。……あの子達の大運動会が始まる前に」
「ティッシュとか、無事だといいな」
こんな話題も、いつものこと!
●悪戯なお見通し
ゼク=ファルは、小さく溜め息を零した。
(降ると聞いていたのに、傘を忘れるとは)
出掛ける直前に起床した柊崎 直香の食事を支度しなければならなかった為、余裕を持って外出といかなかった所為だろう。
雨脚が強いのもあるが、ずっと軒先を借りる訳にもいかないとカフェへ入り、ホットコーヒーを注文。
久々のひとりであった為、オーダーに迷ったのはここだけの話。
(いつ止むか……)
ちなみに、直香の迎えには期待していない。
傘を忘れた事実にほくそ笑む想像は容易に出来るが、迎えに来る想像は出来ない。
(それ以前に傘を忘れて出掛けたと気づけばいいが)
さて、どうしようか。
窓の外の雨は、いつ弱くなる?
一方、直香は、時計と窓の外を見比べていた。
ゼクが告げていた帰宅予定時間は経過している。
連絡もなく帰宅予定時間に帰宅しない。
外は大雨、玄関脇の定位置にはゼクの傘。
考察するまでもなく、答えはひとつ。
「慌てて出て行ったから、珍しく傘忘れたかにゃー」
出掛ける前なのに、起床した自分の為に食事を作ったゼク。
あの仏頂面に、運も存外そっけない。
自分だったら帰宅まで雨が降らないと思うが、ゼクだから仕方ない(理不尽)
「ざまみよー、と普段なら放って置くんだけど……」
直香はそう言いつつ、ゼクの行き先とそこへの最短ルートを頭に思い浮かべ、うんうん考える。
そのルートに何があるかも頭に思い浮かべたら───
「……よし!」
直香は、『心優しく』『情けない』ゼクを迎えに行くことにした。
さて、キミはそこにいる?
雨宿りもしないなんて言わないでね?
直香がカフェの店内へ入ると、ゼクがこちらへ顔を向ける。
座っていた席の、すぐ傍の窓ガラスを叩いたから、気づかなかったなんて言わせない。
「心優しい神人様が情けない精霊を救いに来てやったぞー! ……ありがたく思いたまえよ?」
ゼクは、いつもの仏頂面で直香の口上を聞いている。
漏れたのは、溜め息。
「そもそも傘忘れたのは、お前が中々起きなかった所為だし」
「人の所為にするのは良くないね。連絡をしてこない薄情なゼクの為にこうして来てやったのに」
「俺がこの場所で雨宿りしてると予想したからだろ」
ゼクが直香の言い分を聞き流すと、直香は「つまんないこと言うねー」と応じてくれない不満を口にしてゼクの向かいの席へ座った。
「ホットコーヒー以外頼んでないの?」
「……ああ」
「本当に、ホットコーヒーだけ?」
直香がテーブルの上を確認するが、ホットコーヒー以外を頼んだ形跡がない。
にんまりとした笑みが直香の口元に浮かぶ。
「それで? 気になってたメニューはどれ?」
「メ、メニュー? ……ケーキとパフェで少々悩んだが」
直香にメニューを渡しつつ、ゼクは突然何を聞くのだろうと思った。
彼の性格を考慮すれば、取られる行動は予想つきそうな気がしないでもないが、ゼクは天然属性とも仲良しなのだ。
「はいはい、店員さーん!」
分かっていないゼクの前で、直香が店員を呼んだ。
オーダーを取りに来た店員へ、直香がメニューを指し示す。
「フルーツパフェとケーキセット。紅茶で!」
ゼクは、俺と契約した神人様はこういう奴だったと心の中で呟いた。
やがて、直香の前にケーキセットとフルーツパフェが運ばれてくる。
選んだ本日のケーキは、サクランボのクラフティ。
紅茶も、サクランボのクラフティに合うように淹れられている。
フルーツパフェはこの季節ならではのものが色鮮やかに並び、生クリームだけでなく、アイスや数種のソルベが層を成し、見た目の綺麗さと美味が一致すると想像するのは簡単だ。
「美味しそうー。ゼク、パフェは譲らないけど、ケーキは二口位なら進呈してあげよう。僕って優しー!」
(何もかもお見通しってことじゃねぇか)
アイスがある為、最初はフルーツパフェを攻略しに掛かる直香を前にゼクは軽く溜め息。
「溜め息なんてどうしたの、ゼク。全部食べちゃっていいの?」
さて、ゼクは何と答えたでしょう?
