4月イベント『光と闇の復活祭』関連エピソード情報
(大吟醸 イラストレーター)
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◆関連エピソードプロローグ◆
それは突然だった。
天高く晴れたタブロスのA.R.O.A.本部の上空に、忽然と島が浮かんだのだ。
島の真ん中には、立派な一本の大樹がそびえていて、島の端から川が滝として流れおちては、空中で霧に変わっている。
だが、それが見えているのはウィンクルムだけらしい。ウィンクルムではないA.R.O.A.職員は、島など全く見えないという。
見えないが、こんなにも多くのウィンクルムが訴えるなら、天空の島は存在するのだろう。
職員たちは総出で古い文献をあさり、そして島が『フィヨルネイジャ』という名前であることを突き止めた。
フィヨルネイジャは、女神ジェンマの庭園だとされていて、彼女が選んだ者にのみ視認と来訪を許すのだそうだ。しかも、フィヨルネイジャは時空を回遊しており、一か月ほどで別の次元へと消えていくという。
「……とりあえず、悪いものじゃないということが判明してよかった……」
と一同がホッとしていたのもつかの間だった。
急にA.R.O.A.の関係者全員の脳内に、若い男の声が広がる。
「ウィンクルムと、それを支援する方々……。我らが主、ジェンマ様に愛された方々……。聞こえますか……?」
声は、電波状況の悪い無線のようにノイズが走り、弱々しい。
「私は、結界の天使ジュリアーノ。……オーガに支配され……ウィンクルムのいなくなってしまった、ギルティガルテンで、人々を護るべく遣わされました……」
ギルティガルテンといえば、アーサー王子隊がダンジョン『時計じかけのサナウン』の先に見つけた不気味な場所のことではないか。
「かつてはゴシックエリアと呼ばれたギルティガルテンは、二人の強大なギルティによって支配されています……。
故に此処には朝が来ず、生きとし生けるものは、死んでも尚この世から逃れることが出来ません」
ジュリアーノはギルティガルテンの現状について語りだす。
曰く、オーガの猛攻で主神ジェンマの教会も廃墟となり、半世紀前にウィンクルムも滅びた。
支配するギルティは強く、人々は怯え隠れ住み、生きるための物資にも事欠いている。
ウィンクルムのいない今、人々がオーガに対抗することが出来ぬギルティガルテンは、僅かな聖地以外のあらゆる場所でオーガが我が物顔で闊歩する。
死んだ者は、無念が晴れるまで永遠に幽霊となって彷徨い、昇天を許されない。
吸血鬼に血を吸われた者は吸血鬼の下僕に成り下がり、救うすべがない。
絶望に支配された地域だ。と。
「私は長きに渡り、オーガから、人々が住まうディルク砦を守っていました……。しかし、オーガの力は強く、日に日に力は弱まっていきます……。しかし、フィヨルネイジャがこの次元に現れたのは僥倖です。どうかフィヨルネイジャで復活祭を行い、加護の力を復活させて下さい……!!」
ジュリアーノは、ウィンクルム達に『復活祭』と呼ばれる儀式を行ってほしいと頼む。
フィヨルネイジャは、ウィンクルムの愛の力を卵のような『ピーサンカ』という結晶に変え、ジェンマの力を増幅することができるのだそうだ。
「愛の力を大量に結晶化すれば、教会や天使の力が復活するはずです……!」
どんどんジュリアーノの声は小さく、か細くなっていく。
「もう限界のようです……。お願いです……。私は、残り少ない力を振り絞り、人々を守ります……。どうか……力をお貸しください……どうか、どうか……」
懇願しながら、すうっと消えていった声。
元々ギルティガルテンに捜索隊を派遣しようと考えていたA.R.O.A.の決断は早かった。
復活祭を行いつつも、ジュリアーノが人々を護る砦『ディルク砦』に一刻も早く向かう。それが彼らの結論だった。
「よし、そうと決まれば急いで準備だ!」
と勢い込む職員たちに、立て続けに通報が飛び込む。
――急に人々が、眠りから覚めなくなってしまった。
「そんな、まるでトラオム・オーガのしわざみたいじゃないか。まさか?! ハロウィンは終わったはずだぞ!」
その頃、はるか遠くの古城の扉を開ける女が居た。
その声は静かなのに、城中に響き渡るパイプオルガンの音色に負けずよく通った。
「ウィンクルムがこの地に気づいたようです」
ぴたりとオルガンの音が止まる。
「そうか。それは重畳だな」
天井まである立派なパイプオルガンの前に座っていた奏者は、女の方を見もせず、陰気ながらも艶のある声音で答える。
「喜ばしいのですか、ハインリヒ様」
首を傾げる女の頭には狼の耳が生えていた。
「勿論。ウィンクルムの血は極上の味わい。うっかりと半世紀前に絶やしてしまい、残念だったところだ――。
再びあの美味を口にできるとあれば、喜ばしかろう」
なぁ? とハインリヒと呼ばれた男は両手を大きく広げた。
闇の中、喝采が広がる。
