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6月イベント『ウェディング・ラブ・ハーモニー』関連エピソード情報


(水海碧 イラストレーター)


 ⇒関連エピソードプロローグはこちら!

◆関連エピソードエピローグ(男性向け)◆


●祝福の夜

 夜の街に灯りがともる。
 街灯、家の灯り、そして、祝福された花々。
 イベリンでの『ウェディング・ラブ・ハーモニー』も終盤を迎えようとしていた。
 この催しに参加して誰かと距離を近づけた者は多いだろう。
「いいことです」
 満足そうに言ったのは甕星香々屋姫。イベリンに祝福を与えた女神だ。
 その後ろで妖狐のテンコもコクコクと笑顔で頷く。
「さぁ、催しの最後の夜です。最大限の祝福をしましょう」
 甕星香々屋姫がそう言ってスラリと腕を掲げると、イベリンの景色に変化が訪れた。
 街中の花の光が、花から離れてゆっくりと空へとのぼっていく。
「うわぁ……!」
 歓声をあげたのは、町の住人か、訪れていた者か、それとも両方か。
 静かに瞬きながらのぼっていく光に囲まれ、誰もがその顔をほころばせる。
 その時、不思議な響きが街中に広がった。
 それは街中の楽器が、鐘が、その身を震わせるようにして微かに鳴らしている音。その奇跡のような美しい共鳴。
 甕星香々屋姫はその音と光から祝福の時間を読み取る。
「おや、ウィンクルムの皆さんも沢山このイベリンへ来ていたのですね」

 降り止まない雨降り岬で、イルミネーションのような甘い花々の中、好意を膨らませ、そしてそれを告げた者達。
 ( 【祝福】雨降り岬の煌めき恋華  執筆:錘里GM

 夜の薔薇園で迷路を歩み花の香りに酔い、その酔いに任せて秘めた想いを、自身の過去を口にした者達。
 ( 【祝福】薔薇の酩酊  執筆:蒼鷹GM

 季節はずれのクリスマスカクタスによって吐き出されるあべこべな言葉を、楽しんだりしっかりと受け止めた者達。
 ( 【祝福】ひねくれカクタスの悪戯  執筆:寿ゆかりGM

 仲間達と共に列車を、押し花作りを、そして公園での様々を、思い思いに楽しんだ日帰り旅行に行った者達。
 ( 【祝福】イベリンの車窓から  執筆:上澤そらGM

 紅茶に入れた薔薇の菫の花びらの砂糖漬けに後押しされ、恋愛について、結婚についてを語り合った者達。
 ( 【祝福】琥珀の中に揺れる花びら  執筆:京月ささやGM

 音楽公園で何故か猫に体を乗っ取られ、うにゃうにゃと混乱しながらも楽しみ、絆を確認しあった者達。
 ( 【祝福】俺の身体を返すんにゃ!  執筆:木口アキノGM

 雨降亭で朝に、昼に、夜に、美味しいパイを食べながら、言い出せなかった事を伝え、新しい関係を踏み出した者達。
 ( 【祝福】雨降亭へようこそ  執筆:櫻 茅子GM

 博物館の紫陽花と蝸牛に見守られながらの攻撃、そしてその反撃とフォローとで、距離を近づけた者達。
 ( 【祝福】つべこべ言わず殴らせろ  執筆:錘里GM

 雪女のヒサメが手伝う七色食堂【Reverse blue】の出張店舗で、温かいもの冷たいものを食べながら感謝の気持ちを伝えた者達。
 ( 【祝福/七色食堂】こおりあめと花車  執筆:錘里GM

 ウィンクルム達が様々に祝福を受けて絆を深めた事を知り、甕星香々屋姫を満足気に微笑む。
 美しい音が響き渡る。
 花の光がのぼりゆく。
 二度と巡りあえないだろう光景に、誰もが胸を満たされ、大切な誰かを想う。
 家で待ってる家族を、明日会える友人を、お世話になった恩人を。
 そして、隣にいる自分にとってただ一人を、想う。
 響き渡る音が、広がって遠くなる。
 空へのぼっていく光が、遠く小さな点となる。
 やがて全ての音と光が消えた時、イベリンにいる人々は感嘆の息を漏らしながら、盛大な拍手を贈った。
 その拍手に温かいものを感じながら、甕星香々屋姫はふとテンコを振り返った。
「そういえばイベリンで起きている幾つもの誘拐事件に関しても、ウィンクルムが活躍したとか。素晴らしいです。これからもウィンクルムの絆を深めてください」
「分かりました、A.R.O.A.にそう伝えましょう」
「勿論、破廉恥は駄目ですからね!」
「まだ言いますか」
「え」
「あ」
 素直に口から出てしまった言葉は、まだ女神の祝福が微かに残っていたからか、それとも距離が少し近づいたからか。


