【バレンタイン】雪月夜を明かす(あき缶 マスター)

プロローグ


●silver night
 タブロスは、その日とても寒かった。
 君たちは、『来光丘』からふもとの原っぱまでが真っ白な雪に覆われたと聞く。
 『来光丘』は、タブロス郊外にある丘だ。『来光丘』は正式名称ではなく、近隣住民が名づけた愛称である。
 建物のない見晴らしのいい原っぱに続いていて、名前の通り、日の出を見るのにうってつけの穴場だ。
 朝日が真っ白な雪に反射したらきっと綺麗だろう。
 君は、精霊と一緒に『来光丘』で夜を明かそうと思いつく。今夜は、ちょうどルーメンが満月だ。月光の下の雪もまた格別だろう。
 ルーメンの下、ウィンクルムしか見えないテネブラも見えるだろう。
 朝は遠い。長い時間の中でなら、自分たちしか見えない月を見て、いつもよりも勇気を出すことだってきっと……。

 そうと決まれば準備をしよう。
 ベンチなんて気のきいたものはないから、腰を下ろすならそれなりの準備も必要だ。
 月が明るい日とはいえ、ちょっとした灯りくらいはいるだろうか。
 ああ、雪が溶けていないのだから、とても寒いに違いない。
 丘の周りにお店はないので、防寒準備は万全にしておかないと風邪を引く。
 長い冬の夜を明かすなら、温かい飲み物も用意しておこう。夜食も用意すべきだろうか。――君の脳裏にチョコレートという単語が掠める。そういえば、そんな時期か……。

 ちょっとくらいは、はしゃいでしまうかも。でも、出来るだけ静かにそっと愛でよう。
 君は、夜の過ごし方をあれこれと思案する。その時間すら、楽しく。

解説

●概要
 タブロス郊外の『来光丘』で夜を過ごす。
 日没から日の出までを描写しますが、お好きなときに出入りしてください。
 いつごろ丘を訪れ、いつごろ帰るのかはプランに明記をお願いします。
 朝日を見ずに帰ってもOKです。

●『来光丘』について
 なにもない高く広い丘。東側は地平線が見えるため、朝日を見るにはもってこい。
 タブロス市街地の夜景は北側に見える。
 今は丘も原っぱも真っ白に雪化粧されている。
 売店やベンチなどの設備はまったくないので、お金はかからないが、事前準備は必須。
 動植物は、ほぼ居ない。

●天候
 快晴ゆえに、とても寒い。
 星が見えづらいくらいルーメンが明るい夜。
 『明るい月』ルーメンは満月、北の『見えない月』テネブラは紺色。

●バレンタイン
 バレンタイン企画のエピソードです。
 チョコレートを渡せた方には、後日精霊からお返しがあります。

●注意事項
 静かな夜を過ごす趣旨の企画です。雪遊びやケンカはほどほどに。
 当然ですが、未成年の飲酒喫煙は禁止です。

ゲームマスターより

はじめまして、あき缶です。
これからお世話になります、どうぞ宜しくお願いします。

ハピネスエピソード第一弾、これから長いお付き合いになる精霊と話し合ういい機会かもしれませんね。
それでは良い夜になりますように……。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

木之下若葉(アクア・グレイ)

  部屋の窓から月を眺める
これだけ綺麗な月ならば、明日もきっと晴れだろう
…ふと、この頃朝日なんて見て無いなぁなんて思ってしまったから

「ねえ、アクアー」
朝日を見たいとは思わない?なーんて

折りたたみの椅子を二脚
ご飯は家でしっかり食べて
コートを着て膝掛けに毛布
誰か寒い人が居たら貸してあげられるくらいの暖かい物を
これでもかって鞄につめていざお丘へ