女の夜目の効く瞳には、大量の吸血鬼達が笑みを浮かべて首領に万雷の拍手を送っているのが映っていた。
「そうでなくとも、来るからには歓待せねば。なぁ、ヴェロニカ?」
ようやくハインリヒは女に振り向く。
彫刻のような麗しい白皙の顔を目の当たりにし、女は僅かに頬を紅潮させた。
「……ええ。では私は私なりの歓待を準備しますわ」
くるりとハインリヒに背を向け、ヴェロニカは城を後にする。
外で待たせていた『所有物』である新米ギルティに、ヴェロニカは冷たい目を向けた。
「さっさと強くなってもらうわ。これを使って、出来るだけ多くの人間を石にするのよ」
ポンと彼女が投げてよこしたのは、愛らしくラッピングされたギフトボックス。
「あなたらしいでしょ、ダークニス」
(プロローグ:
あき缶GM)
◆関連エピソードエピローグ◆
●愛の光
タブロスのA.R.O.A.本部。その上空に浮かんでいる島、フィヨルネイジャ。
このウィンクルムにしか見えない不思議なジェンマの庭園の存在が、次第に揺らいできていた。
ウィンクルム達の活躍のおかげで、たっぷりとピーサンカを蓄えた島は、そろそろ次の次元に飛び立とうとしているのかもしれない。
報告を受けたA.R.O.A.は、ウィンクルムのフィヨルネイジャ探訪を控えるように通達した。
無人になったフィヨルネイジャは、突如カッとまばゆく光った。その光は、浮遊島が見えない者にすら見ることができた。
光はそのまま、はるか遠くへと飛び去っていった。
「……フィヨルネイジャが、消えた」
呆然と空を見上げるウィンクルム、そしてA.R.O.A.の職員たち。
彼らの脳内に、はっきりと聞き覚えのある声が響く。
「ウィンクルムと、それを支援する方々。我らが主、ジェンマ様に愛された方々、本当にありがとうございます」
結界の天使ジュリアーノだ。彼の声は、ハッキリとまるで目の前にいるかのように一同に届いた。
「フィヨルネイジャから、ピーサンカの力がギルティガルテンに届きました。廃墟だった教会と私の力は復活し、ディルク砦の結界は強固なものになりました」
もう不用意にオーガに蹂躙される心配はもうない。まだまだ息を潜めて生きていかなければならないが、人々は安心して眠ることが出来るようになった。
復活祭は大成功だ、と言うジュリアーノの口調は明るい。
「これでディルク砦は、安全……と言い切りたいところですが、まだまだ傷は癒えません……。物資が足りない状況は変わっていないのです」
心配そうなウィンクルム達の表情を見て、職員は微笑んだ。
「物資ならこちらから届けよう。アーサー伯爵が、支援をしてくださると仰っている」
A.R.O.A.は、ディルク砦の人々に物資を届けることを検討しているところだった。
そのために、調査団が砦への道を拓いている。成功すれば、砦の人々の生活を豊かにすることが出来るだろう。
「本当ですか? ありがとうございます!」
どうやらジュリアーノの力が戻ったことで、こちらの声も向こうに届くようになったようだ。職員の言葉をジュリアーノが殊の外喜んだ。
「実は、教会からそちらの建物まで飛べる、ワープゾーンを開くことが出来るようになりました。
……ただし、ウィンクルムとその装備品しか飛ばすことが出来ません。物資などは到底……」
申し訳無さそうに言うジュリアーノだが、それでもワープが出来るのは朗報だ。帰路は恐ろしい道を行かずとも、ひとっ飛びでタブロスに帰還できる。
「こちらにお出での際は、出来る限りおもてなしをさせていただきます。教会の地下を皆様に開放しましょう。自由に使ってください」
「それはありがたい。ギルティガルテンに支部が出来るなら、色々と助かる!」
今度は職員が弾んだ声を上げた。
その反応に、ジュリアーノはクスリと笑う。
「もうひとつ、いいお話がありますよ。皆様の功績を称えたジェンマ様が、フィヨルネイジャと繋がるワープゾーンを、タブロスに作られたようです」
「そ、それって、いつでもフィヨルネイジャに行けるようになったってこと?」
ウィンクルムの問いを、ジュリアーノは楽しそうに肯定する。
「はい、ウィンクルムの方だけですけれどもね。もう島はこの次元にはありませんし、ピーサンカを生む力もありません。
が、ウィンクルムの方が望めば、いつでも『白昼夢』を見せてくれることでしょう」
●闇の城
ギルティガルテンの深い森にそびえる古城は、荘厳なパイプオルガンの音で満たされていた。
一心不乱にオルガンを奏でる吸血鬼の背後に、音もなく狼女が現れる。
「ハインリヒ様」
その声は静かで、音楽に掻き消えそうだったが、ピタリと演奏は止まった。
「どうしたといういうのだ、ヴェロニカよ。そのような浮かない声をして」
くるりと振り向いた演者は青白い美貌を、ゴシックロリータに身を包んだ女に向けた。
「ウィンクルムがハインリヒ様の領地に侵入していますわ。調査団などと申しておるようです」
「……そうか」