●どこにいても見つける
蒼崎 海十は、アパートのドアを開けた。
「フィン?」
フィン・ブラーシュの名を呼ぶも返答はない。
部屋の中を見る限り、フィンが家を空けてから時間はそこそこ経過しているようだ。
(雨降りそうなのに……)
海十は、どこに行ったのだろうと溜め息。
何か飲み物はないかと冷蔵庫を開けて、フィンが外出した理由を知った。
(夕飯の買い物から帰ってくる前に帰って来ればいいんだけど……)
が、雨音が外に響き始める。
学校からの帰宅を急いで良かったと思うも、フィンは傘を持って出かけて行ったか慌てて確認してみれば。
「フィン、待ってろよ」
着替え終わった海十は、傘を手に家を出る。
どうか、濡れずに。
雨がフィンの心までも凍えさせたりしないよう。
「まだ止まないな」
海十が家を出る頃、フィンは困ったように窓の外を見つめていた。
幸い、自分も買った物も被害は軽微、店の厚意で借りたタオルと注文したホットコーヒーのお陰で風邪に発展するということはないだろう。
海十が学校へ行っている間にと仕事をしていたものの、冷蔵庫の中身が残り僅かだったことを思い出し、慌てて出たのが1時間前。
天気予報を見ておけば良かったと後悔しても、時間は巻き戻せない。
「海十が帰ってきたら心配するだろうし、雨脚が弱まったら走って帰るかな……」
そうすれば、夕飯の材料が致命傷を負うこともない。
早く帰って、海十の為の夕飯を作りたい。
雨脚が弱まるタイミングを逃さないよう注意しつつ、ホットコーヒーを更に一口。
(美味しいコーヒーだな……。豆から挽いてるみたいだし、好みに淹れてくれたみたいだし)
注文の時に少し聞かれた質問が、こういう形で表れる配慮が凄いと思う。
好み。
フィンは、今朝のコーヒーの味を思い出す。
『コーヒーなら、俺が淹れる』
朝は凄く弱い海十が、朝食の支度中にキッチンへ姿を現したことには驚いた。
最近、海十はお茶やコーヒーを淹れてくれる。
(ここの店のものとは比べ物にならないだろうけど……)
俺にとっては、最高の味。
早く雨脚弱まらないかな。
早く帰りたい。
「フィン……」
海十は、カフェの窓際の席にフィンの姿を見つけた。
窓の向こうのフィンは、ビックリした表情でこちらを見つめていたが、やがて嬉しそうな笑顔で手を振ってくる。
(雨宿りしてたのか……)
早くフィンを迎えにという心の声に急かされるまま走り出し、息はすっかり弾んでいたが、海十は呼吸を整える間もなくカフェへ入る。
安堵している自分を自覚したのと、フィンが嬉しそうな笑顔で手を振る状況が気恥ずかしかった。
「……走ってきたの?」
「傘、持ってないと思ったから……」
海十がフィンの席へ向かうと、フィンは自分を見て問いかけてくる。
息は弾んでいるし、傘を差すのも惜しくて走ったから濡れていて、察すること自体は難しくない。
(独りで雨に打たれる姿、見たくなくて)
そう思うのは、彼の口から聞いた彼の過去が過去だからだろう。
カフェの中でのんびりコーヒーを飲んでいたみたいだから、想像のまま終わって良かったと思う。
「迎えに来てくれて、ありがとう」
迎えと察してくれたカフェの店長が持ってきてくれたタオルを受け取り、フィンは海十の濡れた髪を拭き始める。
「ちょっと驚いたんだよ」
「何が?」
「海十のことを考えていたら、本人が窓の向こうにいるからさ」
願いが通じたのかな。
フィンの言葉は明るい陽気の中に隠しきれない嬉しさがある。
「少し休憩したら、家に帰ろう?」
「ああ、帰ろう」
フィンの言葉に海十は微笑んだ。
いつもの道。
傘を並べて2人で歩く。
フィンが買った夕飯の材料を手分けして持って。
交わす言葉は、いつもと同じ。
今日は、特別じゃない。
当たり前に過ぎる、愛しくて大切な日。
「風邪に気をつけてね、海十」
「フィンこそ」
雨の中の独りぼっちは、ここにはいない。
どこにいたって、必ず見つける。
それが、共に幸せを探すということ。
●雨と私と彼のひと時
最高の飲み頃で出された紅茶を口に運び、明智珠樹はうっとりと呟いた。
「……美味しいです」
空から雨が降り出した時、視界に入ったのは千亞が気になると言っていたカフェ。
奇遇と笑みを零して雨宿りに入れば、雰囲気のある内装と静かに寛げるよう配慮された音楽が流れている。
「これは千亞さんに強くオススメを……おや」
噂をすれば、何とやら。
手に取った携帯電話にはその千亞からのメール受信が表示されていた。
ざあざあ ざあざあ
ざあざあ ざあざあ
「……珠樹の奴ぅ」
千亞が、呆れた声を上げた。
雨が降るとは思っていなかったと慌てて学校から帰ってみれば、珠樹の姿がない。
心配し、現在の居場所と傘の有無をメールしてみたのだ。
すると、程なく返信が来た。