歩く速度は相手に合わせて
大丈夫、月も朝日も逃げないから

丘に着いたら椅子を出して毛布にくるまって空を見上げる
他愛も無い話をして朝まで過ごそう

ああ、そうだ
外をふらふらしてた時バレンタインだと店の人に押され買ってしまったチョコレート
アクアに渡す機会があればいいのだけれど


スウィン(イルド)
  ■用意
保温機能付水筒(温かいチャイ入)
折りたたみ椅子2
毛布2
暖かい服装+マフラー

■予定
夕食を食べた後
夜中に丘にきて朝日を見て帰る


空いてる場所に椅子設置
それぞれ毛布に包まってチャイを飲み
月を見ながらお喋り

わざと夕食少なめにしてきたからイルド腹減るかね
夜食がないかきいてきたら
「これくらいしかないわね」ってさり気なく
シンプルなチョコを渡す
ミッションコンプリート?なんつって~

栗花落の所にシチューを貰いに行く
チョコを渡した時の「これしかない」
という言葉がなかったかのようにしれっと
おっさんはあれしか持ってなかったんだから
嘘じゃないでしょ?

お礼を言って戻り朝日を見る
満月も綺麗だったけど、朝日も綺麗ねぇ


大槻 一輝(ガロン・エンヴィニオ)
  ▼心情
さ・・・! 寒いんだが!
ぇ、仕事終わったし。明日休みだし、暇潰し何かないかなーって言ったは言ったけど!(毛布包まりながら

あったかくした方が良いとかそうゆうレベルじゃない気ががが!

■行動
天体観測・日の出を拝みに

毛布に包まりながらガロンが持ってきたトランクの上に腰かけてガロンの説明を聞いていく。

ああ、それはどっかで聞いたっけ。(とか相槌打ちつつ
どれ?  へー・・・良く知ってるなあ。

ガロンも楽しそうなら、まあ、良いか?
寒いけど、こうして知らないものを知るのは嫌いじゃないし

最後に持ってきた魔法瓶の水筒から
ホットココアを出して
はい、有難うな。俺の我儘に付き合わせたみたいだし。
寒かったけど。(差出


栗花落 雨佳(アルヴァード=ヴィスナー)
  ねぇ、月の絵が描きたいのだけど…付き合ってくれる?
それと、朝日がね、凄く綺麗なんだって
君と一緒に見たいなって、思って…

僕は絵を描き始めると周りが見えなくなって絵の世界に入り込んでしまうけども、気が付いて、いつも君が側に居ることに凄く安心するんだ


この絵は君に。僕の気持ちは絵でしか表現できないから…
それから、これも
カカオの精から貰ったチョコをトリュフにしてみたんだ
君に食べ物をあげるのはちょっと抵抗があるのだけど…貰ってくれる?

ほら、陽が昇るよ。…君と見られてよかった
今日は付き合ってくれてありがとう



小さめのカンバスと色鉛筆持参
絵を描いている最中は集中して精霊を放置して仕舞いがち
描いた絵とチョコを渡す


東雲 燈夜(テオドール=フェーエンベルガー)
  テオと星と日の出を見に来た
空気も澄んでいるだろうから煙草は吸わない
防寒にコートを着て、昼間に店で買ったシートを敷いて座って
寒いのは苦手だけど、偶には良いかなって
テオからスープを貰ってほっこり。

