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◆エピローグ◆
●ラインヴァイス城にて ようやく禍々しい空気が一掃され、その名の通り美しく白に輝くラインヴァイス城。例年のごとく、スノーウッドの人々が待ち望んでいた雪のラインヴァイス城での舞踏会当日。
今年は、スペシャルゲストとしてサンタクロースの挨拶があると聞いて、いつも以上に人でごった返していて、熱で雪が溶けそうだった。
二階に特別に通されたウィンクルム達は、一足先にサンタクロース……つまりレッドニスと対面していた。
救出後、念のため病院に運ばれていたレッドニスだが、何も問題ないと返されたとのこと。
「……去年も世話になったっていうのに、今年はより一層世話になっちまったな」
頭を掻き、恥ずかしそうにレッドニスはウィンクルムに頭を下げた。
「いろいろ、本当にありがとう。いっぱい迷惑をかけた分、今年のクリスマス……もうラストスパートになるけど、精一杯やりとげるぜ」
ぐ、と拳を握り、レッドニスは気合十分のようだ。
「ダークニスのこと……残念だったね。何か、話したいこともあっただろうに……」
ウィンクルムの誰からとも無く、そんな言葉が漏れる。
ギルティと化したレッドニスの弟、ダークニスは射殺された。
彼の死に様は、A.R.O.A.の報告書としてまとめられ、関係者であるレッドニスにも渡されている。
――やっぱり、僕は要らない子だったんだね……。
ダークニスの今際の際の言葉を思い出したのか、レッドニスは項垂れ、苦い表情を浮かべた。
「ん……。俺にも何か、出来たのかもしれない。でも、あの乱戦の中で丸腰の俺があいつと話をするなんて、絶対に無理だったってわかってるよ。ダークニスは自分の意志で望んでギルティになった。だから、こうならなきゃダメだったんだ。セイントである俺だからこそ、これでよかったんだって、ちゃんとわかってる」
そしてレッドニスは、もう一度深々とウィンクルムに頭を下げる。
「本当に迷惑かけた。ダークニスを止めてくれたこと、兄として感謝している。そして、クリスマスを守ってくれたこと、サンタクロースとして礼を言うよ」
ダークニスが消えたことで、世界中にばらまかれていた黒き宿木の種も消え失せたようだ。
だからもう、皆何の心配もなく、クリスマスを楽しむことが出来る。
レッドニスは吹っ切るように、ニッと笑った。
「そうだ。皆には、俺から……じゃなくて、別の人からだが、クリスマスプレゼントがあるぜ!」
レッドニスが手を上げると、柱の影から男女の老人が出てきた。
穏やかに歳を重ねて来たのだと一目でわかる二人の老人は、自らをジムとデラと名乗った。
「もしかして……」
と顔を見あわせるウィンクルム達に、レッドニスはますます笑みを深くする。
「そう! 皆が黒き宿木の種を除去するのに勤しんでくれた、豪華客船ラピスラズリ・プリンセスのオーナーのご夫婦だ!」
ジムは口を開く。
「この度は、私どもの船を守ってくださり、本当にありがとうございました。そして、強いオーガを倒されたとも伺いました。是非、感謝の気持ちを受け取って欲しく、駆けつけたのです」
続きはデラが引き継ぐ。
「是非、安全になった私達の船、ラピスラズリ・プリンセスにもう一度おいでくださいませ。スタッフ一同、心から皆様の労をねぎらう会を催したいと考えておりますの」
わぁっと歓声が上がる。
老夫婦は互いの顔を見あわせ、嬉しげに微笑みあった。
「……っと、そろそろ舞踏会の時間だな。客船の前に、ラインヴァイス城の舞踏会で、祝勝会といこうじゃないか!」
レッドニスは時計を見て、ウィンクルム達を階下へと誘う。
そして自ら階段を降りて行き――、大声で人々に叫ぶ。
「待たせたな! 今日は楽しんでいってくれ、サンタクロースからのプレゼントだ!!」
するとどこからとも無く人々の手元に、プレゼントボックスが現れる。
このプレゼントボックスは、爆発などしない夢の詰まった素敵な正真正銘のプレゼント。
プレゼントに大喜びする人々の笑顔が咲き誇るラインヴァイス城、ワルツが流れだして、誰からともなく踊り始める。
「さあ、皆も楽しんでってくれ!」
レッドニスが誘う。
ウィンクルム達も笑顔を浮かべ、踊りの輪に加わっていった。
その頃の、紅月ノ神社。
ギルティが倒されたという輝かしい戦績は、ここまで届いていた。
我が事のように大喜びしているテンコや妖狐達を遠目に見ながら、話し合う二人の妖怪。
「死んじゃったね」
「そうですね」
遊火と蛇御子だ。かつて彼らの仲間だったヒヅキという妖怪は、デミギルティになり、ダークニスもろとも倒された。
「ヒヅキが弱かっただけのことです」
淡々と言う蛇御子に、遊火は、そっかと返事をして、ごろりと横になった。
空を仰ぎ、遊火は呟く。
「もう少し、遊びたかったな」
つられるように蛇御子も空を見上げる。いいたい言葉はぐるぐると彼の胸に渦巻いたが、
「……そうですね」
としか、結局蛇御子は言えなかった。
そしてまた、闇渦巻くギルティガルテン。
「そう、死んだの。あいつ」
報告を聞いて、ヴェロニカは何でもなさそうに返事をして、報告者をつれなく追い返した。
「……ほんと、弱い子だったわ。ギルティの面汚しよね」
眉をひそめ、ヴェロニカは目を閉じる。
「こういう時はなんて言うのかしら。……そう。お可哀想、だったかしらね」
吐息と同じ調子で吐き出された声は、遠雷にすら掻き消えそうなくらい小さかった。
(エピローグ執筆:
あき缶 GM)