異様な魔力を感知してアカザが駆けつけた時には、その辺境の村は無残にも壊滅していた。濃密な血臭と死臭に、アカザはくしゃりと端整な顔を歪めて口布を引き上げた。金狼族のアカザにとって、この臭いは強烈すぎた。 この惨状の原因はおそらくオーガだろう。自由傭兵として世界を旅するアカザは、何度も似たような光景を目にしたことがある。アカザは慎重に壊れた家屋を点検し、生存者を探した。 その時、甲高い悲鳴が聞こえた。次いで、爆発的な『力』の発現。 咄嗟に飛び込んだ家の中には、オーガの姿はどこにもなかった。代わりに血溜まりに伏した子供と、その両親だろう遺体が残されている。 そして、壁や天井までも飛び散っている何かの体液や肉塊…。 呆然とするアカザの耳が微かな音を捉えてピクリと動いた。 『お姉ちゃん』 死んでいるとばかり思っていた子供のうわ言に、アカザは大きく目を見開いた。
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