●崩壊の夜

 一方、何処とも知れぬ城の中、ボッカの前には三人のデミ・ギルティのスガート、デクニー、センがいた。
「風の噂で聞いたんだけど、俺様が? 恋をして? お前達がその相手を攫ってきてくれるんだって?」
 豪奢な椅子に腰掛け、どこか笑いを堪えているボッカ。それに対してデミ・ギルティ達は心底悔しそうにしていた。

 人型のオーガ、リズブールが家族を攫ったが、その中に探し人はいなかった。
 そのまま家族を籠に閉じ込め「ゲーム」を始めると、乗ったのは『信城いつき』と『レーゲン』、『アキ・セイジ』と『ヴェルトール・ランス』、『セラフィム・ロイス』と『火山 タイガ』、『セイリュー・グラシア』と『ラキア・ジェイドバイン』の四組のウィンクルム。
 家族を救出し、大怪我を負いながらも大量のデミ・ゴブリンを倒したようだ。
 ( 【奪還/異端児の狂乱】気狂い道化の遊戯会  執筆:錘里GM

 同じく人型のオーガ、ルードゥスも少女を攫ったが、やはり探し人ではなかった。
 オーガを崖下に集めた上で少女を崖から吊るして遊ぶと、駆けつけたのは『叶』と『桐華』、『羽瀬川 千代』と『ラセルタ=ブラドッツ』、『ヴァレリアーノ・アレンスキー』と『アレクサンドル』、『柳 大樹』と『クラウディオ』、『むつば』と『めるべ』。
 崖の上と下で戦い、命の危機を感じながらもそれぞれの機転で何とか少女を助け出したようだ。
 ( 【奪還/異端児の狂乱】死の淵より手繰る者  執筆:青ネコGM

 スガートとデクニーが自ら動いた事もあった。とはいっても、スガートはデクニーに押し付けたようだったが。
 攫われた退治屋のリィトを助けに向かったのは『アイオライト・セプテンバー』と『白露』、『明智珠樹』と『千亞』、『スコット・アラガキ』と『ミステリア=ミスト』、『ローランド・ホデア』と『リーリェン・ラウ』。
 オーガを倒した後は、スガートを挑発しながら戦いを避け、リィトを奪還して逃げ切った。
 デクニーを上手く掌で転がしたのは『明智珠樹』と『千亞』、『スコット・アラガキ』と『ミステリア=ミスト』だったようだ。
 ( 【奪還】我が主の為に!  執筆:巴めろGM

 ラーメン屋のファビオを攫おうとしたが、上手いこと逃げられた。冷凍倉庫へと逃げ込んだファビオの保護で『ハティ』と『ブリンド』、『初瀬=秀』と『イグニス=アルデバラン』、『柊崎 直香』と『ゼク=ファル』、『スコット・アラガキ』と『ミステリア=ミスト』、『永倉 玲央』と『クロウ・銀月』が向かい、デミ・オーガを倒してファビオの捜索をしていたら、何故か冷凍庫に閉じ込められてしまった。
 ファビオは無事に救出され、そしてウィンクルム達もそれぞれに暖を取りながら脱出したようだ。
 ( 【奪還】凍える身体を温めろ  執筆:雪花菜 凛GM

「笛の谷」にある楽器工房のマイスター、スティカとアークを捕らえたオーガもいた。
 場所柄、音楽で攻撃する事が可能らしく、『アキ・セイジ』と『ヴェルトール・ランス』、『アイオライト・セプテンバー』と『白露』、『瑪瑙 瑠璃』と『瑪瑙 珊瑚』、『ヴィルマー・タウア』と『レオナルド・エリクソン』、『永倉 玲央』と『クロウ・銀月』は楽器店から楽器を借りたり、自前の武器を活用したりして、音楽の力でオーガを倒すことに成功した。
 スティカとアークを『瑪瑙 瑠璃』と『瑪瑙 珊瑚』が逃がした事で、皆全力を振るえたのだろう。
 ( 【奪還】力持つ音  執筆:木口アキノGM