「テオそのスープどうしたんだ?貰ってきた?…サンキュ」

テオとはまだ付き合いが短いけど、これからも仲良く出来ればと考えてる
その気持ちを伝えたいから、柄にもなくチョコなんて作ってみた

「普通のカップチョコだけどな…受け取ってくれたら、嬉しい」

日の出を見ながら、これからも宜しくって、握手したいな

「改めて、これからも宜しくな。テオ」

返事に対して:
「……そんな事真顔でいうな恥ずかしからっ!」

変に男前なんだからったく


●来光丘へ行こう
 夜の帳はすっかりと下り、空気は深々と冷えてきていた。
 暖かな部屋の中から、外気との温度差で曇る窓をそっと手で拭う。
 クリアに外の景色が、眩しいほどのルーメンの月が、見えた。
 明日もきっと晴れるのだろう。ならば、朝日も雲に邪魔されることなく拝めるのではないだろうか。
 そう考えた木之下若葉は、背後のダイニングテーブルに座って食後のお茶を、ふうふう吹いて冷ましている精霊へ振り返った。
「ねえ、アクアー」
 十六歳にしては少しあどけないディアボロのアクア・グレイは、ぱっと神人に顔を向ける。
 きょとんとしている水色羊に、若葉は朗らかに持ちかける。
 朝日を見に行こう、と。
「はいっ!」
 元気よく手を挙げる。やはり少し十六にしては幼い仕草。
 若葉はうっすらと笑みを浮かべた。
「じゃあ、準備をしよう」
 窓枠に預けていた腰を上げ、若葉は外へ行く服装に着替えるべくクローゼットへ歩いて行く。
 アクアも急いでお茶を飲み干し、ぱたぱた軽い足音を立てながら、戸締まりや荷造りに精を出し始めた。
「ゆっくりでいいよ」
 転んでしまいそうなアクアに、若葉は優しく声をかける。
「大丈夫、月も朝日も逃げないから」

●銀世界の夜を過ごして
「えくしっ! ……さ……っ、寒いんだが!!」
 ぶるるっと身震いし、真っ白になった来光丘へ一番乗りしたのは、大槻一輝とガロン・エンヴィニオ。
「積雪していると言っただろう。防寒対策は確りと、と伝えておいたはずだが?」
 諭すように爽やかに言ってのけるガロンは、なるほど壮麗かつ重装備だ。寒さなど毛ほども感じていない様子。
「あったかくした方が良いとかそうゆうレベルじゃない気ががが!」
 丘の隅でがたがた震える一輝は、月光に反射する雪が眩しいのか目を細める。
 彼を見かねて、ガロンが荷物から毛布を取り出し、差し出した。素直に一輝は毛布を受け取って、ぎちぎちに体に巻き付ける。
「そもそも仕事終わり、休み前だから、何か暇の潰せるようなことはないかと持ちかけたのは……」
「いや、そうだけど! 暇つぶし何かないかなーって言ったは言ったけど! あったかい部屋の中のが……」
 まだ歯を鳴らしている一輝を尻目に、ガロンは悠々と望遠鏡を組み立てていく。
「部屋に籠もるばかりでは分からぬ事も多い。何、この時期の空というのは中々に綺麗なものだぞ」
「う~~……そうだけども……」
 一輝が上を見上げれば、眩しいくらいに輝くルーメン。その光のせいで、星はほとんど見えないが、真っ黒な空に黄金のルーメンが凛と輝く様は神秘的かつ荘厳だ。
 確かに綺麗だ。美しい。悪くはない。
「……寒いけど、こういうのは嫌いじゃないし。まぁ、良いか」
 一輝の横に腰掛け、冬の天体についてうんちくを語る精霊は楽しそうに見える。
 せっかく来たのだ。最後の朝日というイベントが終わる前に、帰るだなんてもったいない。
 そろそろ寒さに慣れてきた一輝は、白い息を吐きながら、雪と月を愛でることにした。