つまらなそうに返事をし、またハインリヒは演奏に戻ろうとする。
「いかがいたしましょうか」
慌てて問うヴェロニカに、ハインリヒはどうでもよさそうに振り向きもせずに答える。
「捨てておけ。まだまだ戯れにもならぬ。好きにさせておけば良い。長年の退屈が癒えそうな話になるやもしれん」
ヴェロニカは鼻白んだように一瞬顔を歪ませたが、すぐに無言のまま丁寧に礼をしてその場を辞した。
再び鳴り出した音楽は、ヴェロニカが城の扉を閉めることで聞こえなくなる。
ヴェロニカはムカムカした気持ちの持って行きようがなく、せわしなく尾を振りながら周囲を見回す。
そして主人を迎えるべく跪き、低く頭を垂れているダークニスに近づくなり、蹴り飛ばした。
「この役立たず。オルロック・オーガを使って、成果はこの程度?」
地面に転がるダークニスを踏みつけたヴェロニカは、下僕を氷のような視線で見下ろし、険のある声で吐き捨てた。
「――無様ね」
(エピローグ:
あき缶GM)
◆NPC情報◆
ジュリアーノ |
|
六対の翼をもつジェンマに仕える『結界術の天使』です。
50年前の大敗で滅びかけたギルティガルテンの人を護るためにジェンマによって遣わされたが、
迫りくるギルティやオーガの前に自身も力の殆どを失いかけている。
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◆詳細情報◆
・フィヨルネイジャ
100年に一度現れる、「ウィンクルムにしか視認できない天空島」。
A.R.O.A.職員では視認できないが、イベント中はA.R.O.A.本部の上空10mくらいの場所に滞空している。
フィヨルネイジャには、ウィンクルムが望めばワープで行き来できる。
女神ジェンマの庭園だとされ、清浄な空気に満ちており、オーガやデミ・オーガは存在しない。
大きな一本の大樹を中心とした島で、大樹を横切る小川が島の端から滝として流れおちて、空中で霧に変わっている。
・オルロック・オーガ
ダークニスが作り出した特別なトラオム・オーガ。
ギフトボックスに入っていて、開けた人にゴシックホラーの夢を見る。
通常のトラオム・オーガ同様、夢の中でオーガに食われると、現実世界の被害者も石になる。
・ギルティガルテン
昔はゴシックエリアと呼ばれていた地域ですが、50年前にウィンクルムが敗北してからは
ギルティの呪いにより永遠の夜が続く、ヨーロッパのような針葉樹林帯です。
人間の居住区は非常に狭く、人々は困窮した生活を強いられています。
ギルティガルテンには地元のウィンクルムは居ません。
・ディルク砦
人間に残された居住区である廃墟の砦。
杭をぎっしり並べたような木の城壁に囲われています。
城壁には魔力がこもっていてオーガの侵入をかろうじて阻んでいますが、日に日に結界は弱まっています。
人々はオーガに怯え、隠れ住むことを強いられている状態です。
唯一の希望であるウィンクルムに協力的ですが、食料や物資にとても困窮しているため、できることには限りがあるでしょう。
・幽霊の街
ギルティガルテンでは、ギルティの呪いにより死者が幽霊となって永遠に留まることを強いられています。
数ある廃墟の街は、そんな幽霊たちの住処となっています。
・教会
主神ジェンマの教会です。今は廃墟です。
イベントの目的はこの教会を復活させることです。
・復活祭
ピーサンカを集め、ジェンマの力を増すための儀式です。
大昔、オーガを弱めるために行われていたようです。
フィヨルネイジャでウィンクルムが親交を深めるか、ギルティガルテン由来のオーガを倒すことでピーサンカを得ることができます。
・吸血鬼
ウィンクルムの血が大好きなオーガ。
人間型(Bスケール)やグール型(Cスケール)がいます。
血を吸われた者は、完全な【吸血鬼の下僕】になってしまい、一般人は助かりません。
ウィンクルムの場合は、パートナーの愛で救うことが出来る可能性があります。
・ダークハーピー
肌が真っ黒なのが特徴のハーピー。
森の奥で歌を歌い、人間を誘い込みます。
歌を聞いた人間は、催眠状態で【吸血鬼の下僕】に変わり、本人の意識を呼び覚ましながら倒さないと元に戻りません。
ウィンクルムにも効果がありますが、ウィンクルムの場合は催眠が軽度なため、
身体的・精神的問わずショックを与えるとすぐに元に戻り、心身に影響はありません。
精霊には歌が効きません。
・ダークラミア
肌が真っ黒なのが特徴のラミア。
森の奥で良い香りを放ち、精霊を誘い込みます。
香りを嗅いだ精霊は、催眠状態で【吸血鬼の下僕】に変わり、本人の意識を呼び覚ましながら倒さないと元に戻りません。
ウィンクルムにも効果がありますが、ウィンクルムの場合は催眠が軽度なため、
身体的・精神的問わずショックを与えるとすぐに元に戻り、心身に影響はありません。
人間には効かないため、個体数は少ないようです。
縄張り意識が強く、ダークハーピーと同じ場所には出てきません。