 センが動いたものもある。攫った者、ケリーと『アキ・セイジ』と『セイリュー・グラシア』と『ハーケイン』と『アオイ』と『ショーン』が探し人ではないとすぐに気付くが、有益な情報を得られそうだと話し込んでしまった。
 神人達は時間を稼ぐ為に話を引き伸ばし、そこへ『ヴェルトール・ランス』と『ラキア・ジェイドバイン』と『シルフェレド』と『一太』と『ケイン』、そして蒼太が到着してゴブリンを倒した。
 『アオイ』と『一太』、『ショーン』と『ケイン』の状況にあった動きが功を奏したようだ。
 ( 【奪還】冗談じゃないわヨッ  執筆:寿ゆかりGM

  結婚を誓った女を攫ってみたものの、これも探し人ではなかった。
 デミ・ワイルドドッグと「好きな人を見つめていたくなる」音楽が流れる洋館に取り残された女を助けに来たのは『アキ・セイジ』と『ヴェルトール・ランス』、『セイリュー・グラシア』と『ラキア・ジェイドバイン』、『蒼崎 海十』と『フィン・ブラーシュ』、『終夜 望』と『イレイス』。全員の力で女を救出し、不思議な音楽も止めることができた。
 何度も二人の世界に突入仕掛けるベテランウィンクルムを、何度もツッコんだ『終夜 望』と『イレイス』が功労賞だろう。
 ( 【奪還】あなたを見つめていたいけど  執筆:櫻 茅子GM

 どうしてこうなったのかはわからないし、たおされたねいちゃーやでみ・おーがやおーがのほうがこんわくしたのが一つ。
『瑪瑙 瑠璃』と『瑪瑙 珊瑚』、『フレディ・フットマン』と『フロックス・フォスター』、『暁 千尋』と『ジルヴェール・シフォン』、『フラウダ・トール』と『シーカリウス』、『ローランド・ホデア』と『リーリェン・ラウ』の五組のウィンクルム。男である筈のウィンクルムが何故か巨乳のナイスバディなレディ(コスプレ済み)で人攫い事件に取り組み、解決したようだった。
 ( 【奪還】いいか、みんな。つまり巨乳だ!!  執筆:上澤そらGM

 それらしい者を攫ってくる、というただそれだけの企みは、すべて空振りに終わったりウィンクルムの手によって阻止されたりと叶わなかった。
「すみません、手下のオーガが失敗ばかりで……!」
「やはり下位種は使えませんね、もっと自分達で動きます」
「ボッカ様はただお待ちくださればいいので! 見ててくださいね!」
 ボッカをがっかりさせたくない、その一心で意気込んで言うと、
「……ッハ!」
 ボッカは耐え切れないとばかりに体を震わせ、そのままゲラゲラと大笑いを始めた。
 ポカンとするデミ・ギルティ達に、ボッカは笑いながら説明する。
「バァーカ!! 俺様が人間だの精霊だのに恋?! するわけが無いだろう!! お前達の勘違いだ!!」
 奴らがこの強くカッコイイ俺様を崇め奉るのは仕方ないことだけどな! と笑うボッカに、デミ・ギルティ達は自分達の間違いに気付きガクリと肩を落とす。
「か、勘違い……!」
「ですよねぇ、おかしいと思ったんです」
「失礼しました!」
 空気が一気に緩む。笑うボッカを前に、デミ・ギルティ達も苦笑する。
「そうだそうだ! 本ッッッ当に!!」
 元気のいいボッカの声が途切れる。途切れて、そして。