『千亞さんの気になっていたカフェにおります。
傘を忘れたので雨が止んだら帰ります。あなたのたまちゃん(はあと)』
心配してコレかと呆れるが、平常運行だと言い聞かせる。
「いつ止むか分からないし……傘、持って行ってやるか」
きっと、喜ばせるだけなんだろうけど。
いつもの調子で、優雅に紅茶を飲んでいそうだけど。
でも。
(雨が珠樹をどうこう出来るとは思えないけど)
行方不明の兄に似ているからか、そう思った。
ただし、行方不明の兄は、ド変態ではない。
常識人であって、ド変態ではない。
大事だから、強調しておく。
ざあざあ ざあざあ
ざあざあ ざあざあ
雨の向こうを眺める珠樹はふと、呟く。
「雨には雨の趣きもございますね……。濡れて震える小鳥を暖める(意味深)シチュエーションも雨でなくては出来ませんね……ふふ!」
絵になるのに、口にしていることがド変態なのが残念でならない。
自覚していても、いや、自覚しているから、想像待ったなし。
「千亞さんとの交換日記に記さねばなりませんね、ふふ……!」
そこで、沈黙する。
交換日記の切っ掛けが、彼に思案する沈黙を与えたのかもしれない。
気づけば、薔薇園で倒れていた───珠樹は現在の自分の最初の記憶を、千亞へそう語っている。
(千亞さんは私の記憶を取り戻したいようですが……私は、寧ろ何故記憶を失くしたのか? そちらの方が気になります、ね)
記憶を無くす何かが、自分にはあったのだろうか?
手繰り寄せようとしても、過去のひとつも手繰り寄せられない。
だから、千亞は取り戻したいと願っているのだろうが……。
(他人事のように言ったら、千亞さんは怒るでしょうね)
ざあざあ ざあざあ
ざあざあ ざあざあ
「あ、いた。……?」
千亞は珍しく物憂げな表情の珠樹に気づき、足を止めた。
黙っていればそれなりに見えるのに、頭の中はノンストップ妄想。
考えている内容はともかく、いつもの表情の方が『らしい』と思うから、わざと靴音高く歩み寄る。
音に気づいた珠樹が、驚いたように「千亞さん?」と顔を向けてきた。
「……ふふ。ありがとうございます」
「べ、別におまえの為に来たワケじゃないからなっ。カフェに来たかっただけだなっ」
千亞が素直になれず、そう言っても珠樹に通用しないことは分かっている。
通用してくれたら、苦労しない(色々な意味で)
「千亞さんがカフェならば来てくださると仰るなら、私は一生傘を持ち歩かないことにしましょう、ふ、ふふ……!」
「今日はたまたまだからなっ」
向かいに座った千亞が折角だからと自分も注文。
悩んだ末、ケーキセットを決めたものの、本日のケーキが複数あってここでも悩む。
最終的に珠樹お勧めの紅茶と白桃のヨーグルトケーキに決定、目の前に置かれると、その目がキラキラ輝いた。
「美味しい……!」
幸せそうな笑顔になった後、恥ずかしくてそっぽを向いた。
「……ケーキが美味しい店なら、行かないこともない、けど……でも」
舐めるように僕を見るな!
珠樹に言っても通じないけど。
ちらっと見た珠樹は、やっぱり微笑んでいて。
(分からない奴)
この雨の向こうに、彼の本心はあるのだろうか。
それは、誰にも分からない。
あなたを待った午後。
雨の向こうに、あなたを見たよ。
| 名前:明智珠樹 呼び名:珠樹、ド変態 |
名前:千亞 呼び名:千亞さん |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 真名木風由 |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | ハートフル |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | とても簡単 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 06月22日 |
| 出発日 | 06月28日 00:00 |
| 予定納品日 | 07月08日 |

2015/06/27-23:47
プラン提出完了。
2015/06/27-00:45
皆様こんばんは。ご機嫌いかがですか、お元気ですか。貴方の明智珠樹です。
隣におりますのは兎っ子の千亞さんです。
ふふ、精霊さん、神人さん、どちらがどのようにカフェで過ごすのか興味津々です…!!
皆様がどうか素敵な時間を過ごせますように…!
何卒よろしくお願いします、ふふ…!!
2015/06/27-00:36
2015/06/25-23:00
2015/06/25-00:22
2015/06/25-00:16
2015/06/25-00:16
2015/06/25-00:15