「おらー、飯食え」
 ずいっと差し出されたステンレス製マグから、コンソメとミルク、バターの香りがついた温かい空気が、栗花落 雨佳の鼻をくすぐった。
 食欲を励起する香りに、ハッと我に返った雨佳は鉛筆をカンバスから離し、マグを差し出す手の持ち主を見上げる。
「アル……ごめんね」
「別に。いいから食え。冷める」
 ぐいぐいとマグを突き出され、雨佳はマグを受け取って口をつける。熱々のはずの中身、クリームシチューは表面はぬるくなっていた。
「いただきます……」
 飲み下せば、冷えた口の中から喉、そして腹まで暖かさが通って行く。
 きちんとマグで食べることを想定し、根菜中心の具は小さく刻んである。コンソメよりも粘度の高いシチューは、表面こそ冷めても、中までは冷えにくく、冬空の下の夜食としてはちょうどいい。
「おいし……」
 思わず雨佳の顔がほころぶ。
 その様子を見て、満足気かつ尊大にアルヴァード=ヴィスナーは頷いた。当然、と言った具合だ。
 トラットリアのシェフたるアルヴァードが手ずから作ったシチューだ。まずいわけがない。
 シチューを口にして人心地ついた雨佳は、ふと己の耳を触って首を傾げる。
「あれ……?」
 もふっとした感触はイヤーマフ。此処に来た時にはつけていなかったはずなのに。
 イヤーマフだけではない。首にはぐるぐるとマフラーが、頭には帽子が。
「これ、全部アルが?」
 きょとんと見上げる雨佳に、アルヴァードはぶっきらぼうに吐き捨てるがごとく、答えた。
「風邪引くと大変だろ。着とけよ」
 細身……というよりも儚げでふとした瞬間に消えてしまいそうな雨佳の体は、あまり冷気には強くなさそうだ。
「ありがとう」
「それにしても、こんだけやっても気づかないとは相当だな」
 憎まれ口めいた心配の言葉に、雨佳は苦笑してうつむく。
「どうも僕は……絵を書き始めると入り込んでしまって……」
「……別に……」
 何か言いかけたアルヴァードに気づかず、雨佳はうつむいたまま続けた。
「でも、気がついたらいつも君が側にいる……。それが凄く安心するんだ」
 しれっと言われた恥ずかしい言葉に、アルヴァードの頬が紅潮する。
「っ……そ、そぉかよ……っ! 別に俺はっ」
 と照れ隠しに何やら言おうとしたアルヴァードだが、雨佳がまた絵の世界に没頭してしまっていることに気づき、脱力する。
「はぁ。雨佳ってそういうやつだよな」
 ため息を吐いて、アルヴァードはシチューを温めているテントへと戻る。
 すると、鍋の横に一人のマキナが立っていた。オールバックに、ヘッドホンのような耳の青年だ。ヘッドホンの差し色と同じ薄紫の瞳を真っ直ぐにアルヴァードに向けた青年は、丁寧に礼をした。
「なんだよ?」
「すまないが、そのシチューを分けて貰えないだろうか。俺の神人が寒がっていてな」
 なんだ、お仲間か……とアルヴァードはシチューの蓋を開けた。
「ありがとう。感謝する……」

●温かいもの、それは
「東雲」
 呼ばれて、コートの襟をきつく握って寒さに耐えていた東雲 燈夜は声の方を見た。
「テオ、そのスープどうしたんだ?」
 二つの湯気を立てるマグを持った燈夜の精霊、テオドール=フェーエンベルガーは、貰ってきたと答えながら、燈夜の隣まで歩いてくる。
 そして燈夜が腰を下ろしているマットシートに座り、マグを差し出した。
「はぁー。あったかいなー。……サンキュ」
 体の芯から温めてくれる、とろりとしたコクの有るシチューの旨さに、燈夜は目を細める。
「落ち着いたなら、良かった。東雲は寒いのは苦手か?」
「まぁ、な。あんまり得意じゃない。……でも、こういうのもたまにはいいと思ってるよ」
 月と雪は眩しい。昼というほどではないが、道中よりはよほど視界も確保されている。
「ああ、そうだ」
 しばらくどうでもいいような話を重ねていた燈夜は、ふと思い出したかのように荷物をゴソゴソと漁って、なにやら取り出した。
「普通のカップチョコだけどな……受け取ってくれたら、嬉しい」
「…………」
 無表情にじっとカップチョコの箱を見下ろしているテオドールに、燈夜は少し焦る。
「あ、いや、柄じゃないってのは判ってるんだけど、その……ほら、テオとはまだ付き合いが短いけど、これからも仲良く出来ればと俺は考えてる」
 その気持ちとしてカップチョコを作ったから、と言い訳めいた言葉を連ねようとしたが、テオドールは呆れていたのではなく、純粋にチョコレートを貰えるということに驚いていただけらしい。
「ありがとう……大事に食べる」
 ことさら丁寧な手つきで、チョコレートを受け取るテオドールに、燈夜は肩の力が抜けてしまった。
(……まさかチョコを貰えるとは思わなかった)
 テオドールは思わず緩みそうな口元を押さえる。
「はぁ、んじゃ、朝日を拝むまで待機としますか」
 と傾いていくルーメンを見上げる燈夜は、大きな任務が果たせたことに開放感すら覚えていた。