「…………失礼なんだよお前ら」

 笑顔を消し、低い声で吐き捨てた。

 途端、デミ・ギルティ達が背後へと吹っ飛ばされ、壁へと叩き付けられる。
 何が起きたのか。人間ならばそれだけで死んでいた衝撃に耐えて前を向けば、そこにはただ腕を振り払っただけのようなボッカがいた。
 そのボッカの目の前に拳大の大きさのエネルギー弾が幾つも幾つも出来上がる。
「―――ッ!」
 一目でその威力を察知したスガートが、咄嗟に自分達の前に強固な光の壁を作り上げる。
「あぁ?」
 しかしそれがボッカを更に苛立たせた。
 エネルギー弾を更に増やして、一気にデミ・ギルティ達目掛けて飛ばす。
 轟音を立てて光の壁に無数のエネルギー弾がぶつかっていく。
 それは実のところロイヤルナイトの『イージスの盾』やライフビショップの『チャーチ』よりも遥かに強靭な壁だったが、その壁がみるみるひび割れていく。
「あの絵の奴らはなぁ、俺様を封じ込めたこの世で一番憎たらしい奴らなんだよ」
 バリン、という硬いものが割れる音が響いて壁が消え去り、同時にエネルギー弾の奔流がデミ・ギルティ達の体に容赦なくぶつかっていく。打ちのめしていく。蹂躙していく。
「最近ウィンクルムの奴らに会う事が多くて、それで思い出したんだよ、奴らの顔を。俺様の手で殺したかったのにもう寿命で死んでるだろ? それが悔しくて見てただけなのに、恋? よりにもよって、奴らに?」
 ふざけるな、とボッカが言う頃には、ボロ布のようになって倒れ付しているデミ・ギルティ達。
 その背後にあった筈の壁も、やはり先程の攻撃で既になくなっている。
「あー!! 壁に穴が! っていうか壁がなくなった!! 俺様この城気に入ってたのに!! どうしてくれるんだよ!! くっそ、もういいや、いらない!!」
 言って、ボッカは大きく振りかぶって、床を思い切り殴った。
 爆音と同時に床が、いや、部屋が沈む。亀裂が床から壁へ、壁から天井へと一瞬にして走る。音を立てて床が抜けていく。
 城が崩れていく。
 崩壊し瓦礫となった城の上に、首をひねりながら立つのはボッカ。
「うーん、大分力が戻ってきたかなぁ?」
 振るった力はまだ完全な状態で出したものとは言えないらしく、納得してない顔つきだ。
 それでも、目覚めた時より力は戻ってきている。
「さぁて、壊しちまったし、他の城を探すか」
 さきほどの癇癪などなかったかのように、子供のような無邪気な笑顔で何処かへ消えた。

 ……その数分後。
 残された瓦礫の山から、片腕が千切れた一人の男が出てきた。
「……おーい、生きてるか?」
 デクニーの呼びかけに答えたのは二つの声。
「ええ、多分」
「大丈夫ー」
 瓦礫から這い出たスガートの腹には大きな穴が開き、同じく這い出たセンの両足はボロボロに折れ曲がっていた。
 人間ならば、いや、精霊であっても何回か死んでいたであろう攻撃も、三人は大怪我を負いながらも何とか生き抜いた。
「すごいすごいすごい!! やっぱりボッカ様はすごい!!」
 センが痛みも無視して笑顔ではしゃぐ。
 かつてのボッカの強さが復活しつつある。それを目の当たりに出来たのだ。
「もう絶対一生ついてく! 馬鹿が何しようともうどうでもいい! ボッカ様が一番!!」
「だな! よし、さっそく後を追いかけて……」
「その前に怪我を治しますよ。これじゃあ多分ボッカ様の足を引っ張ってしまう……待って下さい、『馬鹿が何しようと』ってなんですか?」
「ん? ほら、『人と精霊が沢山集まるって場所、教えてもらった』って言ったでしょ? それ」
「誰に教えてもらったんだ?」
「さぁ? どっかの格下が誰かに指示されて伝えに来てたみたいだけど、どうでもいい奴だったから忘れちゃった」
「いや、それ多分どうでもいい事じゃないんじゃ……」
「えー、どうでもいいよ」
 センは興奮と喜びの笑顔から嘲りのそれへと変える。
「ゴミみたいな人間の誰かとカスみたいな格下の誰かが、繋がってようが、騙し合ってようが、何か企んでようが、ボッカ様の強さの前には何の意味もないんだからさ」


( エピローグ:執筆:青ネコGM


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