 クゥと小さな音が聞こえた気がして、スウィンは隣を見やった。
「イルド、腹減った?」
 小さく尋ねてみる。今日の夕飯は、夜明かしするには少なかったから、若いイルドは夜半空腹になるかもしれないと、予想していたとおりだ。
 素直に空腹だと訴えるほど子供ではないディアボロは、むうっと口を尖らせて、スウィンから顔を背ける。
「……なんか持ってるのかよ」
 しばらくあとで、ふてくされたように訊かれて、待っていましたとばかりにスウィンはチョコレートを取り出した。
「……こんだけかよ」
 夜食というよりも口を慰める程度のお菓子だ。イルドは若干不満気に、しかし素早くチョコレートを受け取って口の中に放り込んだ。
「これくらいしかないわね。あ、あと、チャイ~」
 まるでひみつ道具のように取り出した水筒から、暖かなチャイを注ぎ始めるスウィン。その仕草は楽しげだ。
(ミッションコンプリート? なんつって~)
 とても自然な形でチョコレートを手渡せた。
 残念なことに、イルドはその意味は分かっていないようだが、チョコレートを渡したという事実は揺るがない。
「何か機嫌よさそうだな?」
 と不思議そうなイルドに、スウィンは平然とチャイを渡す。
「間接キスにならなくて残念だった?」
 にやにやしながらのセリフ付きで。
 水筒のコップはきちんと二つ。確かにコップを共有はしない。
「何言ってやがんだ。そんな事思ってるわけないだろ!」
 イルドはむっとして、ひったくるようにチャイを取る。
(あーらら、まだツンデレ照れ照れ……にはならないか)
 まだスウィンが予想した反応を返すほど、イルドはスウィンに心を許してくれていないのか。
(ま、そのうち、そのうち……)
 二人はこれからずっと一緒にウィンクルムとして行動するのだ。徐々に仲を縮めていければいいだろう。
「さーて、シチューでも貰いに行きますか」
 スウィンは、そう言って立ち上がると、さっきから漂ってくる美味しそうな匂いの元であろうテントへ歩いて行く。
「おい、さっきこれしかないって言ってただろ!?」
 イルドの抗議めいた怒鳴り声に、しぃっと己の唇に人差し指を押し当て、スウィンはコケティッシュに笑う。
「おっさんはあれしか持ってなかったんだから、嘘じゃないでしょ~?」
 ひらひら手を振り、スウィンはシチューのテントへ今度こそ歩いて行った。

●日は東に月は西に
 ずっとルーメンの月は見えていた。アクアが幼少期を過ごした田舎でも、この街でも。
 でも、若葉と出会ってからは、もう一つ月が見える。ウィンクルムだけが目にできる、テネブラだ。
「不思議?」
 と手を伸ばしてアクアがくるまっている毛布を整えてくれる若葉が尋ねる。
 こくんと頷く精霊を、若葉は微笑ましげに笑った。
「俺も不思議だよ」
 そしてしばらく静寂。
 奥のほうで、他の誰かが叫ぶ声などがするが、すぐに雪が音を吸ったのか、耳が痛くなるほど静かだ。
「アークア」
 ふいに声をかけられ、アクアは神人のほうを見た。
「はい?」
「いつも頑張ってるで賞ー」
 ぽんと手渡される愛らしいパッケージのチョコレート菓子。
 若葉がバレンタインフェアをやっている菓子店の、情熱的な営業により購入してしまったチョコレートだ。
 買ってしまった、という顛末だが、もちろん渡す人のことを考えてきちんと選んだ。
 可愛い包装に、アクアの顔が輝く。
「わあ、こちらこそ!」
 とびっきりの笑顔でチョコレートを迎える少年に、若葉はチョコレートを買ってよかったと思うのだった。

「もうすぐ日の出だ」
 ガロンの声を聞いて一輝は、ルーメンを追って西ばかり見ていた視線を東へ向けると、確かに白んできている。
「そろそろ終わりかー。俺のわがままに付き合ってくれてありがとうな」
 とごそごそ一輝は魔法瓶を取り出した。
「これ、ココアだけど、貰ってくれよ」
 ガロンは、どうやらこの飲み物の意図を理解したらしい。ふっと口元をゆるめた。
「フム、頂こう」
 貰ってくれるということに、一輝は少なからずほっとしながら、ココアを注ぐ。
「楽しかったぜ、寒かったけど」
 言葉を添えて、彼の手に暖かなコップを握らせた。

 日が昇り始める。
 月よりも眩しく雪の丘を輝かせながら、圧倒的な赤い光が空を侵食していく。
「……な、立って」
 と呼びかけた燈夜は立ち上がると、テオドールに手を差し出した。
 テオドールも立ち上がり、差し出された手を見下ろす。
「改めて、これからも宜しくな。テオ」
 テオドールは頷いて、神人の手を握った。
「任せておけ、お前の事は俺が必ず守る」
 それが契約した者としての使命。大事な神人を守るという気持ちを改めて誓う。
「……そんな事真顔でいうな恥ずかしいからっ!」
 真っ赤な顔で怒鳴る燈夜が、なぜ恥ずかしがっているのか、いまいち分からずテオドールは不思議そうに朝日に照らされる燈夜を見つめていた。

 ようやく絵は完成したらしい。すっかりルーメンが消えてしまってから、雨佳は色鉛筆を置いた。
「お待たせ」
「よーやくかよ」
 確かに、月の絵を描きたいから付き合ってくれ、と誘われた話だったが、本当に絵を描いただけで終わってしまった。
 結局ほぼ、ただ二人で同じ空間に居ただけだった。
 それが嫌ではなかったのが、アルヴァードは不思議であった。
「この絵は君に。僕の気持ちは絵でしか表現できないから……」
 カンバスから外した月の絵を、雨佳はアルヴァードに差し出した。
「え」
 まさか自分のために熱心に絵を描いていたとは想像もしていなかったアルヴァードは、どぎまぎしながら絵を受け取る。
「……それから、これも」
 トリュフがきちりと詰められた箱を、雨佳は絵に添える。
「君に食べ物をあげるのはちょっと抵抗があるのだけど……貰ってくれる?」
 カカオの精に貰ったチョコレートを、雨佳が加工したのだ。
 料理の腕は断然アルヴァードのほうが上なので、あまり自信を持って渡せるものではなく、雨佳は羞恥に目を伏せる。
「俺に? ……ま、まぁ、悪くない」
 アルヴァードはますます予想外の展開に、普段の勢いは鳴りを潜めたかのように、素直にチョコレートを受け取った。
 空に先に光だけを届けていた太陽が、己自身を押し上げてくる。
「ほら、陽が昇るよ。この丘の朝日がね、凄く綺麗なんだって……」
 雨佳が指差す東を、アルヴァードも見る。
 太陽が上がりきるまで、二人は同じ方向を見て、黙って立っていた。
 朝日が、太陽と呼び名が変わった頃、ほうっと息を吐いて、雨佳はアルヴァードに向き直る。
「……君と見られてよかった。今日は付き合ってくれてありがとう」
「おう」

 まだ、少しぎこちないけれど、思い出を重ねて、重ねて、ウィンクルム達の仲は少しずつ縮まっていく。
 そう、毎日、日と月が昇り、そして沈むように。

「満月も綺麗だったけど、朝日も綺麗ねぇ」
 丘を下りながら、スウィンは独り事のように言い、蒼を取り戻していく空を見上げる。
 抜けるような晴天は、来光丘の雪を溶かしてしまうだろう。
 今宵限りの絶景だった、ということだ。
 空を見上げるスウィンを盗み見て、イルドは眉を寄せる。
(朝日に照らされるこいつも、結構……って何考えてんだ俺は!)
 ロマンチックな光景に、影響されすぎてしまっただろうか。
 ぶんぶんと首を振って、変な考えを吹き飛ばすイルドを、スウィンは呆れたように見守る。
「頭に虫でもついた?」
「ついてねーーーー!!!!」
 早朝のタブロスに、一番鶏よりも早い叫び声が響き渡った。



依頼結果:成功
MVP:なし

エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月16日
出発日 02月26日 00:00
納品日 03月07日

 

参加者

会議室

  • [6]スウィン

    2014/02/25-19:42 

    今日が最終日よね。プラン出し忘れないように注意よ~。

    栗花落のはスープじゃなくてシチューね、りょーかい。
    楽しくすごそうじゃないの♪

  • [5]東雲 燈夜

    2014/02/21-01:46 

    初めまして、そして今晩は。東雲燈夜と言います。よろしくお願いします

    俺はテオと一緒に丘に座って、星でも眺めながら朝日が出るまで居ようと思います
    チョコも…渡せたらいいな。
    もしかしたらテオが栗花落さんの所にシチュー貰いに行くかも…その時はよろしくお願いします。

  • [4]栗花落 雨佳

    2014/02/21-00:16 

    ふふ、思ったより皆さんと接点が出来そうで嬉しいです……いや、僕は絵を描くのに夢中になってて気が付かないかも知れませんが…。

    アルはシチューを作るそうですよ。仲良くしてあげて下さいね。

  • [3]スウィン

    2014/02/20-16:50 

    こんちは、おっさんはスウィンって~の。よろしくぅ。
    騒ぐのが好きなだけに、何して静かに過ごすかねぇ。
    あいつにチョコ渡すために頑張るってのも変な感じね~。

    夜中にきて朝日見て帰ろうかね。
    防寒はばっちりの予定よ。
    温かい飲み物飲みながら月を見て、あいつと喋って…
    折角だから栗花落のスープを貰いに行くかね?
    すぐに退散するから、後は存分にごゆっくり~♪

  • [2]木之下若葉

    2014/02/19-23:35 

    こんばんはー。木之下ですー

    今回は朝日を見ようって思いたったからね。防寒して夜中に丘に来ようと思ってるよー

    折りたたみの椅子持ちこんでー
    これでもか!ってアクアとラグやら毛布やらに包まって丘に居るつもりだから、
    思ったより寒過ぎて凍えそうな時は言って貰えれば毛布とか貸すからねー

    さーて。綺麗に朝日が見られればいいのだけれどー……

  • [1]栗花落 雨佳

    2014/02/19-00:12 

    こんばんは。栗花落雨佳と申します。

    ……僕は折角ですから、ルーメンとテネブラの絵を描こうかなと思っています。
    相方は寒いって文句言いそうですけども(苦笑)

    相方がキャンプ用の調理器具とか持ってくると思うので、暖かいスープとか作っているかも知れません。
    夜食として温かい物が振舞えると思うので、宜しかったらどうぞ。


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